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 ああっ、記憶に無い天井だ。ここは何処だ!ああ、宿の天井か、昨晩は一気に疲れが出て早々と寝てしまったようです。まだ、起きたら自分の部屋で、夢だったなんて事を願ってるのかな。もう、諦めたつもりだったのだけど。今日は、どうしよう。別段目的があってラーンの街に来た訳でもないし、まあ、朝食でも取ってからこれからについて考えようかな。そんな事を漠然と考えながら、食堂へ向かいました。

 朝食を取り終り、お茶のようなものを飲みながらこれからの予定を考えていました。お金は、そこそこ持っているので今すぐ稼ぐ必要も無い。確かに白金貨も持っているが、こんなものはこの近辺では使えない、すぐに有名人だ。すぐに大丈夫でもこれからの事考えて、ポーションがいくらで買い取ってもらえるか確認しておこうか。薬師ギルドでも行って見るか、と思っていたところマスクテイル商会から迎えが来た。

 「すみません、会長がお越し願いたいとのことです。」

 「礼ならもう良いと、言ったんだがな。まあ、暇だし行きますよ。」

 使いの者と一緒に商会に向かいながら、商会でポーションを買い取って貰えばよいのか、とも考えてました。

 「わざわざ、おはこびいただきすみません。ヒロさんが、薬師と思い出しお尋ねしたい事があったんです。実は、王都の方で7球ポーションを頼まれたのですが、100本用意しなければならないところ、80本しか集まっていないのです、何本でもかまいませんお持ちで無いですか?」

(うーん、いきなり思い描く展開だが、ここで出し渋った方が良いのだろうか。まあ、ここは素直に渡し買取値段を確認しよう。)

 「はい、7級なら、30本程度ありますので、20本ならお譲りしますよ。で、買取はおいくらなのでしょう。」

 「1本銀貨2枚です。本当にお持ちですか、良ければ30本全て譲ってください。」

 「まあ、それは良いですよ、売る為に作ってるんですからね。因みに10級からの買取値段を教えて下さい。」

 「10級で銅板1枚、9級で銅板5枚、8級で銀貨1枚、7級で銀貨2枚、6級で銀貨5枚、5級で銀板1枚ですね。」

 「4級からは、いくらなんですか?」

 「時価ですかね、最近4級以上のポーションは見たことがありません。ああ、マナポーションは1.5倍、毒消しポーションは2倍です。」

 「この値段は、いつもの相場なんですか?」

 「いや、最近特にポーション類が入荷しづらくなり、高騰してますね。普段は、もう少し安いですね。」

 「そうなんですか、今がポーションの売り時なんですかね。取り合えず7級を30本、どうぞ。確認してください。」

 鑑定士が来て丁寧に鑑定して行きました。勿論、全て7球と鑑定されました。

 「では、買取代銀板6枚です。」

 「時にヒロさんは、どのようなものを普段作っているんですか?」

 「普段は、ポーション類と傷薬が主です。後は風邪薬や胃薬なんかも作ってます。こっちは、頼まれて偶にですけどね。」

 「秘伝薬は、お持ちじゃないんですか?」

 「師匠が祖父でしたから、そこのところは、曖昧なんですよ。どれが、秘伝か秘伝じゃないか、が分からない。まあ、田舎の薬師ですから秘伝と言うまでのものが無かったんでしょうね。」

 「マナ、毒消しポーションもお持ちでしたら、売って欲しいし、出来れば作って欲しいですね。10級、9級は誰でも作れるようで数あるので、8級以上を、出来ればですが。」

 「ええ、作るのは問題ないのですが、旅先で道具が何も無いので無理ですかね。それに宿で作るわけにも行かないですし。」

 「じゃあ、作る場所と道具を用意したら作っていただけますか?」

 「ええまあ、それは良いですよ。」

 「それなら準備が出来たら、連絡しますのでよろしくお願いします。」

 なんだか急に慌しくなった商会を後にして、銀の馬車亭へニールさんを訪ねてみました。依頼で出かけてるかもと思ったのですが、護衛依頼を終えて休日を取っていたようです。

 「どうもわざわざ来てもらってすみません。」

 「いいえ、俺の方が連絡先がなかったので仕方ありませんよ。」

 「で、何処へ宿をとったんだい。」

 「マスクテイル商会の会長推薦の『ジョシュの満腹亭』です。」

 「この街では、一流の宿だね。ヒロさんてお金持ちなのかい。」

 「いいえ、風呂があるって事でそちらにしました。」

 「えっ?若しかして貴族様なのかい?ただの平民です。」

 「まさか、違いますよ。ただ、俺の育った田舎では、温泉が湧き出ていて普通に風呂に入っていたんですよ。」

 「へぇー、そうなんだ。良いところそうだね。」

 慌てて出身地を特定するヒントを出してしまいました、出身地について突っ込んでくるかと思いましたが、そうでもなかったみたいです。要は身分が知りたかったみたいです。

 「それで訪ねてくれとのことでしたが、何か用件でもありましたか?」

 「出来れば僕達とパーティを組んでくれないかと思ってね。」

 「俺は、薬師ギルドのメンバーで、冒険者ギルドは、この間脱退しましたので、パーティは組めません。それにマスクテイル商会ほ方からポーション作成の依頼も受けてますからね。」

 「そうかそれでは無理だな。しかし、一緒に冒険者ギルドへ行ってくれないか、今回の護衛の件で盗賊討伐、魔物の回避についてはどうしても報告しなくてはならないので、そこでどうしても君の名前が出てマスターが会ってみたいっていうんだよね。一緒に行ってもらえないかな。」

