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13「総力戦①」

翌朝、私はけたたましいプリシアの叫び声で起こされた。


「タクト、起きて!街にモンスターの大群が近づいているんだって!何でも足の生えていない宙に浮いているモンスターで名前を死神と言うらしいわ!」

「死神だと!」


プリシアが発した聞き慣れない言葉に私はすぐさま反応した。

死神と言えば、戦術帳に載っていたモンスターのひとつ。

群れで行動すると書いてあったが大群とはどういうことなのか。

私は慌てて身支度を整えると戦術帳を持って、街の出入り口へ向かった。


街の出入り口にはたくさんの人だかりができていた。

町民のほかに街にいた冒険者達が招集されている。


「おい、あれを見ろよ!あんな死神の大群ははじめて見る」

「この街も、もうおしまいだ。いくら冒険者が集まったって、あれだけの数の死神を相手にするなんて無茶もいいところだ」


街の住人は慄きながら口々に弱音を吐きはじめる。

それもそのはず。

死神は百を下らない数が集まっていたのだ。

しかも、死神は強敵クラスのモンスター。

たとえ冒険者が百人いても到底、苦戦を強いられることは目に見えている。


「あんな数の死神を一体、どうやって倒せばいいんだ?」

「そんなの決まっているだろう。片っ端から叩きのめすんだ」

「俺達、魔法使いが後方支援するから、お前達剣士は死神に突っ込むんだ!」

「馬鹿を言うな。あんな数を目の前にして突っ込む奴がどこにいるんだ!」


冒険者達の口論が激しさを覚える。

しかし、どれも根性論ばかりでひとつも戦術と呼べるものはない。

これだけの冒険者が集まっても既に限界らしい。


「タクト、どうする?俺達だけじゃ、あんな数の死神は相手にできないぞ」

「そうだな。戦術帳には死神のことが乗っているが、あんな数を相手にすることは想定されていない。新たな戦術が必要だ」


焦りの表情を浮かべるガルドの額に一筋の汗が滴る。

それは私も同じで戦術帳を握る手に力が入った。

新しい戦術といっても、これだけのモンスターを相手にするのは困難だ。

しかも、集まった冒険者達も使わなければならない。

この戦いは大きな戦になる雲行きとなっていた。


死神達は、街の丘陵に陣取り、こちらを睨んでいる。

リーダーの指示を待っているのか、それとも機会を伺っているのかはわからないが。

作戦を練る時間はある。


「ガルド、冒険者達を集めて作戦会議だ!冒険者達のリーダーを集めてくれ」

「わかった、タクト」


ガルドは人ごみを掻き分け冒険者達の方へ駆けて行くと、リーダー達を招集する。

集まった冒険者のリーダー達は二十名あまり。

一チーム四名だとしても、全部で八十名の冒険者達がいることになる。

これならイケるはず。

私はそう確信すると、テーブルの上に街の見取り図を広げ作戦会議をはじめた。


―死神ー

種類:群れで行動する死霊

全長:3メートル

知性:高い

耐性:なし

弱点:聖なる光に弱い

特徴①:自由自在に空を飛ぶ

特徴②:実態を持たない

倒し方:実体化させてから倒す


「私達がいるのは、この場所だ。そして、死神達は街外れの丘陵に陣取っている。死神達を撃退するには、数を減らさなければならない」

「数を減らすって、どうやるんだよ」


疑問を言って来る弓使いのリーダーに、私は話を続けた。


「両サイドから二手に分かれて攻めるんだ。戦力は落ちるが、死神を分散できる。分散したら、どちらか一つに攻撃を集中させ撃退する。」

「もう一つの方はおとりになるって言うことか……」


少し不安げな様子を浮かべてる剣士のリーダに私は助言を追加した。


「しかし、気をつけなければならないことが一つある。それは、死神は実体がない。だから、剣や弓などの物理攻撃が効かないと言うことだ」

「魔法が効果的と言うことだな」


私の言葉に耳を疑う様子を見せた他のリーダーと対照的に、魔法使いのリーダーは言って来た。


「そうだ。しかし、魔法には詠唱時間がかかる。それまで、他のメンバーで死神を引きつけておかなければならない」

「しかし、物理攻撃が効かない相手を退治するんだぞ。剣士や弓使いでは不利だ」

「それでもやらなければならない。この戦いは私達の存亡をかけた戦いだ。私達がやられれば街は滅ぼされるだろう」


私の言葉に周りにいたリーダー達は拳を握りしめ、改めて現実を受け入れる。

そしてガルドが音頭を取り叫ぶと、その場にいた者たちがひとつになった。


