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異界日記  作者: 赤城康彦
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第五話

 内裏と言えば畏れ多くも京の帝のおられる場所ではないか。ということは、そこには帝に匹敵するお方がおられるという事か。

「はて」

 そういえば、竜宮城をお治めになる乙姫さまと紹介された。ということは、ここで一番偉いのは……。

「あらためて自己紹介を……。わらわはこの竜宮城を治める乙姫。選ばれし者であるそなたが来るという事で、出迎えに参った次第じゃ」

「なるほど……。でも、私が、選ばれし者とは」

「その話は、内裏で詳しく」

「はい」

 以後誰もが無言になり。勇ましい衛士に周囲を護衛されながら、そんな一行の人々の間を魚介類がすり抜けるように宙を泳ぐ中を、乙姫さまと通の一行は大極殿に入った。

 大極殿は二階建ての唐風の壮麗な建物で、多くの屈強な衛士が剣を下げ槍を立てて護衛の任についている。それらが乙姫一行を目にして一斉にうやうやしく一礼をし、通は度肝を抜かれる思いだった。

「乙姫さまのお戻りい~」

 宮仕えの者たちが声を張り上げて乙姫一行が大極殿へ戻ったことを告げ、にわかに慌ただしくなったが。

 太い柱の支える大極殿の中に入れば、奥行きもあり、東西にも広く。その両端に官人がうやうやしく頭を下げて並んで、一行を出迎えていた。そしてさすがにこの中には魚介類はいない。

(これはすごい)

 その宮城や大極殿の規模やそれに伴う人の多さ。それらが一斉に忠誠を尽くす乙姫さまなる女帝(?)。

(丸亀のお城とは大違い)

 丸亀藩は讃岐西部六万石の小さな規模である。それと比べること自体間違っている。ということはわかっているのだが、どうしても比べてしまうのは人情か。

 砂介の背の上で、通はぽかんとしっぱなしだった。それを横目に乙姫さまは、すすすと前に進み出て、奥へ奥へとゆく。

「下りなさい」

 うながされて通は砂介の背から下りた。この大広間の両端で拝礼をする官人に挟まれながら、通らは乙姫さまの後ろをついてゆくように歩みを進め。

「そこまで。ここで跪きなさい」

 と言われて、その通りうやうやしく跪いた。

「よい、面を上げよ」

 乙姫さまの、透き通るようなながらも威厳ある重みをふくんだ声にうながされて、通は顔を上げて。

 上座の乙姫さまを見上げた。

 乙姫さまは一段高くなっている高座の玉座に座して、通らを見据えている。

 大極殿の中は日の光も届かないのか薄暗い、しかし多くの蝋燭が灯されて、闇を払い人々の姿を浮かび上がらせる。

 しかし、やんごとなきお方という者は、下々の者にお顔をお見せにならぬものだが。高い所にいるとはいえ己と人の間に遮るものを何も置かないとは。なんと開明的なところなのだろうか。

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