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第一話 同僚1

少しずつ進めていきます。

 平原崇境ヒラハラスウキョウは手に持っているグラスを丁寧に磨いていた。

ボーン…ボーン…ボーン…

 時間を告げる時計の音を聞く。時計の針は深夜二時を指している。ふと窓の外をのぞいてみるが、真っ暗闇で辺りの景色はさっぱりわからない。すべてのグラスを磨き終わると、彼は大きく伸びをした。

カランカラン

「うわ、本当にこんなところに店があるんだな」

 一人の男は入ってくるなり失礼なことをこぼした。こけた頬に少しだけ後退した頭皮、全体的にヒョロヒョロとしているが眼だけは鋭い。辺りを見回していた。

「いらっしゃいませ。ご予約の西山将平さんでよろしいでしょうか?」

平原はそう言うと、ニコリと笑った。

「あ、ああ。俺だ」

 西山は近づくと正面のカウンター席に腰を下ろした。向き合うような形になる。

「なかなかに不気味な店内だな。これらは自分で集めたのか?相当色々な国から集めたように見えるが」

 店内はモノで溢れている。おもちゃから高そうな壺まで何でも棚の中に飾っている状態だ。昼ならかわいい人形も、深夜二時の店内では怪しく笑っているように見えて不気味に感じる。

「基本は貰い物です。こういうの持って帰ってくるのが好きな友人がおりまして。部屋に置けないから飾ってくれと渡しに来るのですよ…では早速ですが西山さん、こちらの契約書にサインしてください」

 突然話しを切り替えると、一枚の紙と年季の入った羽ペンを出してくる。紙には生年月日や職業、依頼内容を記入する欄のほかに文章が書かれていた。

【私は今日ここで起きた事を、信用できてかつ同じ様に困っている者一人だけに教えることを誓います。また、撮影や録音等の証拠が残るものを一切保存しません。当店での依頼は一人一件までとしています。複数の依頼内容がある場合も吟味してから一つ選んで下さい。】

「これ、守らなかったらどうなるんだよ」

記入しつつ薄ら笑いを浮かべながら西山は尋ねた。平原は少し悩んだ後に口を開く。

「西山さんにとって起きてほしくないことが起きると思いますよ。と言ってもまだ守らなかった人が今までいなかったので」

「ほぉ…それは余程のことを体験できるようだな。今から楽しみにしていよう」

クククッと笑ってから契約書の記入を終えて平山に返した。一読した後に顔を上げる。

「西山さんは雑誌記者をされているのですね。道理で周りをよく見ていらっしゃる。どのような記事を書かれているのですか?」

「俺か?俺の専門はオカルトだな。おっと、そんな顔するなよ!もちろんこの事は書かないよ」

両手を挙げ、オーバーリアクションを取る西山に少しだけ嫌そうに顔をゆがめると、再び契約書に視線を落とした。

「では、依頼内容について西山さん本人からお伺いしてもよろしいでしょうか?」

歯を剥き出すように西山は笑うと、のけぞっていた体を戻して身を乗り出すようにして口を開いた。

「はいよ、では早速…これは俺の事務所に出てくる幽霊の話だ!」


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