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対峙(4)

「吸血鬼だから一体何よ! あなたは半分は人間でしょう。進んで人を殺しているわけではないでしょう。殺したいわけではないのでしょう。それどころかあなたは……」

「こいつに生きて欲しいって思うんなら素直に父親と婚約者の元に帰れよ」

「ギル」

 僕はアリシアにとってあまりにも酷い言葉をぼそりと吐く彼を諫める。アリシアはまた僕の手を強く握り締めた。

「メイスン侯爵、レッドフィールド子爵。孫の言う通りもしごアリシア嬢や他の者にまた危害を加えるようなことがあれば、その時はファリントン家の方で始末をつけよう」

「……そ、そこまでおっしゃるのなら」

「始末とは? そこの吸血鬼を殺せるというのか? 聞いたところによると吸血鬼というのは不死身らしい。なんでも驚異的な回復力を持っているとか。殺す真似事だけで済ますつもりではないのか?」

 懐柔されかけているメイスン侯爵とは対称的にロイドは祖父を睨みつけ詰問する。

「あなたのおっしゃる通り、僕には常人にはない驚異的な回復力があります。しかし、そんな僕も決して不死身ではありません。心臓を杭で貫通させ地面にでも打ち付ければ、凶器を僕自身の身体から取り除けない、回復できない状態におけばおそらく死に至るでしょう。お祖父様は――ヘクター・ファリントンは社交界でも有名な程、厳格なお方。たとえその対象が実の孫であろうとも然るべき処罰を下されるはずです」

 吸血鬼を殺す方法には色々な諸説がある。その中で心臓を杭で打ちつけるというものが僕にとっては最も有効だろう。

 十字架もニンニクも平気だし、太陽の光は皮膚が赤く爛れやすい程度。銃で撃たれても刃物で切りつけても、突き刺しても痕は残れどきちんと治癒する。

 けれど包丁で自らの身体を刺して刺して刺しまくった時に気づいたことがあった。それは刃物を自分の身体に刺さったままの状態にした時、凶器がめり込んだままの箇所に関しては傷が塞がらないことに。実際は突き刺さった包丁をまず押し戻そうとする形で僕の身体は治癒しようとし、刺し続けていることはできなかったけれど、もし凶器が抜けない状態で固定されていれば、きっとその部分は治らない。治せないに違いない。

「レッドフィールド子爵。もしアリシア嬢や他の者にまた危害を加えるようなことがあれば、孫の言う方法で処刑することを誓おう。その時は貴殿に立ち会ってもらっても構わぬ」

 厳かに祖父はそう言った。その声音には逡巡は微塵もなく、淡々としたものだった。祖父は誰に対しても厳格なのだ。

「……貴殿がそこまでおっしゃるのなら仕方ありますまい。アリシアも貴殿のご令孫と添い遂げたいようですし、彼も実直な青年のようだ。私は、娘に幸せになってもらいたい。ロイド君、ひいてはレッドフィールド家への非礼は私の方からも詫びよう」

 メイスン侯爵は祖父を見つめ、そしてまだ不満げで厳しい面持ちを崩さないロイドへ視線を向け制しつつそう告げた。

 それはアリシアが婚約者の元には帰されず、今後も僕と共にいることが決まった瞬間だった。













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