02
「おおいっ、ここには冒険者ギルドはあるかい?」
「おお、あるぜ。何の用だい。」
「登録しようと思ってさ。」
「へぇー、身分証を見せてくれ。ようし、通っていいぜ。」
「場所を教えてくれるかい。」
「この道を真っ直ぐに行ってくれ、右側に剣の交差した看板があるからそこがギルドだよ。歩いて30分位かな。」
「ありがとう。」
やっと到着した、扉を開けて中に入った。正面にカウンターが並び、左手には掲示板があるようだ。右手には、酒場と言うかレストランと言うか、そんな感じの店になっていた。カウンターの上に看板が出ており、新規登録は、一番右だった。
「すみません。」
「はい、何か御用でしょうか?」
「新規登録をお願いしたいのですが。」
「おうおう、そんなヒョロヒョロで冒険者が出来るかよ、体を鍛えて出直して来な。」
「あのー、この盗賊のような方に許可をいただかないといけないのでしょうか?」
「手前、誰が盗賊のようだと。」
「貴方の他にいらっしゃいましたか。貴方に決まってるじゃないですか。」
「もう頭に来た、ぶっ殺してやる。」
「あのー、私は、未だ冒険者じゃないのですが、騎士団の方に訴えても構いませんか?騎士団がどのように裁定するか、楽しみですね。」
「いやあー、すまん。許してくれ。良く言い聞かせるから。」
「いえ、駄目です。冒険者の一般人に対する脅迫及び障害未遂です。どのような処分を課すのか、明確に教えて下さい。でなければ、納得は出来かねます。」
「そこまでしなくても良くは、ないかね。」
「大体、貴方はどなたですか?先程より名も身分も名乗りもせず、偉そうに、どのような権限をお持ちなのですか?」
「それは申し遅れた、このセールズのギルドマスターのウィルソンじゃよ。」
「そこまでとおっしゃいますが、冒険者が一般人を脅したのですよ、極刑は免れないでしょう、それはどこの街でも当然の事ですよね。ですから、当然の要求をしてい
るだけです。それともこの街では、罪にはならないとでも。」
「確かにデール達は、罪を犯した、しかし、極刑だと軽くても降格、悪くすれば除名も有り得る。なんとか許してもらえないだろうか。」
「除名も有り得る、と言うところですでに常習じゃあないですか。それなのに止めなかったのは、ギルドマスター、貴方の責任も大きいですね。これまでの対処が甘かったのですよ。それに年齢は、すでに成人を大きく超えていますよね、責任は十分取れると思います。」
「どうしたのですか?ギルドで処分できないのなら、騎士団に行きますが。」
「どうだろうか、君も冒険者になろうとしているようではないか、互いに冒険者として決闘で決着をつけないか。」
「あのぉー、決闘をして私になんの得があるんですか?私に何の得にもならないのに疲れる決闘などお断りです。騎士団に届けます。」
「じゃあ、君が勝ったら一人につき金貨2枚でどうかね。」
「はん、お断りです、一人につき金貨5枚、マスターからは、金貨10枚ならのっても良いですよ。それと決着は、死ぬまでですか?」
「おいおい、そこまでしなくても良くはないかね。掛け金は、了承した。決着は、動けなくなるまででどうだろうか。」
「分かりました、それで良いでしょう。死んでしまっても動けませんしね。」
「では、これから地下の鍛錬場で行う。」
「あのー、彼等金貨5枚は持ってるんですか?負けました、金貨もありませんではしまりませんからね。借金は、不許可です。即金でしか受け付けません。大丈夫ですか?」
「ああ、ギルドの預金から間違いなく支払う、足りない時は、奴隷落ちだな。」
「じゃあ、負けて掛け金が払えなかったら、犯罪奴隷って事ですね。」
「ええっ、負けたら騎士団へ突き出すのか?」
「何を言ってるんですか、当たり前じゃあないですか。決闘で勝ったら騎士団へ突き出すのを止めるんですから、負けたら当然突き出します。何当たり前の事を」
「では、殺りましょうか。」
ゾロゾロと野次馬達を引き連れて地下の鍛錬場へ来ました。立会人は、ギルドのサブマスターがやってくれるそうです。1対1でとか、言っているので時間も取られているし面倒なのでデール達5人対1人で、一編にして貰いました。
「じゃあ、本当に良いのですね。デール達5人対ヒロで決闘を開始します。始め!」
