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103「サーベルタイガー戦」

リースの森を抜けて1日。

サラスの草原地帯にやって来た。

この草原地帯は一面平原でお折れていて樹木などは見掛けない。

地平線を見やると微かにニーズの街が見える。


「この草原を越えればニーズの街だ」

「ニーズの街か。懐かしいわね」

「タクトさんと初めて出会った街ですからね」

「あの時は俺達弱かったよな」

「最弱冒険者なんて馬鹿にされていたよね」


ガルド達は昔を想い出しながら懐かしむ。

ニーズの街を旅立ってから1年ぐらい経つだろうか。

正直、ガルド達とはじめて出会った時は大丈夫なのか不安だった。

何せ他の冒険者達から最弱と馬鹿にされるくらい戦いに不慣れで。

まあ、だからこそ私の戦術で生きると考えたのだが。

変に経験を積んだ冒険者は自分の考えで行動することが多い。

戦術を立てることもなく経験だけで戦いをしたがる。

しかし、それでは経験を越えるような強敵が現れた時に行き詰ってしまう。

その時に戦術があれば強敵にでも太刀打ちできるのだ。

私の狙い通りにガルド達は強くなった。

戦術に則った戦いを経験するとことで戦いの基本を身につけた。

今のガルド達を見たら最弱と馬鹿にする冒険者はいないだろう。


「今の私達を見たら馬鹿にして来た人達はなんて言うかな?」

「きっと腰を抜かすぞ」

「ハハハ。そうだな。ガルド達は本当に強くなったよ」

「タクトさんに言われると本当に強くなったと思えますわ」


私達はお互いの顔を見合わせる。

そしてお互いに確かめ合うと大笑いをした。

その場にいた誰もが自分達の成長を喜ぶ。

それは聖戦へ向けた布石となる。

しかし、まだ魔獣と戦うには力不足。

もっと強くなる必要があるのだ。


「ねえ、それよりあれを見てよ。あそこにモンスターがいるわ」


プリシアが指を指した先を見やるとサーベルタイガーの群れが休憩をしていた。

数で80はいるだろうか。

こちらは緩い丘になっておりサーベルタイガー達を見降ろせる。

しかも風下にいるのでサーベルタイガー達に気づかれていない。


「どうするの?」

「もちろん討伐するさ。だが、あれだけの数のサーベルタイガーを討伐するには戦術が必要だ」


――サーベルタイガー――

種類:群れで行動する巨大虎

全長:5メートル

知性:普通

耐性:なし

弱点:なし

特徴①:素早い

特徴②:鋭い牙と爪を持っている

生息場所:サラスの草原地帯

倒し方:首を刎ねる


まずは戦場の把握だ。

戦場を見やるとサーベルタイガーがいる場所の周囲は緩い丘がある。

サーベルタイガーはちょうど窪みで休憩しているような状態。

風はサーベルタイガーがいる方角から、こちらに流れて来ている。

なので匂いで感ずかれることはない。

簡単に傍まで近づけるだろう。

しかし、正面から攻めても80体もの数のサーベルタイガーを相手にするのは難しい。

大量にいるモンスターには奇襲攻撃が有効だ。

