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修了生代表、王太子の登場

「顔を上げてくれ」


 凛としたよく通る低い声。全生徒がよく知っているその威厳のある声に、わたしたちは揃って顔を上げた。

 殿下によく似た風貌でありながら、雄々しさを兼ね備えた端正な御尊顔。

 殿下の兄、王太子殿下。一学年上の卒業生であり、前生徒会長であったお人。


「どうこの場を収めるか様子を窺っていたが……お前は一体何をやっている」

 獰猛な獣のような瞳で、しかし静かに弟殿下を威嚇する王太子。引きつって声を上げた殿下とその隣にいるレイチェルちゃん。

 まだ寄り添ってたんかい。

「生徒への苛めを許せないと不当に叫びながら、自分は王家の威光を振りかざす。側近たちの婚約者を貶め疾しい目で見、口汚く罵る。自分の鬱憤を晴らすために、無関係な卒業生のための舞台を荒らす……為政者としてふさわしくないとは思わなかったのか?」

「そんな! 酷いです! エリオット様はわたしの事を思って……!」

「お前は誰だ? 俺は発言を許したか?」

「っ、学園は平等じゃないんですか!?」

 おっとレイチェルちゃん、真っ白になった殿下に変わって舞台に上がった! あ、エリオットというのは殿下の事ね。

 この子、下級とはいえ貴族の筈なんだけど、マナーとかちゃんと習ってる? 育児放棄されてるんじゃないかとか疑ってしまう。

「それは先程その愚弟が覆したではないか。自分を王族として扱え、とな」

 尚も何か言い募ろうとするレイチェルちゃんの腕を、殿下が押さえつけるように引きこんだ。そうよね。これ以上王太子殿下に粗相はできないと、さすがに殿下も理解したか。

 自分を庇ってくれる、と期待したレイチェルちゃんのおめめが輝いて喜色を浮かべた。

 が、当然殿下は押し黙ったまま顔色が戻らない。

「知っているか? 卒業パーティーの主催は代々在校生徒会が取り仕切っている。エリオット、そしてその側近たちよ。お前たちはこの場を設るために少しでも働いたか?」

 恭しく否定する側近くんたち。殿下は黙って俯いた。


 もうすっかり王太子の独壇場だあ。もっと遊びたかったなー。

 内心がっかりしてると、王太子殿下はわたしとルークへ顔を向けた。

「副会長であるルーク・テンペジアが婚約者殿の手を借り、二人だけで生徒会を回していた。俺も見かねて手伝おうとしたが断られたよ」

 は?


「いつまでも前会長の手を煩わせるわけにはいかないと。必ず成功させてみせる、と」

 え? 聞いてないんですけど!?


 傍に立つルークを見上げるとほんの僅かに口角を上げた。こ、こいつ……!

 いやまあ、わたしも知ってたら丁重にお断りしたと思うけど、思うけどさあ!

「お世話になった諸先輩方を労わる企画の手伝いを、貴方様にさせる訳にはいきませんでしたので」

 殊勝な事をのたまうルーク。確かに本末転倒だもんね。それでも少しくらい人員の補充とか、鶴の一声で何とかなったんじゃないのかなあ!?

 睡眠不足やら眼精疲労やらで肩こりと肌荒れ、枝毛が酷かったのよ。地獄だった。そんなわたしをよそに麗しの貴公子殿はさらっと美貌を保ってるし。こいついつ寝てんの。ってくらい働いてた。学園でも実家でも。


 わたしが心で泣いている間に、あれよあれよと殿下たちは別室に連れて行かれ、わたしとルークは功労者として拍手喝采の只中にいた。

 揃って礼をした後、わたしたちも殿下たちに続いて会場を後にする。

 生徒会としてあの場を仕切らなくていいのかと小声でルークに聞いたら。

「大丈夫です。在校生たちに根回ししてありますから。進行は彼らに任せましょう」

「はぁ!?」

 だったら最初から助っ人寄越してよ!


 別室では宰相様――ルークのお父様がいて、当事者たちに事情を聴いているところだった。

 殿下とその婚約者様は離れて座っているものの、他の二組は隣同士で着席しているのを見て、なんだかんだまとまったのかな。と思う。

 レイチェルちゃんだけがここにいない。

 殿下と側近二人は謹慎の上殿下は婚約を解消。婚約者様はかねてより打診のあった、隣国の第二王子を婿に貰うのだそうだ。

 後の二組の婚約は継続。まあ二人とも婚約者に頭が上がらなくなるだろうね。あれだけの事やらかしちゃった訳だし、相手方のお家に借りができちゃったわけだ。

「そしてルーク。お前はこのまま繰り上がって会長職に就け。リーオロッサは副会長を務めてもらう」

 二人して返事する。

 はあ、結局正式に役員になっちゃった。まあ忙しい峠は越えたし、あと数ヶ月でわたしたちも引継ぎだし、いいか。


 残りの人員は急遽選挙を執り行い決める事にしたみたい。

 ルークも学園名簿片手に何人か目星を着けていて、推薦やら立候補するように手回ししている。

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