「よし、みんな。死神共を蹴散らすぞ!」

「「おー!」」



そして決戦の時が来た。

私は城壁の上に陣取ると、冒険者達に指示を出す。


「まずは剣士隊、前へ!丘陵を取り囲むように両サイドから攻め込むんだ!なるべく死神を分散させてくれ」

「おうよ。みんな聞いたな。俺達が肝なんだ。全力で行くぞ!」


ガルドが気合を入れると、剣士達の士気が高まった。

剣士たち二手に分かれて少しづつ前進して行く。

そして鞘から剣を引き抜くと空に掲げて雄たけびをあげる。

ウォォォーと地鳴りのような声を響かせながら、死神に突進して行った。


それに対抗するように死神も立ち向かって行く。

私の作戦通り、二手に別れながら。

剣士達は剣を振り回すが、空を切るばかりで、死神を捉えられない。

それでも死神の攻撃を交わしながら、死神達を引きつけて行く。


「よし、次はプリ-ストだ!スロウの魔法で死神の動きを鈍らせろ!右側の死神を狙うんだ!」

「わかりましたは、タクトさん。みなさん私達の出番です!」


ルーンの掛け声を合図にプリ-スト達は一斉に詠唱をはじめる。

その間も剣士達は必死に死神を対峙。

そして、詠唱が終わると。


「「時の狭間よりいでし御霊、かの者を時空の歪みに引き落とせ、『スロウ!』」」


叫んで死神にスロウの魔法をかけた。

死神の体に白い鎖が纏わりつきながら絞めつけ、その動きを鈍らせる。

もがけばもがくほど鎖の締めつけが強くなる強力な魔法。


「死神の動きが鈍くなったぞ!これで少しは有利に進められる」


ガルドは少し肩の力を抜いて死神を対峙する。

その一方で、左側の剣士達は死神達に手を焼いていた。

のんびりしている時間はないな。

彼らがやられる前にこっちを片づけなければならない。


「次は魔法使いだ!ダイヤモンドダストの魔法で死神を凍らせろ!」

「わかったわ、タクト。みんな行くわよ!」


意気よくエリザが合図をすると魔法使い達も一斉に詠唱をはじめた。

口々に呪文を唱えながら魔力を高めて行く。

すると、宙に魔法陣が浮かび上がり。


「「零氷が紡ぎし雫、氷雪の飛礫となりて、空間を切り裂け、『ダイヤモンドダスト!』」」


空気中の無数の水滴が氷に姿を変えると、死神達の周りを取り囲む。

そして、白い冷気を発しながら、氷の粒が死神を包み込んだ。

辺りは一瞬で氷の世界に変わり、死神達の氷像が出現した。


「これで物理攻撃が効く。よし、剣士達、思う存分暴れてくれ!」

「待ってました!みんな行くぞ!」


喜々揚々とガルドが剣を振り上げると、それに呼応するかのように剣士達も一斉に剣を掲げた。

そして、氷像になった死神を次々と粉々に破壊して行く。

ここぞとばかりに日頃の鬱憤を晴らすかのような勢いだ。


「あと一体。うぉぉぉらぁ!」


ガルドは最後の一太刀を死神に食らわせると勢いよく地面に立った。


「右側の死神はすべて退治できた。後は左側だ」

「タクト!左側の剣士達がへばり出したわ。もう耐えられそうにないよ」


プリシアの悲鳴に左陣に目を向けると、剣士達が押されていた。


「一時、撤退だ!みんな引けー!」


私の号令で戦場にいた剣士達が撤退をはじめる。

しかし、左陣の剣士達は出足が遅れ、死神達の攻撃を食らっていた。


「プリシア!弓使いの矢に聖光弾をつけるんだ」

「了解。みんなも手伝ってね」


プリシアと弓使い達は急いで矢に聖光弾を取り付ける。

そして一通り取りつけ終わると私は新たな指示を出した。


「最後は弓使いだ!追っかけて来る死神に聖光弾をぶち込んで剣士達の逃げ道を確保しろ!」

「了解。みんな構え―!」


プリシアの合図で弓使い達が横一列に並び弓を弾いて構えた。

「放てー!」と合図した次の瞬間、一斉に矢が放たれる。

奇麗な円弧を描きながら死神達に降り注いだ。

すると、聖光弾が弾けて光の飛礫を発する。

死神達はたまらずもがきはじめた。

聖光弾は死神を消滅させるほどの威力はないが足止めくらいにはなる勝手の良い爆弾。

弓使いが死神達の足を止めている間に、剣士達は撤退を済ませることができた。


死神達を半減させることに成功したが、こちらの損失も大きい。

おとりになった剣士達のほとんどが、大きな怪我を負っていた。

ルーン達、プリ-ストが一丸となり、剣士達の怪我を治癒している。

まるで戦場の中の野戦病院に様変わりしたかのようだ。


私達は次の作戦のため、残りの冒険者達を招集すると作戦会議をはじめた。


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