05
「おはようございます、マスターはいらっしゃいますか?」
「ヒロさん、はい、いると思いますがどようなご用件でしょうか?」
「宅・・・、お届け物があるとお伝え下さい。」
今日は、夜明けと共に山を下りギルドへ直行しました。受付のお姉さんが、確認へ奥へと聞きに言ったようです。すぐに帰ってきて、奥の部屋へ連れて行かれた。
「おおっ、ヒロか?届けものってなんだ?」
「ほう、心当たりが無いと・・・」殺気を、そこはかとなく出してみました。
「ああっ、あの件か、で届け物は?」
がしゃがしゃとワザと音を立てながら、武器と防具を出してやりました。
「お届け賃として、いくらくれるのかな?」
「おおっう、大銀・・・」
「あんっ。」
「金貨1・・・」
「分かった、ギルドの所属を換える。その時、理由も聞かれるかもな。」
「5枚で。勘弁してくれ。頼む。」
「ふん、良かろう。但し、条件は付けさせてもらう。この先、襲われたら容赦無く返り討ちにする。生死は、知らん。後片付けは、お前の方でやってくれよ。騎士団対策も。元はと言えば、あんたの余計なちょっかいだから、それは分かってるよな」
「ああ、了承した。でも、出来るだけ五体満足で頼む。」
「この間の決闘も、そう思って怪我で許してやったのに押しかけて来たからな。今回だって、住処の傍でなかったら生かしてないものな。流石に、住処の傍が血だらけは、汚いから掃除が面倒そうと考えて、止めたけど。」
「ああ、掃除が面倒そう。本気か。」
「本気だよ、昨日の奴は、多分もう来ないが、クランには弱い奴が沢山残ってるだろう。ある程度強ければ、実力の違いを受け入れられるんだが、そうでなく、数を力と勘違いしているような馬鹿が殆どだから、そんな奴等は、生かしておいても面倒なだけだからな。始末しようと思ってる、宜しく頼むぞ。」
「おい、物騒だな。」
「そう思って、止めたいなら、俺ではなく向こうを何とかする事だな。」
そう言い残してマスター室を後にして、依頼の完了報告に向かった。
「薬草の採取4件、ホーンラビット討伐4件、完了を確認しました。」
「薬草の採取1件5000G、ホーンラビット討伐1件10000Gで、併せて60000Gになります。ギルドポイントは、12点となりG級に昇格しました。」
銀貨6枚を受け取り、ギルドを後にして5分ほど離れた薬師ギルドを訪ねました。
「すみません、お伺いしたいんですが。」
「はい、初めての方ですね、どのようなご質問でしょうか?」
「薬の製法は、どこで教えてもらえるのでしょうか?今まで狭い範囲で生活していたので自分の薬の製法が正しいかどうか、確認したいのと。新しい薬の作り方を学びたい。」
「薬師ギルドに入っていただきますと、基本的なレシピは製法を記した薬書を差し上げています。これで必要な素材を集めて、どなたか薬師の方の弟子になり修行するのが一般的です。上級薬や秘薬は、秘伝とされている事が殆どですのでそうなっております。」
「では、師匠を持たないと薬は、買って貰えないということでしょうか?」
「いいえ、そうではありません。薬そのものは鑑定で品質は分かりますので、こちらでの買取は、メンバーになっていただければ大丈夫です。メンバーでなくとも薬局に直接売る事は可能です。あくまでも弟子になるのは、製法の熟練と秘伝の為です。」
「薬師ギルドに入るには、どうすればいいんでしょうか?」
「弟子になるためには、身分証だけで結構です。買取や開店の為でしたら身分証、調薬した薬1品と入会金として金貨1枚です。」
「身分証って冒険者ギルドカードでも良い?」
「はい、問題ありません。冒険者は、お続けになるのですか?」
「うーん、どうしようか悩んでる。討伐したものの買取とかあるし。」
「でしたら、薬師ギルドでも買取をしているので、そちらをご利用した方がお得ですよ。冒険者ギルドでは、年間にノルマがあるし、緊急依頼時に身柄の拘束が発生する。薬師ギルドでは、薬の研究と言う側面があるので、そのようなものはありません。社会的にも認められていると思います。どうしてもと言う理由がないのであれば、脱退をお勧めします。」
「じゃあ、買取をして欲しいのでメンバーになります。はい、金貨1枚とポーションと冒険者ギルドカード。これでお願いします。」
「はい、承りました。金貨1枚と身分証を確認いたしました。ポーションを只今鑑定中ですので3番の応接室でお待ち下さい。薬師ギルドについて、説明させていただきますので。」
応接室で待っていると、ざわざわとした雰囲気で何だか騒がしくなってきた。
「ヒロ様、ポーションの確認も取れました。素晴らしい8級ポーションだそうです。。。」
(ん?ローポーションの筈だが、俺の鑑定ではローポーションとの結果だったが。)
「ヒロ様、ヒロ様、聞いていらっしゃいますか?」