奇襲をかけて混乱させれば、こちらに勝機が恵まれる。


次にモンスターの特徴の把握だ。

群れで行動することは実際に見てもわかる。

耐性はないのは嬉しいが弱点がないのは少し困る。

戦術は相手の弱点をついて立てることが多いからだ。

素早さとあるが、どれほど素早いのか。

5メートルある全長から考えれば実際はそれほど素早くはないのかもしれない。

鋭い牙と爪は主力の攻撃手段なのだろう。

倒し方はオーソドックスで首を刎ねる。

そのためには近接しなければならない。


「まずはチームを二手に分ける。ガルド、エリザ、ルーン組みとマリア―ヌ、プリシア組みだ。ガルド組は正面から、マリア―ヌ組は側面から奇襲をかけてもらう」


ガルド組は進軍してサーベルタイガーの注意を惹きつけてもらう。

その隙にマリア―ヌ組が奇襲をかけてサーベルタイガーの混乱を誘う。

混乱をさせ戦力を削いでから一気にカタをつける戦術だ。


「奇襲攻撃か。考えたな」

「何せ相手は80体もいるのだからな。正面から攻めるにも闇雲に侵攻しても無意味だ」


まずはサーベルタイガーの注意を惹きつけることが肝心だ。

ガルドを全面に押し出して暴れてもらう。

もちろん予めルーンのチャクラで身体能力を上げてからだが。

その間にエリザには魔法の詠唱に入ってもらう。


その上でマリアーヌ達に奇襲をしてもらいサーベルタイガー達を混乱させる。

より混乱を誘うためにプリシアの爆裂霧弾で視界を奪う。

そして混乱に乗じてエリザのダイヤモンドダストで動きを封じたら。

その後は各個サーベルタイガーにとどめを刺す作戦だ。

これならば80体もいるサーベルタイガーを一網打尽に出来るだろう。

ただ注意しなければならないのは時間だ。

ダイヤモンドダストの効果が切れる前にサーベルタイガーにとどめを刺さなければならない。

それにはルーンのチャクラがカギになるだろう。


「作戦は以上だ。何か質問のある者はいるか?」

「ガルドさんひとりでサーベルタイガーの注意を惹きつけるのは危険じゃないですか?」

「そこはガルドに頑張ってもらうしかない」

「ルーン、心配するな。俺がそう簡単に殺られるかよ」


ガルドは胸を張って誇らしげに振る舞う。

ガルドも着実に力を着けて来ているからサーベルタイガーに引けはとらないだろう。

まあ、いざとなったらルーンのプロテクションでガルドを保護することもありだが。


「ゴブリンロード戦の時みたいに詠唱中のエリザが狙われることはないのか?」

「それは十分あり得る。サーベルタイガーの知性はゴブリンロードと同じで普通だ。エリザを狙って来るかもしれない」


その時は私がエリザを守る。

そのためにもマリア―ヌに剣術の稽古をつけてもらって来たのだからな。

サーベルタイガーを倒せなくとも追い払うぐらいのことは出来る。


「エリザが狙われる前に私達が奇襲をかければいいんじゃない?」

「それもありだが奇襲はタイミングが肝心だ。早すぎてもダメ、遅すぎてもダメだ。サーベルタイガー達の注意を十分に惹きつけてからじゃないと意味がない。奇襲の判断はマリア―ヌに委ねる」