 「そんな面倒そうな事は、遠慮したいな。」

 「そう言わずに頼むよ、盗賊討伐の報償金もあるしさ。」

 「何だか面倒事の臭いしかしないんだが。」

 仕方ないのでニールさんの顔を立てて冒険者ギルドへ向かいました。ギルドへ入ると話は通っているようで、そのまま応接室へ通されました。

 「どうも、私がこのラーンの街の冒険者ギルドマスターのミッシェルです、どうぞよろしく。ヒロ君については、そこのニールから報告は受けています。相当に腕が立つそうですね。」

 「はあ、ヒロと申します。腕は普通です。それに俺は、薬師であって冒険者ではありませんので。」

 「いやぁー、勿体無いですね。その腕をギルドへ貸していただけませんかね。」

 「あのぉー、俺は、ニールさんに頼まれて、盗賊討伐の報償金を受け取りに来たんですけど。そちらをさっさと済ませていただけませんか。」

 「ああそうだったね、盗賊討伐の報償金は、君が倒した中に懸賞金が掛かったものがおり、5人分で金貨1枚と銀板2枚と銀貨5枚だよ。討伐1人で銀貨5枚だからね。高いんだか安いんだか。金貨1枚は、懸賞金だよ。そいつだけは、貴族かなんかの親族だか知り合いだかを殺していて、その貴族が懸賞金をかけていた様だ。受け取ってくれたまえ。」

 「じゃあ、用件は終わりのようなので失礼します。」

 「いやいや、待ってくれ。魔物についても教えてくれないか、それだけの数が群れになって行動しているところが、気になっているんだが。」

 「報告も何も、数はそれであってます、それに後は逃げ回ってただけですから、改めて報告するようなことも無いですよ。」

 「うーん、そうか。確かに討伐した訳でもないし強さとかも分からないか。いやー、面倒を掛けた。申し訳無かった。」

 「じゃあ、そう言う事で、失礼します。ニールさん、1度飯でも食いましょうね。」

 そう言ってギルドを後にした。ですが、後をつけられているようです。4人ですかね。面倒なので路地に引きずり込みました。向こうは、追い込んだと思っているでしょうね。

 「何か、用ですか?」

 「いやー、報償金を受けったガキがいるって聞いたんで、お裾分けを貰おうと思ってね。」

 「貴方達に分けるお金は無いですよ。」

 「馬鹿が、金さえ置いてゆけば体は無事だったのに、言う事を聞かないんじゃ、体に教えてやるぜ。手前等、掛かれ。」

 掛かってくる強盗を一人ずつ当身で落として行きました。流石に街中ですからね。気を失ってる、その間に両手を拘束、足も小さく歩けるほどに拘束しておきました。

 「う、うーん。あっ、この野郎、解きやがれ。」

 「解くわけ無いでしょ!ところで襲撃は、お前らの考えか、誰かに唆されたのか、どっちだ。」

 「ふん、知るかよ。答えるもんか。」

 「まあ、良いですよ、このまま突き出すのもぼこぼこにして突き出すのも、俺にはどちらでも同じですからね。先ずは、貴方からこの石と喧嘩してみますか?」

 コブシ大の石を、振り被ったらすぐに教えてくれました。

 「昨晩、ギルドに酒場で飲んでたら職員が話してたんだよ。盗賊討伐の報償金が金貨1枚もあるってね。それを受け取るのが、一人でそれもガキだって聞いてニールとくるそいつを待ち伏せしてたんだよ。」

 取り合えず誰かが、後で糸を引いてたようではない。

 「貴方達は、馬鹿なんですか?その話を聞いて、良く襲う気になったものです。呆れますね。」

 「何がだよ、金貨なんてそうそう拝めるもんじゃねぇ。それに相手は、一人って事だったし。」

 「だからですよ、一人で報償金を貰う理由って分かりますか、そう一人で討伐したってことですよ。」

 「しかし、ニール達も一緒に討伐をした筈。」

 「だったら報償金は、分けられるでしょうね。金額を聞けば自分達では、太刀打ち出来ない盗賊だって分かったはずでしょう。それを倒した相手を襲うなんて、馬鹿以外になんて呼んだら良いのですか?」

 「ああっ、金に眼が眩んで考え付かなかった。」

 「まあ、これから考える時間は、たっぷりあるでしょうよ。」

 「なあ、勘弁してくれないか、怪我もしなかったんだしよ。」

 「何を言ってるんですか、十分に重罪ですよ。強盗ですよね、それに冒険者による一般人への暴行未遂。下手すると死刑ですよ。」

 「ええっ、冒険者同士の諍いには、どこも係り合わないぜ。」

 「何を言ってるんです、俺は、冒険者ではありません。一般人です。ですから、突き出すのも騎士団です、覚悟するのですね。」

 「ああっ、本当かよ。俺達は、終わりだな。」

 「ええ、終わりです。重ければ死刑、軽くても犯罪奴隷です。ご愁傷様です。」

 そのま転がしておいて、通りに出て少年に騎士団への通報をお願いしました。騎士団がちゃんと来たので、強盗どもを渡し、少年にお駄賃の銀貨を1枚渡しました。眼を剥いていましたが、約束ですからね。そしてそのまま騎士団の詰所へとやって来ました。

 「はい、冒険者ギルドを出てから着けられて、襲われたので返り討ちにした。そう言う事です。」

 「分かりました、確認して罪を償わせてやります。」

 「多分、犯罪奴隷です。売上金の半分は、君のもだから1週間後に顔を出してください。」

 「はい、分かりました。それでは、よろしくお願いします。」

 1週間後の用事が出来てしまいました、出来たらポーションを作って過ごしたいですね。マスクテイル商会からの連絡が、待ち遠しくなりました。

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