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125「アルタイル城攻略」

戦闘開始の信号弾が空で弾ける。

同時に私が戦闘開始の合図を告げる。


「全軍、戦闘開始だ!」


魔導士部隊とプリ―スト部隊が隊列を組み進軍をはじめる。

もちろん魔導士部隊を率いているのはエリザでプリ―スト部隊を率いているのはルーンだ。

それを追うように重装備部隊と弓部隊、騎馬隊と続く。

重装備部隊を率いているガルドと弓部隊を引きているプリシアも気合は十分だ。

ドミトスは騎馬隊をラクレスは作戦本部で戦況を見守ることにした。


私達、合同軍が近づいて来ると敵は反応して弓攻撃を仕掛けて来る。

矢が足元まで届く位置へ来ると私は速やかにプーリスト部隊に指示を出す。


「ルーン。プロテクションで魔導士部隊を保護せよ!」

「わかりましたわ。皆さん、行きましょう!」


ルーン達、プリ―スト部隊は胸の前で両手を組むと祈るように魔法の詠唱に入る。

その間も敵弓部隊からのけん制攻撃が続く。

矢が届くギリギリのラインまで進軍しているので敵の矢は届かない。

それでも飽きることもなく敵は弓攻撃を繰り返していた。

すると、アルタイル城の砲門が開き黒い砲身が顔を覗かせる。

そして乾いた轟音を立てながら巨大な砲弾が飛んで来た。


「あいつ等、砲弾を放って来たぞ!」


砲弾は私達の手前に着弾し爆発して土煙を上げる。

部隊に動揺が走る中、私は沈着冷静に対応をした。


「これも計算済みだ。ルーン、プロテクションを頼む」

「「天より降り注ぎし光、星光の束となりて、かの者を守らん『プロテクション!』」」


ルーン達が魔法を唱えると足元に金色の魔法陣が浮かび上がる。

そして最前列の魔術師部隊を取り囲むように光の壁が競り立った。

光の壁は高さ10メートル、長さ100メートルの巨大な防壁に変わる。

厚さは5センチほどでしかないが、敵の砲弾も矢も弾き返すほどの強度を持っている。

私はそれを確認すると次の指示を出す。


「魔術師部隊、前進!魔法が届く範囲まで進軍せよ!」


エリザを筆頭に魔術師部隊が隊列を組んで前進して行く。

同じようにプリ―スト部隊、重装備部隊、弓部隊、騎馬隊と後に続く。

それを阻止するように敵の砲弾や矢が飛んできたがプロテクションに阻まれる。

その度に爆炎が空を覆うが、こちらにはまったく被害はない。

ルーン達の放ったプロテクションは部隊全てを覆い隠すような巨大なものだったからだ。

言わば神の造りし巨大な光の盾と言っても過言でないだろう。

私達の部隊は確実に間合いを詰めて行く。

それに合わせるように敵の攻撃は厳しさを増した。


「さすがはプリ―ストだ。敵の攻撃をもろもとしない」

「この数で一斉にプロテクションをかけたのだから強度も増すと言うものだ」


ガルドとドミトスは関心しながら勝利の確信を掴む。

しかし、まだ戦いの準備段階に過ぎない。

プロテクションはあくまで魔法圏内まで近づくための防波堤なのだ。

そして魔術師部隊は魔法圏内まで辿り着く。


「これからが本番だ。エリザ、サンドストームで敵兵を蹴散らせ!」

「わかったわ。みんな出番よ!」


エリザを筆頭に魔術師部隊は両手を前に突き出して魔法の詠唱に入る。

すると、敵は砲撃と弓攻撃を止めて魔術師部隊を前面に押し出して来た。


「魔法で対抗するつもりか。しかし!」


私は後方で待機していたプリシア達に指示を出す。


「プリシア!弓攻撃で後方支援をするんだ!」

「あいあいさー。みんな、いーくよ!」


プリシアの掛け声とともに弓部隊が隊列を組んで一斉に空に向かって矢を放つ。

放たれた矢は円弧を描きながらプロテクションの壁を超えると敵魔術師部隊に向かって飛んで行った。