「いや、ローポーションを持って来た筈だが、・・・」
「はい、以前の呼称ですとローポーションですね。」
「以前の呼称?」
「先月、改定がございましてポーションも上中下から1から10級に変更しました。同じローポーションなのに効能が違いすぎるとの苦情が多く、やっと改定となりました。ヒロ様、鑑定の所持者ですか、そうでしたらこの薬書に変更方法が書いてありますのでご確認下さい。では、引き続き薬師ギルドについて、説明させていただきます。ヒロ様は、ギルドに加入いただきましたので、これからは正式に薬師と名乗っていただいて大丈夫です。公式に認められました。作った薬は、どこの薬師ギルド、薬局にも販売してもらっても大丈夫です。ギルドとしての拘束はありません。個人の契約についても、何等拘束はありません。ただ、販売して良い薬品は、薬書に明記してあります。特別の許可を得ず、記載以外の薬品を製造、販売した場合は、その重さにより罰則を科されます。薬局の開店も出来ますのでその時には、またご相談下さい。何か、ご質問はありますか?」
「いや特には無い、薬局も今のところ開くつもりも無い。ああ、素材の買取だが毛皮とかも大丈夫なのか?」
「はい、薬師ギルドは商業ギルドとも密接に結びついているので、問題ありません。中には、冒険者ギルドには、依頼されない素材の採取依頼も出されます。どうしても取り扱いが難しい物とかですね。」
「うん、うん、そう言う事もあるんですね。」
「それでは、これで説明を終了いたします。こちらが薬師ギルドカードになります。この針に指をお願いします。はい、結構です。薬書がこちらになります。よくお読みいただく事を推奨いたします。結構便利な事もありますよ。はい、カードも出来ました。お渡しいたします。では、今後とも当ギルドを宜しくお願い致します。」
「はい、こちらこそ。」
そうして表に出ると視線を感じた。2人だったがすぐに増えた。今は、10人ほどが囲んでいるようだ。最初の2人には、殺気が無かったので、ただ単に雇われた見張りなのであろう。今囲んでいる10人には、殺気が感じられる。ここでは、襲って来ないようだ。どうしてくれようか?面倒だよな。この前の伯爵のように、何の関係性も無ければ、始末してしまえばお終いだが、こいつらは、関係性がばれてるからな。なんかあったら俺のところに調査の手が伸びてくる。まあ、いいか。森に引きずり込んで、魔物にでも食わせてしまおう。そう思い立ち、帰路へついた。
思った通り少し離れて付けてくるので、森の奥へ奥へと引き釣り込んだ。大きな岩に腰掛けていると、バラバラと取り囲んでくるので。出てくる先から、さっき拾った棒切れで頭を叩き昏倒させていった。全員終わったところで、1人1人木に繋いだ。全員が気がつくのを待って聞いてみた。どういうつもりなのか。
「どういうつもりで取り囲もうとしたんだ。」
「いきなり殴りつけるなんて卑怯だ。」
「話し合いに来ただけだ。」
「放せ。」
「この人気の無い森の中で、俺一人を取り囲もうとして、卑怯は聞いて呆れる。それに話し合いなら、街の中で出来た筈だ、薬師ギルドを出てからずっとつけてたんだからな。」
「それに俺に害を与えようとしている奴の、体勢が万全になるまで待たなければならないんだ。人を害そうとするんだ、当然害される覚悟もあるのだろう。それに、警告もした筈だ。今回は、騎士団に突き出すことにする。」
どうやらホッしている感じだ。このまま切られずにすむ、騎士団なら伝を使って有耶無耶にとか考えてるんだろうな。楽しい時間を味合わせてやろう、絶望の前の幸せのひと時だ。つなぎの人員も配置していないようだ。冒険者だろうに、こいつ等本物の無能のようだ。
「じゃあ、俺はこれから住処に帰り、明日にでも街の騎士団に届けを出して来る。お前等はそれまで、此処で頑張れよ。1日位何とか頑張れるだろう。」
「なっ、何を馬鹿な事を言ってるんだ。こんな森の中で1日も生きていられる訳が無いだろう。一緒に連れて行け。」
「止めてくれ、助けてくれ。」
「二度と襲ったりしないから、許してくれ。」
「これだけの人数は、身の危険を感じて置いて来るしかなかったんです。これで大丈夫だろ。それに今度襲われた時には、生死は知らんと言った筈だ。当然、覚悟の上だろ。助けてるじゃないか、俺は手を下さないよ、後は、君達の頑張りに掛かっている。頑張りたまえ。」
帰ろうとする俺に、まだ色々言い募るので、一言助言してやった。
「騒がしいと魔物が気がついて、近づいてくるよ、静かにしておいた方が良いよ。それに今のところ周りには、魔物はいないよ。じゃあ、明日の朝、見に来るよ。」
魔物は近くにいなかった、グレーウルフはいたよ。グレーベアもいた。どっちも動物だよ。
決して魔物ではないし、大して強くもない。何とかなるだろう。だって冒険者だもの。