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1「旅立ち」

この世界には2種類の人物がいる。

ひとつは策士に従う者、もうひとつは冒険者たちを従える者。

策士とは、戦術帳をもとに作戦を組み立てて、冒険者達を勝利に導く者のこと。

一子相伝、門外不出の戦術帳を片手に仲間達と経験を積んで成長して行く物語です。


――策士――

それはかつてこの世界で最も謳歌を極めた職業。

策士とは、戦術帳をもとに作戦を組み立てて、冒険者達を勝利に導く。

いわば天下を統べる武将のような存在だ。

誰もが憧れ、夢に描いた策士は、冒険者達からも民衆達からも崇拝されていた。

しかし、誰にでもなれるものではなかった。

一子相伝を基本とする策士は策士の家計に生まれたものにしかなれない。

そのため世界に幅広く普及はしなかった。


時代が流れると栄枯盛衰の摂理からは逃れられない。

戦いで経験を積んだ冒険者達が自らの戦術で戦うようになり、策士は必要とされなくなって行った。

枯れ葉が落ちるようにひとつ、またひとつと失われて行く。

そして今では数えるだけの策士しかいなくなってしまった。


我がエスタール家も、その中のひとつ。

幼き頃から策士になるための英才教育を受けて来た私は、知力、体力、判断力、洞察力、忍耐力が人一倍高い。

しかし、一人前の策士になるためには教育だけでは足りない。

実戦を重ねて経験を積み、戦術に磨きをかける。

その繰り返しが一人前の策士になるために欠かせない作業なのだ。



18歳と言う年齢は、エスタール家にとって特別な日。

それは、修業の旅に出なければならないからだ。

今夜はそのための儀式が行われていた。


「タクト、これからは自分の力で生きて行くんだ。一人前の策士になっても、もう、ここへは戻ってはならない。それが私達一族に伝わる掟だ」

「はい、父上」


白い髭を豊かに蓄えた父親が白いローブを羽織り、真面目な顔で私に助言をして来る。

その横で髪の長い白い肌の母親が箱から古い本を取り出した。


「これは私達、一族に伝わる戦術帳よ。タクトのおじいさまが残して言ったもの。これを持って行きなさい。きっと、タクトを助けてくれるわ」

「ありがとうございます、母上」


私は母親が差し出した戦術帳を手に取ると、膝を折って敬意を示した。

普通の家庭では見られない光景も、私達一族には当たり前のことだった。



その夜。

私はベッドの上に横になりながら、祖父が残した戦術帳を眺めていた。

戦術帳とはモンスターの倒し方が詳しく書かれている本だ。

弱いモンスターから強いモンスターまで、特徴や弱点まで書かれている。

この戦術帳にのっとって戦えば、モンスターを簡単に倒すことができる便利な物。


「私が、これから背負って行くものは大きい。ゆえにやりがいがあると言うものだ」


私は不安よりも、自信を漲らせていた。

それは裏付けされた英才教育のたまものだった。


「明日は、私の策士としての旅立ちの時。今夜はゆっくりと眠ろう」


私は戦術帳を机に置くと、ベッドで眠りに着いた。



雲一つない青空の下。

私は両親や執事、メイド達に見送られながら屋敷を後にする。


「タクト、お前が立派な策士になることを祈っているぞ」

「はい、父上」


父親はあくまで平然と振る舞っていたが、母親は悲し気な表情を浮かべていた。


「母上、そんな悲しい顔をしないでください。私は簡単には死にませんから」

「タクト……」


私の言葉に感化されたのか母親は私を抱きしめて来た。


「タクト様……私、信じていますから」


側付きのメイドのプリムが涙を浮かべながら震える声で最後の言葉を告げる。

私とは幼い頃から一緒に育って来た幼馴染のような存在。

それ故に、別れもひとしおなのだろう。


「では、行って参ります」


私は母親の手を振りほどくと、名残惜しみながら屋敷を後にした。


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