雨あられのような無数な矢に撃たれて次々と敵魔術師が倒れて行く。

そして慌てるようにその場から撤退をする。


「何よ、私の出番がないじゃない」


プリシアの爆弾は弓程の射程がない。

手投げ方式なので大砲のようなものを使わないと届かないのだ。

プリシアと弓部隊との相性はあまり良くないらしい。

以後、そのへんを考慮して配置する必要がある。

そうこうしているうちにエリザ達の準備が整う。

そして、


「「空を駆ける旋風、風神の目となりて、大地を飲み込め『サンドストーム!』」」


アルタイル城の正門の中央に巨大な魔法陣が浮かび上がると魔法陣から小さな竜巻が生み出される。

竜巻は辺りのモノを飲み込みながら大きく膨れ上がって行く。

それは空へ立ち昇る竜のごとく激しさとエネルギーを漲らせている。

そして周りの敵兵を巻き込みながら正門を破壊して行った。


魔法は合わせることで巨大になって行く性質がある。

それが弱い魔法でも最大魔法を越えるエネルギーを持つ。

その戦い方は聖戦でも用いられた戦法のひとつだ。

強大な魔獣に対抗するには膨大なエネルギーが必要になるからだ。


プロテクションの第一段階を経てサンドストームによる第二段階。

そして、次は第三段階へ入る。

私はすぐさまガルドに指示を出す。


「ガルド!重装備部隊をアルタイル城の正門前へ配置せよ!」

「やっと俺達の出番か。みんな行くぞ!」


ガルド達、重装備部隊は巨大なサンドストームが創った道を進んで行く。

巨大なサンドストームは敵兵と正門を吹き飛ばしただけでなく弓部隊の視界をも塞いでいる。

的が見えなければ弓部隊も攻撃のしようがない。

敵からの攻撃を受けずに前に進める機会を魔法で創り出したのだ。

巨大なサンドストームがアルタイル城にぶつかって消え失せる頃には、ガルド達重装備部隊の防壁が正門の前に出来上がっていた。

敵兵達は隊列を組み直して体制を整える。

ガルド率いる重装備部隊と敵の騎士団の睨み合い。

これで重装備部隊による防壁を造る第三段階は終了した。

速やかに第四段階へ移行する。


「プリシア!敵の騎士団へ向けて後方支援を頼む!」

「今度は私も参戦するからね。みんな、お願い!」


プリシアの合図で弓部隊が重装備部隊の後ろに陣取り弓を構える。

そして敵の騎士団目がけて一斉に矢を放った。

矢は真っすぐに飛んで行き敵の騎士団を捉える。

敵の騎士団はジリジリ後退しながら城の中へ押しやられて行く。

プリシアも負けじと爆弾を投げつけた。


「目を眩ませ!『聖光弾!』」


プリシアの投げた爆弾が敵の騎士団の足元で弾けると眩い光が放出される。

敵の騎士団は顔を覆いながら、その動きを止めた。

ここへ来ての目眩ましの聖光弾なんてプリシアも考えたものだ。

これで第五段階に移れるものだ。

私はドミトス達、騎馬隊に指示を出す。


「ドミトス!騎馬隊と共に突入せよ!」

「任せておけ。アルタイル軍の底力を見せてやる!」


ドミトスは騎馬隊を率いて正門を潜り抜けて行く。

そして最前列で動きを止めていた敵の騎士団と衝突をした。

騎馬隊対騎士。

高さに分がある騎馬隊に有利だ。

しかし、道幅が狭くて騎馬隊は列になって並んでいる。

なので一つの騎馬に対し、複数の騎士が相手になっている状況。

これではいくら有利と言われても騎馬隊に勝機はない。

そこで私はエリザ達魔術師部隊に新たな指示を出した。


「エリザ!ダイヤモンドダストで堀を凍らせるんだ!」


エリザ達、魔術師部隊は重装備部隊の影に隠れて魔法の詠唱に入る。

これならば敵の矢が飛んで来ても重装備部隊が壁になる。

すると、敵の魔術師部隊が現れて魔法の詠唱に入った。


「魔法で魔法を打ち消すつもりか」


しかし、数ではこちらの方が上。