あっという間に片付けました、正面の2人には掌底で顎を打ち抜き、倒れ掛かるところに側頭部に膝をいれ、倒れたところで肩を踏み砕きました。残りの3人には、下段回し蹴りで膝を打ち抜き倒れたところで同じく、肩を踏み砕きました。こうすると失神が出来ないのです。降参と言わないので、全員の横腹を爪先で思う存分蹴りつけていると終了の合図があったので止めてやりました。
「止め!もう終わりです、止めて下さい。」
サブマスターが、叫んでいますが彼女が早く止めないから蹴りつけていただけです。だって降参の合図を彼等は、出さなかったのだから。
「何故、貴方は私を睨んでいるのですか?あなたの落ち度でしょう。相手の降参か、立会人の終了の合図でしか決闘は、終了しないのですから。貴方の合図が遅かったのですよ。責められるべきは、私ではなく一瞬の間に見極める力もないのに立会人を引き受けた無脳ですよ。」
そう一言断り殺気を飛ばしました。サブマスターが、青い顔をして蹲ってしまいました。
「オイオイ、殺気を収めてくれ。」
「でしたら、この方にも礼儀を教えておいてください。次は無いですよ。」
「それはどういう意味かな。」
「殺気を飛ばすと言う事は、当然打ち返されても文句は無いって事だろう。違うのかな。そう言う事だ。」
「分かった気をつけるように、徹底させる。それで約束の金貨35枚だ。確かめてくれ。それと騎士団には、人を呼びにやった。」
「だからもう帰れと言うのか?俺は、新規登録に来たんだぞ、登録しないうちに帰る訳が無いだろう。奴等が騎士団に連行されるところも、確認したいしな。」
静寂が訪れた。ギルドマスターと職員の挙動がおかしい。やっぱり思った通りだ。いきなりギルドマスターと職員が土下座を敢行してきた。
「すまん。デール達5人は、新人が来たら脅かして実力の無い者が登録するのを阻止させていたんだ。これまで間違いが無かったのに、今回は本当にミスってしまった。申し訳無い。ここらあたりで許してくれないだろうか。」
「じゃあ、何故決闘を止めさせなかった、あのあたりでは、新人冒険者としての実力は、十分に感じてた筈だろう。」
「この際、実力も見極めようと欲をかいてしまい、デール達5人には、痛い思いをさせてしまった。」
「で、俺の実力は分かったのか。」
「いやあ、C級は十分ありそう位しか分からなかった。規定があるので登録は、D級からだな。」
「いやあ、ここのギルドは、マスター、サブ共に力不足なので登録は、どこか違う街でするよ。運営を信頼できない。」
「オイオイ、勘弁してくれよ。C級2人、D級3人を潰されて挙句に登録は、他所って泣きっ面に蜂じゃあないか。」
「仕方が無いだろう、お前達の運営方針の結果だ。と、まあ、冗談だがな。」
「ところでギルドの登録は、H級からで良いぞ。最初は、採取しか受けないからな。それにギルドの仕組みについて何の説明も受けてないんだが。」
「おおっ、分かった。詳しく説明をさせる。」説明は、以下のようだった。
1、H級から始まりSSS級まである。
2、クエストは、1つ上の級まで受けられる。
3、クエスト失敗は、報酬の3割を罰金として払う。特に記載が無い場合。
4、クエスト成功時には、その報酬と記載のギルドポイントを受け取る。
5、H級からD級までは、上がる級に10を掛けたギルドポイントが必要。
6、C級からは、ギルドの推薦で試験を受ける。
7、依頼は、3種類あり一般依頼、指名依頼、緊急依頼だ。
8、C級からは、緊急依頼は理由が無い限り断れない。
9、1年間で1000000Z以上の依頼報酬が達成できなければ、除名。
これは、ギルドが関所税を立て替えており、冒険者はカードを見せる事で通過出来る特典があるため。
これを確認してD級まで昇級したら後は、流すことにした。
取り合えず新規登録をする事にした。ギルドカードには、針がついておりそれで指を指して血をつけ認証とする。認証が終わったら針を切り取り、今までの身分証と交換でギルドカードをくれる。もうすぐ昼になるので、今日の宿を決めようと思った。
「どこか、食事の旨い宿はないかな?」
「おおっ、銀の葉亭が良いんじゃないかな。此処を出て右に行き2つ目の交差点の手前の門だ。」
「ああ、ありがとう、行って見るよ。依頼は、明日からするよ、採取だけどな。」
そう言って、宿に向かった。マスター室を出た時、周りには誰もおらず静かに移動できた。それでも玄関ホールを通る時には、ひそひそ何か話しているのが聞こえた。