第一話 同僚4
僕の名前は門前一臣享年26歳。
好きな食べ物はおしるこ。甘いものが大好きなごく普通の一般人。
こんなしょうもない人間の昔話を聞きたいと依頼してくる人がいるらしい。
面倒だけど依頼主もおしるこが好きらしいから、それに免じて今回は僕の一生について話そうと思う。こんな地味な人間の話、面白くないと思うけど。
僕はこの国が浮かれてパーパーお金を使っていた頃に生きていた。細々と、だけど面倒なのは嫌だった僕はこれで満足して暮らしていた。住んでいたのはボロアパート。だけど別に文句は無かった。文句があるとしたら一発あてた友人のマウントくらいだった。聞き流していたけれど。
平凡に暮らしていたある日のことだった。ぼんやりとテレビを見ていたら今日の運勢が突然始まったのだ。僕は占いが嫌いだ。当たらないと心では思っていても、どうしても心配してしまうからだ。そしてその日の結果は…12位だった。作った占い師とテレビ局へ呪詛を吐きながら仕事に向かった。
が、ついて早々、何故か全員呼び出されてしまった。脳裏に占い結果が思い浮かんでくる。
「皆、すまない!この会社今日で潰れることになった」
それからの記憶が無い。ただ絶望してアパートに帰って来た時だった。何故か大家さんが僕を見て走ってきた。とても嫌な予感がする。
「ちょっと門前さん!部屋に誰かいるわよ!警察には連絡したわ!」
「は!?」
慌てて自分の部屋に走る。鍵を閉めたはずの扉は無残な姿になっていた。そして僕の部屋に侵入していたのは良く知っているヤツだった。
「一臣、俺……賭けに失敗したんだ。なぁ頼むよ、このままじゃ俺アイツらに……!頼むよ!」
僕に毎日マウントを取ってきていたアイツだった。ただ昔と違って明らかに顔つきが違っていた。切羽詰まった人間の顔をしている。
「他のヤツは誰も助けてくれなかったんだよ…でもオマエは毎日話を聞いてくれていていただろ?なぁ本当に頼むよ一生のお願いだ」
脚にすがりついてきた。本能的に逃げなければと叫んでいる。だけどガッチリ掴まれて身動きができなかった。声も何も出なかった。
「黙っているということはオマエも他のヤツと同じなのか!くそっ!」
唐突に立ち上がると、ポケットから小さな銀色に光る凶器を突き刺した。
「くれないなら、奪うまでだ…ははは……ははははは!」
生暖かいものが身体からダバダバ出ているのが自分でもわかった。力が抜けてうまく立っていられなくなる。アイツが財布から取っているのをただ見ているしかできなかった。
「なんだよオマエ!これじゃ少なすぎるだろ。こんなんで良く生活できたな」
「うるせぇクソが……覚えてろ……カハッ」
そんなことを言った僕が最期に思い出したのは、家族の顔でも故郷でも好きな子の顔でもなく。
今日の占いの順位だった。
一臣、本当にすまん。