魔法と魔法がぶつかり合っても、こちらの魔法の効果の方が上回るはず。


「タクト、準備が出来たわよ。いつでもいいわ」

「よし、ダイヤモンドダストで堀を凍らせろ!」

「「零氷が紡ぎし雫、氷雪の飛礫となりて、空間を切り裂け『ダイヤモンドダスト!』」」


青い魔法陣が堀の周りに浮かび上がると空気中の水分が冷気を放つ。

パキパキと細かな音を立てながら堀を凍らせて行く。

みるみるうちに堀は氷像と化した。

ようやく騎馬隊の足元が整った。

これで広く展開して攻撃が出来ると言うものだ。


「これはありがたいぜ。皆の者、行くぞ!」


ドミトス達、騎馬隊は広く展開して敵の騎士団と衝突する。

足元が整ったおかげで騎馬に対して3名ほどの騎士と相対している。

これならば騎馬隊に分があると言うものだ。

すると、敵の魔術師部隊がファイヤーウォールの魔法を放った。

ファイヤーウォールは堀を覆い尽くすように広がると氷を溶かして行く。

そしてみるみるうちに氷を溶かすと複数の騎馬を巻き込んで崩れて行った。


「ダイヤモンドダストにファイヤーウォールで対抗して来るなんて、考えたな」


こちらの損失は騎馬数名程度。

大した被害ではないが戦場が元に戻ってしまった。

すると、騎馬隊はじわじわと敵の騎士団に押されて行く。

そして重装備部隊が守る正門前まで押し返されてしまった。


思っていたよりも敵の反撃が強い。

第五段階に入ったら一気に城へ侵入出来るはずだったのだが、読みが甘かったか。

こうなってしまったら戦術を修正しないといけない。

まずは中門から正門に続く橋を攻略しなければならない。

騎馬隊は機動力があるが狭い場所では思うように身動きがとれない。

ならば、重装備部隊を前面に押し出してじわりじわりと進軍させるべきか。

敵も条件は同じだ。

進軍して来るならば騎士団を前面に押し出すはず。

攻撃の騎士団と防御の重装備部隊。

どちらも拮抗するだろうが、こちらには奥の手のガルドがいる。

ガルドで敵を薙ぎ払いつつ重装備部隊で進軍させる。

そして中門を破壊すれば騎馬隊を投入できる。

注意しなければならいのは敵の魔術師部隊だ。

弓部隊の攻撃は重装備部隊で打ち消すことが出来るが魔法は別だ。

さっきの対応のように敵も闇雲に魔法を放っている訳でない。

こちらもその辺を考慮して魔法を放たなければならない。

堀を埋める作戦は失敗に終わったから他の手を考える必要がある。

効果的なのはデラグレイブあたりか。

敵の騎士団の足元を揺るがして隊列を崩す方法が効果的だ。

しかし、そうしても敵も同じ魔法で打ち消しを図って来ることが予想される。

魔法を確実に放つための準備が必要だ。

そのためには意外な一手となるループ辺りだろうか。

ループは同じ動作を繰り返させる効果がある。

詠唱時間も短いし敵の魔術師部隊が詠唱に入ったら魔法を放てばいい。

プリシア達、弓部隊は後方支援に回そう。


「よし、ガルド。重装備部隊を進軍させろ!最前線で敵を打ち払え!」

「そうこなくっちゃ。行くぜ!」


ガルドは大剣を振り上げて敵の騎士団部隊に突進して行く。


「これでも食らいやがれ。『爆裂剣!』」


ガルドの大剣は敵の騎士を捉えると爆発を起して敵を吹き飛ばす。

破竹のような勢いで敵の騎士をなぎ倒して行く。

それに続くように重装備部隊も進軍して行った。

敵の騎士と重装備部隊は橋の中央で衝突している。

すかさず、私はエリザに指示を出した。


「エリザ!デラグレイブで敵の騎士団の足元を揺るがせ!」

「わかったわ」


エリザ達、魔術師部隊は両手を翳して魔法の詠唱に入る。

それを受けて敵の魔術師部隊も魔法の詠唱に入った。

同じ手は食わないよ。

私はルーンに指示を出す。