「任せておけ」


実戦経験の多いマリア―ヌならば奇襲のタイミングは十分に計れるだろう。

ヴェズベルト王国の騎士団の時も実戦で何度も経験して来たはずだ。

まあ、その時は対人間だったのだろうが。


「よし、作戦開始だ!」





ガルド達は正面に陣取りながらマリア―ヌの合図を待つ。

ルーンは既に魔法を詠唱する体制に入っている。

すると、マリア―ヌが鏡で合図をして来た。


「ルーン、チャクラでガルドの身体能力を上げてくれ」

「神樹より生まれし果実、緋色の甘き雫となりて、かの者に力を与えん『チャクラ!』」


ガルドの足元に金色の魔法陣が浮かび上がると光でガルドを包み込む。

キラキラとした粒子がガルドの神経を刺激して力を漲らせた。


「来た来た来たー」

「よし、ガルド。サーベルタイガー達の注意を惹きつけてくれ」

「オラオラオラ―。お前達の相手は俺だ!」


ガルドは叫び声を上げながら丘を駆け降りて行く。

すると、サーベルタイガーがガルドに気づき攻撃体制に入る。

大剣を振り回しながらガルドはサーベルタイガーの群れの中へ飛び込んで行った。


サーベルタイガーはガルドを取り囲み前足を蹴って飛びかかるタイミングを計っている。

ガルドは構わずに大剣を振り回してけん制する。

と、次の瞬間、サーベルタイガーの一匹がガルドに飛びかかった。


「甘いんだよ!」


すかさずガルドは大剣で攻撃を受け止めてサーベルタイガーの腹を蹴飛ばす。

すると、背後からもう一匹のサーベルタイガーが飛びかかって来た。

ガルドは振り向きさまに剣を振り上げて、


「させるかよ!」


サーベルタイガーの頭目がけて打ちおろした。

サーベルタイガーは地面に叩きつけられて頭から血を流す。


「ガルド、やるじゃない」

「まだまだだ。エリザ、ルーン、私達も行くぞ」


私達は身を潜めながら魔法が届く範囲まで近づいて行く。

その間もガルドはサーベルタイガーと格闘していた。


「おら、それで終わりか?お前らの力を見せてみろ!」


ガルドは頻りに挑発をしながらサーベルタイガーの注意を惹きつける。

サーベルタイガーに言葉は通じないだろうが、ガルドの気迫は感じているようだ。

頻りにグルルと唸り声を上げて威嚇している。

傍から見ているとサーカス団の虎を仕込んでいるピエロのようだ。

まあ、虎のようにカワイイものではないのだが。


「ガルド、サーベルタイガーを惹きつけているね。マリア―ヌ、まだ?」

「まだだ。よく見てみろ。ガルドが注意を惹いているのは前面のサーベルタイガーだけだ。後ろにいるサーベルタイガーは周囲を気にしている」

「こちらの作戦に気づいたのかな?」

「それはわからないが、まだ奇襲のタイミングじゃない」


マリア―ヌとプリシアは右手の丘の上に身を隠してタイミングを見計らっていた。

そこへ私達がサーベルタイガーの傍までやって来る。

身を伏せて草むらに身を隠しながら間合いを詰めて行った。


「タクト達が来た」

「ちょっと近づき過ぎだな」

「サーベルタイガーがタクト達の方を見たよ」

「マズイ。気づかれたようだ」


すると別のサーベルタイガーがマリアーヌ達の方を見やった。

慌ててマリアーヌはプリシアの頭を抑えて身を隠す。

あいにくサーベルタイガーはマリア―ヌ達には気づかなかったようだ。


「あのサーベルタイガー。ずっとこっちを見ているわよ」

「気づかれているようだな」

「どうする?」

「仕方がない。エリザ、魔法の詠唱に入ってくれ」

「わかったわ」


エリザは立ち上がると両手を前に突き出して魔法の詠唱に入る。

サーベルタイガーはすぐさまエリザに気づいて様子を伺う。


「奇襲はまだ?」

「まだだ」


もっとサーベルタイガーの注意を惹きつけなければ混乱は誘えない。

マリア―ヌはそう判断していた。


しかし、ガルドの消耗が激しい。

チャクラも効果が切れて素に戻っている始末。

時間がかかり過ぎだ。

攻撃を受けたようで体は傷だらけ。

それでもガルドは威嚇を止めなかった。


「まだまだやれるぜ!」


ガルドは剣を振り回しながらサーベルタイガーを威嚇する。


「仕方がない。ルーン、プロテクションでガルドを保護してくれ」

「わかりましたわ」


ルーンは予め魔法の詠唱に入っていたためすぐに魔法を発動出来た。


「天より降り注ぎし光、星光の束となりて、かの者を守らん『プロテクション!』」


