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異界日記  作者: 赤城康彦
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第三話

 が、そうなればスナメリの背中から落ちてしまう。慌てて砂介は叫んで、通に正気を保つよう呼びかけ。

 通も気を取り直して、砂介の背中につかまった。

「落ち着いて、ゆっくり息をしましょう」

「は、はい」

 言われて素直に深呼吸をすれば、いくらか落ち着く。それから周囲を見れば、淡い空の下、宙に浮かぶスナメリの砂介につかまる自分。その周囲を、魚介類も同じように宙に浮かんでいる。

 通は絶句し、口をつぐむ。それでも落ち着いてさらに周囲を見れば、眼下には家屋などの建物が建ち並び街をなしている。

「おお、砂介。選ばれし者を連れて来たか」

 と、下から声がする。

 街には通と同じ人間がいる。砂介はそれに向かい、「はい」と返事をして高度を下げてゆき。それにともない街の人の姿もはっきりと見えるようになる。

「ああ、人がおられるのですね」

 と安堵するも。その装いは通とどこか違う。

「これは……」

 今の天和とは違う。昔の人が着る、唐風からふう礼服れいふく朝服ちょうふく制服せいふくを身にまとっている。男は頭巾や冠をかぶりしゃくを持っている者がいる。

 武装をしている者もいるが、武具も今のとは違い、昔見たことがある埴輪とよばれる土の人形と同じ武具を身にまとう。ふと、いにしえの都を守っていた武人・衛士とはこのようなものかと思った。

 女性はくん(スカート)を履き、手にはうちわ状の、さしばをもっている。髪は伸ばしているが、頭の上や首の後ろでまとめて、背中まで伸ばしている。

 さらに印象的なのは、眉間に紅で点をつけているところだった。

「まあ、まるで天平(奈良時代)のころのよう」

 砂介は気が付けば降りられる高さまで降りて来ており。

「どうぞ」

 と朝服姿の女性は通に手を差し伸べて、その好意に甘えて手を借りて砂介の背中から降りれば。

 足が地に着く感触を感じ、自分は生きていることも感じる。

 しかし、船から海に落ちて。それから――。

 ここはどこなのだろう。どのようにして自分はここに来たのか。

 見れば建物も唐風である。目の前には大手門があるが、屋根にはしゃちほこのかわりのように鳥の像があり。見ればそれは尾の長い朱雀であった。

「朱雀門?」

 ぽつりとつぶやけば、砂介は「そうです」と応えてくれ。

「この朱雀の門は南、東は青龍の門で西は白虎、北には玄武の門が建っています。これらは四神門(ししんもん)と呼ばれて、この宮城きゅうじょうを守っております」

 と、続けて通に説明してくれた。

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