「ルーン。ループの魔法を敵の魔術師部隊にかけるんだ!」


敵のプリ―スト部隊は騎士団の回復に努めている。

そして弓部隊はこちらの重装備部隊に向けて矢を放っていた。

たまらずガルドは重装備部隊の影に隠れる。

プリシア達はと言うと後方から敵の騎士団へ向けて攻撃をしていた。

土砂降りのような矢が双方に飛び交う。

こちらは重装備部隊で弾かれているが敵はじわりじわりと後退して行く。

そして、間髪入れずにルーン達の魔法がさく裂する。


「「時の迷宮に迷いし子羊、輪廻の道をいざ行かん『ループ!』」」


敵の魔術師部隊の足元に金色の魔法陣が浮かび上がるとループの効果が発動される。

今度は魔法を合わせるのではなく、個々に魔法を放った。

敵の魔術師部隊は同じ動作を繰り返しながら、ひたすらループしはじめる。

この魔法はある意味、反則的な魔法だ。

同じ動作を繰り返させると言う時の迷宮にでも迷い込んだかのような効果で。

しかも、下級魔法にも関わらす詠唱時間も短く効果は絶大なのだからコスパがいい。

そんなことを考えているとエリザ達の詠唱が終わる。


「「古の大地に眠りしり命、漆黒の蛇となりて、大地を震わせ『デラグレイブ!』」」


敵の騎士団の足元にオレンジの魔法陣が浮かび上がると地響きが鳴り出す。

そして巨大地震のような轟音と共に大地が波のように揺れ出した。

敵の騎士団はたまらずに四つん這いになって大地に必死に食いつく。

隊列は崩され見るおもえない状況に陥った。

狙い通りだ。

ガルド達は魔法の効果が切れるのを待っている間に体制を整える。

そして魔法の効果が切れると同時に突入を開始した。

ガルドは惜しみもなく爆裂剣を放って行く。

その度に敵の騎士が宙に舞い上げられる。

その光景はゴミ箱を漁っている猪のようだ。

それに続くように重装備部隊も攻撃をしながらじわりじわりと進軍して行った。

そしてアルタイル城の中門前まで辿り着く。


「あと一息だぜ。お前ら、行くぞ!」


ガルドの合図とともに重装備部隊は敵の騎士団へ衝突する。

敵の騎士団は負けじと押しのけようと押し返す。

両者の力が拮抗している間に敵の騎士は大砲を持ちだして来た。


「おいおい、こんなの聞いていないぞ」


ガルドは敵の攻撃をかわしながら青い顔を浮かべる。

そして踵を返すと重装備部隊の背後に隠れた。

こんな至近距離で大砲を放てば自らも巻き込まれるのは必須。

それだけ敵は追いつめられていると言うことか。

私はすかさずルーンに指示を出す。


「ルーン。急いでプロテクションを頼む!」

「そう言われましても、今はループを発動中です」

「ループはもういい。プロテクションを優先させろ!」


すると、敵は躊躇なく大砲を放つ。

砲弾は重装備部隊を直撃して大爆発を起した。

重装備部隊は吹き飛ばされて空に散って行く。

ガルドはたまらずに頭を抱えながら、こちらへ逃げ帰って来た。

隊長がまっさきに逃げ帰って来てどうするんだ。

と、ツッコミたくもなるが、この状況なら仕方がない。

大砲相手には重装備部隊など全く歯に立たないのだ。

敵は砲弾を込めると間髪を入れずに大砲を放って来る。

その度に重装備部隊は空に舞い上げられて倒されて行った。

こちらの犠牲は500にも上る。

私は後退命令を出して全部隊を正門の外へ後退させる。

すると、敵も砲撃を止めて体制を整えはじめた。


「あんなところで大砲を持ち出すだなんて私の予想をはるかに超えて来た」


あと一息の所まで敵を追い詰めたが一手足りなかった。

しかし、敵の部隊も大幅に減らすことが出来たことは良しとしなければ。

私は部隊に体制を整えさせて次の戦術を練り直した。


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