ガルドの足元に金色の魔法陣が浮かび上がると光の壁が競り立って行く。

ガルドを取り囲むようにドーム状に壁が出来上がった。

サーベルタイガーはガルドに飛びかかるがプロテクションに阻まれてしまう。

すると、後方にいたサーベルタイガーが私達の方へ向かって来た。


「マズイ、タクト達の方へ向かって行くぞ」

「マリア―ヌ、もう行こうよ」

「仕方がない。少し早いが行くぞ!」


マリア―ヌとプリシアは叫びながら右側の丘から駆け降りて行く。

それに気づいたサーベルタイガーがマリア―ヌ達に向かって行った。

すかさずマリアーヌは足を踏ん張って止まると両手を組んで構える。


「プリシア、私を越えて行け!」

「わかった」


プリシアはマリア―ヌの両手に足を乗せて高く飛び上がると、


「目の前を覆い隠せ!『爆裂霧弾!』」


ありったけの爆弾をサーベルタイガーに向かって投げつけた。

爆弾は地面にぶつかって弾けると白い煙で辺りを包んで行く。

サーベルタイガーは立ち止まり混乱をはじめた。


「やった!」

「喜ぶのはまだ早い。タクト達の方へ向かったサーベルタイガーは無傷だ」


サーベルタイガーはエリザに向かって駆けて行く。

すかさず私は黒紫刀を構えてエリザの前に立ちはだかる。


「来るなら来い。お前の相手は私だ!」


サーベルタイガーは私の目の前で飛び上がるとエリザへ目がけて牙を向ける。


「させるかよ!」


私は高く飛び上がり剣をサーベルタイガーの腹目がけて突き刺した。

サーベルタイガーは唸り声を上げて地面に倒れ込む。


「タクト、ありがとう。こっちの準備は出来たわ」

「よし、エリザ。ダイヤモンドダストでサーベルタイガーの動きを止めてくれ!」

「零氷が紡ぎし雫、氷雪の飛礫となりて、空間を切り裂け『ダイヤモンドダスト!』」


サーベルタイガーの足元に魔法陣が浮かび上がると空気中の水分が冷気を放ちはじめる。

そしてパキパキと音を立てながらサーベルタイガーを凍らせて行った。

サーベルタイガーは氷像と化し沈黙をする。


「よし、みんな総攻撃だ!」

「借りは返してやるぜ!奥義!『大車輪!』」


ガルドは高く飛び上がると剣を突き立てて体を回転させる。

そして大車輪の如く、サーベルタイガーの首を刎ねて行った。

大車輪のライン上にいた全てのサーベルタイガーの首が刎ね飛んだ。


「時間は限られているんだ。一気に片づけろ!」

「私の前にひれ伏せ『疾風陣!』」


マリア―ヌが剣を振り払うと衝撃波が波状になってサーベルタイガーを捉える。

それは大地を駆け抜ける疾風の如く、鮮やかに首を刎ねて行った。


「私がいることを忘れないでよね。粉々に砕け散れ!『爆裂粉砕!』」


プリシアは爆弾をサーベルタイガーに向かって投げつける。

爆弾がサーベルタイガーにぶつかると爆発して粉々に粉砕して行った。


ルーンはルーンでガルド達にチャクラをかけて身体能力を引き上げる。

そしてガルド、マリア―ヌ、プリシアの総攻撃で時間内に全てのサーベルタイガーにとどめを刺すことが出来た。


「ふー。終わったな」

「意外とてこずったけどな」

「でも、タクトさんがあんなところで戦うなんて思っても見ませんでしたわ」

「あの時はとっさのことだったからな」

「それでも太刀筋は悪くはなかったぞ」


マリア―ヌに褒められると実感が湧く。

何せ私の剣の師匠だからな。

毎朝、みんなよりも早く起きて稽古をつけてもらっていたおかげだ。

マリア―ヌ達に比べたらまだまだ足元にも及ばないけど。


「タクト、カッコよかったわ。ますます惚れちゃった」


プリシアは頬を赤らめながら私に抱き着く。

その様子を見ていたガルドが、


「また、タクトかよ。俺だって頑張ったんだぜ」


唇を尖らせて愚痴をこぼした。

すると、マリア―ヌがガルドの肩を叩きながら労った。


「お前の活躍があったから勝てたんだ。もっと自信を持て」

「この作戦はガルドなくては成しえなかった。ガルドには感謝しているよ」

「そうか。いや、俺もそうだとは思っていたんだ。やっぱり俺が決め手になったよな。ガハハ」


ガルドは頭を掻きながらまんざらでもない顔を浮かべる。

ガルドが単純な性格で良かったと思ったひと時だった。


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