花火に込めたモノ
「いいかー? 火、つけるぞー」
「おー、頼んだっ」
琴太が打ち上げ花火に火を付けに行った。コテージの中で夕飯の片づけをしていた女子陣もすでに外に出てきて、近くにあった丸太などに腰かけて花火を待っている。
「そいじゃいくぞー」
琴太は合図をして、ダッシュで戻ってきた。そして数秒後、幾本の光の筋が夜空へと駆け上がっていき、俺たちの作品が空に描かれた。
『みつき いってらっしゃい 』
そう、保育園の時からの仲間の一人である美月が、この夏の終わりに引っ越してしまう。この集まりはただのお泊りじゃなく、内緒の送別会も兼ねていたのだ。
「みんな……、ありがとう……」
美月は空を見上げながらぽつりと呟く。普段ならば聞こえないほどの小さい声だったが、なぜだかその時ばかりは、はっきりと俺たちの耳に聞こえた。美月の頬が一筋キラリと輝く。その姿は、言葉にできない美しさに包まれていた。
「美月、たとえ離れていても、俺たちはずっとつながっているんだ」
「そうね、私たちはきっと繋がっているわ」
思わず口から出た言葉だったが、確実に俺たちは強いキズナで結ばれている。
「そうだ、次の休みに俺たちが美月のトコに遊びに行けばいいんじゃん!!」
琴太が思いついたように声を上げた。そうか、俺たちが遊びに行けばいいのだ。俺と美月は顔を見合わせると、どちらからともなく笑った。
辺りには蛍が飛びはじめ、俺たちの新しいスタートを応援しているようだった。
Fin