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〇〇◎〇〇〇〇〇式殺人事件  作者: 夢之ゆめぜっと
○○◎○○○○○式殺人事件
3/12

錠前のカラクリと密室の館

「血と裁きの教団」という秘密の下にその総本山たる館へと集められたそれぞれには、それぞれの怨恨が渦巻いている。

そんななか「透明な蜘蛛」の存在に皆の意識は浮遊していた。

突然の、探偵・虫栗虫太郎という部外者の発覚と時を同じく館の主の死が、執事によって告げられた。


 居合わせた七名は慌てた様子の執事をなだめようとしながらも、逆に追い立てられて螺旋階段を昇って二階奥の主の部屋へと急いだ。


 階段を挟んで右手、一階のロビーの真上には広い食堂が、その左手には廊下を挟んで主の部屋と執事の部屋が向かい合っていた。

 さらに奥へ進めば大浴場があった。

 これら左手の一帯は、一階の客室の真上に当たる。


 執事はガチャリとドアノブをひねる。

 ギーと軋む音…すぐにガタッと音立ててドアが10度程の中途半端な状態でつかえた。


 それでも。

 血が流れている…そして館の主らしい…倒れ臥し動かなくなった姿が…僅かな隙間から見切れている… 


「まったく!無駄にややこしいカラクリにしやがって…」

 

 土師はせ道灌どうかんは執事の手前というに気にもかけないで荒々しく悪態を着いた。


「密室…ですか?」


 探偵の虫栗むしぐりはさっそく本業を開始していた。


「ええ。この館の部屋にはすべて同じ仕掛けが施されてあって外側からは錠を破ることができません」


「あなたは?」


「この館の直系の甥で長男の石渡いしわたり一楼いちろうです。その仕掛けは、後々説明いたします」


「ありがとう。ところで執事、あなたはこの明らかな密室にあって何故殺人と断定できたのです?」


「勘…でございます…」


「ちょっ!まあいいでしょう、その仕掛けとやらを知らなければ何も判断できませんし、それにまず、あの、血にまみれた主の遺体に手を合わせましょう」


「ひょ~っひょひょ~っ!!」


 バチーンン!!


 白痴の次男 石渡いしわたり次朗じろうが何処から持ち出したのか、巨大なかな切バサミで扉の止め金具を切断した。


 ガチャッ!!


「…何でしょう?鋭い音がしましたね…?」


 虫栗は反応した。


「カラクリのストッパーが外れバネが勢いよく戻ったのでしょう」


「けっ!こんな仕掛けになってやがったのか!!」


 一楼いちろうの説明に更に道灌どうかんが悪態をつく…


「さあ、中へ」


 ギイイーーー……


「……」


 (これは明らかな殺人だろう…)


 その場に居た全員がそう思ってしまった。


 惨殺!

 刃渡り20センチの鋭いナイフで胸を数回刺され…果てには捻りを入れて抉られていた…

 そして何故か長机の引き出しの鍵のあたりに手を伸ばし力尽きた恰好…


「おっ」


 虫栗むしぐりは地面に落とされ光を反射して光っている物を見つけた。


「これは鍵ですか?しかし血に濡れていますね…」


 胸から取り出したハンカチでそれを拭き上げた。 


「おいおい、アンタ探偵だよね…そんなことしたら犯人の指紋やらの物証を消しちまうんじゃねえのか??」


 土師はせ道灌どうかんは大声を上げた。


「いえ。私は探偵です、警察ではありません、ここは潔癖を優先させました」


「きったねえなあ。潔癖でも血は平気なのかよ」


「…こう、この美しい鍵が血で汚れている状態が気に入らないのです」


「はっはっ、そういう潔癖かよ!まあわからんこともないがな」


「これがなぜ落ちていたのでしょうか…」


 もとの光沢を取り戻した鍵を差し込む、それから捻りを入れようとした時、虫栗の手を強く握る手。


 キーーーン…


 するりと転がった鍵…


「はあ、壊れているのですか、確かに鍵穴の支えが欠けていますね」


「失礼探偵さん。私は足利あしかが正潤せいじゅん、「利潤」グループの代表です」


「全く強く握り過ぎですよ。あなたは体が2倍の厚みを持っているんですからね」


 一楼いちろうはやや早口であった。

 何か秘密をばらさぬよう取り繕っているようで違和感を醸しているような…


「さて。先ほどのこれがカラクリです」


 ガチャッ…


 一楼いちろうは長机の鍵穴に差込み左側に捻りを入れた。


「…っほう…」


 もう一度右側へ戻してみる。


 ガチャッ…


「まあ、先程 次朗じろうくんが思いっきりぶっ壊してしまったからよくわからないだろうが…つまりこの館の部屋はこれらの錠前と扉が一体化した仕掛けなのさ…しかも」


「鍵は内側からしかかけられないときてる」


 清潤せいじゅんのセリフを最後は道灌どうかんが奪った。


「よくわかりました。犯人は外から複雑なトリックで鍵穴を捻った…」


「そんなこと出来るのかよう…」


 次朗じろうが突然大声で喚いた。

 白痴に通じるというのか?


「あるいは、主が惨殺され、命の残り火で必死に鍵を捻り、密室を造って絶命したか…」


「確かに主人はそのような体勢で亡くなっておられますが」


 執事の合いの手に頷いて…


「いずれにしてもそうする動機を見定めなければならないでしょう。殺人も、密室も……」


「取り敢えず遺体を安らかな状態へと戻さねば。私はあなたがたに質問をしようと思います、その前に少し休憩を取って下さい…ただし、次朗じろうさん、清潤せいじゅんさんは遺体の移動を手伝って…」


「私がやりましょう…」


 虫栗むしぐりは単純に体格から2人を選ぼうとしたが、白痴の弟に変わって兄がその役を買って出た。

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