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神楽さん家のある日の日常

 カランカランとコップに入った麦茶に入れた氷が奏でる音が縁側に響く。

日差しもすっかり強くなり、差し込む日によって気温はどんどんと上がっていく。

打ち水を周りにしてはいるが、その程度で収まるような暑さではない。


「ふぅー。うまい。やっぱ暑い日は麦茶に限るなぁ」

「いや、あんた。くつろいどるとこ悪いけど、ここダンジョン内やからな? もうちょっとどうにかならへん?」

「つっても実家みたいなもんだしなぁ。……ツヅラオー、おいでー」


 ミヤジに呼ばれたツヅラオは小さな足音を立てて、傍によって行く。

そう、寄って行ってちょこん、とミヤジの膝の上に座り、汗をかいたコップを手に取りゴクリと一口。


「ぷはっ。美味しいのです」

「神楽もどーぞ。よく冷えててうまいぞ」

「どーぞ、も何も。入れたんうちやからな? 不味いとか言ったら金輪際作らんで?」


 少し頬を膨らませて、神楽も二人に続き麦茶を飲んで。

にっこりと二人へと笑顔を向けた。1人は元気に笑顔を返し、もう一人は気恥ずかしそうに苦笑い。

勝ち誇ったような顔をして、神楽はもう一口、麦茶をゆっくりと口に含んだ。


*


 高々と上げられたボールを、神楽に投げられたツヅラオが空中で捉えて下に居るミヤジへ向けてけり落とせば、空中に具現させた盾で勢いを殺し、落下する途中のツヅラオへ緩くパスをする。

ツヅラオはそれを真下に居る神楽へ蹴り渡して、神楽は大きく振りかぶりボールへタイミングよく掌打(しょうだ)

先程のツヅラオの時とは比べ物にならない速度で、轟音と衝撃波をまき散らし、ボールはミヤジへ襲い掛かって、


「うおっ!?」


慌てて盾を出現させるも、あっさり破られる。


「ちょ、待って」


続けて2枚3枚……と勢いを殺すまで何枚も何枚も盾を展開して、

ようやく二桁の盾を破った所で勢いが殺され、ボールはミヤジの手によりゆっくりキャッチされる。


「チッ! もうちょいいける思うてんけどな」

「母様、母様。それでも十分凄いのです! 僕なんて一枚も破れなかったのです」

「落ち込まなくていいぞーツヅラオ。どう考えても神楽がデタラメなだけだからなー」


 しゅんとするツヅラオの頭を撫でながら、タバコを咥えてそう慰めるミヤジは満足げに続ける。


「でもここ最近のツヅラオの一撃も大分強くなってるぞ。もうすぐ一枚くらいは破られるかもな」

「ほ、本当なのです!?」

「本当さ。嘘言う意味ないだろ?」

「ヤッターなのです! これからも特訓頑張るのです!」


 飛び跳ねて喜ぶツヅラオへ、神楽が


「運動したし、小腹すいたな。ツヅラオ、何か用意してくれるか?」


と注文。


「はーい、なのです! 少々お待ちくださいなのですー!」


上機嫌に尻尾を振りながら、言われた通りに何かを作ろうと厨房へ消えたのを確認し、神楽が尋ねる。


「あんた、ツヅラオの一撃結構ぎりぎりやろ?」

「あ、やっぱり? バレてるよなーとは思ったのよ」

「あん子には大丈夫やろけど、うちにはバレバレやな。……素直に破られたらえーのに」


 こちらも煙管を咥えて煙を吐いて、そうミヤジに言うが、ミヤジは首を横に振る。


「もう少し、出来る限りはカッコイイお父さんで居たいのさ。自分のせいとはいえさ、今までかっこつけられなかったんだから、こればっかりは意地だな」

「せっかくあんたの所に寄越したのに、父親やて明かしてへんのやもん。そもそも何ですぐに明かさへんかったん?」


 無茶言うな、と苦笑しながらミヤジは言う。


「そん時には魔王と女神から色んな計画聞いて、動いてたんだぞ? 下手すりゃ明かしてすぐに父親が亡き者に可能性すらあったんだ。怖くて明かせるかよ」

「明かさへんまま死んだら、それはそれでアカンと思うけどな? ほーか、そん時からあんな結末も予想しとったっちゅうことか」


 煙管の灰を落とし、懐にしまって、何やら納得した様子の神楽。


「魔王の読みは本当に凄かったな。どんな状況でもいいように色々仕込んでたみたいだ。……それも、どうやらマデラの記憶を守る為だったらしいけどな」

「ほんま感心するわ。優しすぎや、魔王さんは。……ほんま、マデラに関しては甘いんやから」


トテトテと、可愛らしい足音が聞こえて、背丈にあった小さな割烹着を着たツヅラオが、


「母様ー、父様ー。おやつを作ったのですー!」


と元気一杯呼んでくれて。


「今いくわー」


と二人で並んで庭を後にする。


(人間たくさん殺してもうたあの子の罪を、名前を与えて上書きして、全部自分が背負い込むなんて、ほんま、魔王さんは激甘やな)


と、頭の考えを風に溶かして、ツヅラオの作ってくれた甘いきんつばに舌鼓(したつづみ)を打ちながら、神楽も、ミヤジも、そして二人に美味しいと言って貰えたツヅラオも、みんなして幸せを感じるのであった。

昨日の今日でスピンオフ投稿するというね。


今日はいつもの時間に読めないと思った方はいい意味で裏切られたのでは?


なんて、早めに投稿するという言葉に嘘は無い事を証明する為にです。


では、ダンジョン関係無いスピンオフ(の予定)、今後ともこちらもよろしくお願いします!

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