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解決編1「ウロボロス殺人計画」

すべてのスケジュールがずれ込んで、遅い夕食を済ませた時には既に深夜だった。

虫栗はあろうことか自部屋のクローゼットの前で、半裸で力尽きている…

召使い露子のノック…

寝ぼけながらの会話でようやくベッドにありついた虫栗は、夢うつつ…度々叩かれるノックの音に遮られながらも、事件や一同の関係そして過去の回想などを整理していた…

そしてついに殺意のベクトルがひと繋がりになって…

しかし既に朝は来ていて、執事の皆の死を知らせる怒号にて虫栗は目を覚ます……


 死んでいた…

 たったひとり…宗田そうだ樹一郎きいちろうを除き……


「虫栗様…何が起こったというのでしょうか…殺人ならば…誰が…この館にいるのは…虫栗様を含め4人だけ…誰が…一体誰が…こんなことを…」


「執事…私は昨夜、夢うつつの中で、すべての真相を整理してしまいました…すべては推理可能です」


「ほ、本当でございますか…」


「はい…現場をあらかた精査いたしました…それと…昨夜の私の推理を融合させた結果、すべては明白です」


「わ、解りました」


「皆をロビーへ」


「は…はい…」


・・・・・・


 ロビーには、狼狽する執事、怯えた露子つゆこ、ギラギラした樹一郎きいちろう、そして虫栗がいる…


「さて…これから順を追って話さなければなりません」


「……」


 虫栗以外の3名は黙り込み、話す気すら感じられない。


「私はこの館に来て、3つの事件に遭遇しました…」


 じっと見つめている3者…


「一つ目はこの館の主…二つ目は、これは実際目の当たりにはしていませんが昨日の執事の告白で知らされた集団殺害事件です…」


「!…な…なにを…!あれはお話した通り心中事件ございます!!」


「いえ」


 と強い断定。


「あれは殺人です」


「馬鹿な!」


 執事が声を荒げた!


「執事…まだじっくりと追っていかなければ点が線と繋がって行きません…」


「なんですと!」


「…執事!少し落ち着いてくれませんか!」


 …虫栗は少し間を置いた……


「もう少し冷静に行きましょう」


「……」


「話を戻します。先ほどの2つに加えて今朝の事件…あれも無論殺人です」


 樹一郎きいちろうの瞳孔がどんどん大きく開いていく…


「そして…」


 間――


「私の推理は今日の事件によってひとつの巨大な謎を浮かびあがらせ…」


 間――


「そして既に解決しております」


「!!!」


「しかも、これら3つはどれが欠けても結論できないし、逆を言えば3つが揃うことで…」


「…お聞かせいただきたい…」


 執事はいてもたってもいられないようだ…


「第一に!」


「……」


樹一郎きいちろうさん、あなたは殺人容疑者です」


「!!!ぼくは…ぼくはあんなに殺してはいない!!」


「…ええ…あなたが殺したのはたった1名…」


「!!!」


「その被害者は土師はせ道灌どうかん!」


「!!」

「……」

「…では…」


 執事が聞く!


「他のお方は…誰が…??」


「ええ…。現場…つまりそれぞれの宿泊部屋には、ガスの吸引器がありました。全てではありませんが、それはイレギュラーです…そして…」


「……」


「そのイレギュラーのため樹一郎きいちろうさん、あなたは生き残りそして主の計画は失敗した!!」


「!!!主人が…主人は既に亡くなられております!何を言い出すのですか!」


「…ええ…この館の主は…行き詰まる度に殺人で全てを消去してしまうという…言ってしまえば小さい子どもがビデオゲームに行き詰ったときにやる、アレ…そうして解決しようとする幼稚な部分がありますね…」


「何を!どういう意味なのか!!」


「いえ執事…あなたは知っている…しかしあなたは無意識のうちにわからないでいようとしているだけだ!!」


「……」


「ええ、続けましょう…主は常に、いらないものを排除してきました…しかし…その手口というのは何とも綱渡りではありませんか」


「……」


「実際今回の主の計画は…計画通りには行きませんでした」


 間――


「この会合で集められた私以外の6名は、全くキレイに並んだ殺意のベクトルがありました…それは正しくウロボロスのようで、閉じた環を永遠に描いています」


「!!!」


「…では実際誰が誰を殺したのでしょうか。まずここに生きている樹一郎きいちろうさん、あなたが土師はせ道灌どうかんを殺しました」


「うへっっ…」


「よって、その永遠の環は、樹一郎きいちろうさんの生存によって断ち切られてしまいました。そして…そうなってくれば、殺意の連鎖を逆に辿っていくだけで犯人は自ずと浮かび上がります…」


「!!では…皆が皆を殺し…連鎖していったというのですか!」


「ええ…モチロン」


 虫栗は少し笑っていた。

 好奇心の波が大きくねっていた…


「続けましょう…主はあの十三年前にも同じことを成功させた…身内を殺し、他のいらない幹部をもまるごと抹殺した…」


「何を…証拠はあるのですか!」


「ええ…今回の手口が何よりの証拠…」


「言いがかりです!!!」


「ええ…昨日まではそう言えました。しかし、今朝の事件で3つがひとつとなり、と同時にすべてがまとめて暴露されました」


「証拠を…はやく証拠を提示してください…」


「ええ…いいでしょう…」


 間――


「これは3つの事件を合わせなければ仮定としか言えません…よって、まずはひとつめの仮定を…」


 間――


「仮に、十三年前と今朝の事件が主の計画によるものであるとして…動機は確実に存在します。つまり、単に組織の運営に邪魔だった…ということ」


「しかし…弟や甥たちをそれで殺すなんて…」


「ええ…だとするなら異常で悪魔的ですね…実際弟の博文氏を亡くした時には衰えました」


「そうです!そうです!ワタクシが…」


「しかし…実際にこの組織の実態は悪魔であってしかも、それ以外ではない…」


「……」


「それより…私が問題だと観ずるのは、単に、その悪魔的任務の遂行がずさん過ぎはしまいか…ということです」


 間――


「さて、戻ります…では、何故 樹一郎きいちろうさんが生きているのか…ということ…そして、何故生きていたらそれが失敗になるのかということを…」


 間――


「もう一度、樹一郎きいちろうさんから遡っていきます…樹一郎きいちろうさんは土師はせ道灌どうかんさんに殺意をもっており、殺害した…間違いないですか?」


「…ああ…間違いなく殺意を持っていたし…実際…でも!探偵さん、物証は?殺害方法は!!」


「…ええ…自信たっぷりですね…さすがは殺人の常連だ。バツがひとつ増えたくらいではへこたれませんねえ…」


「ウルサイ!それより証拠は?確証は…」


「ええ…それは現段階では曖昧で…後に確かめようと思ってます」


「む、虫栗さん!!」


「へっアナタに判る訳がない!!」


「大した自信!勇ましいですね…それより、動機はなんです?それが解らないんです…教えてくれませんか?」


「っふん。理由なんてない。奴を見ると虫唾が走る!揚げ足が取りたくなる!殺したくなる…!」


「…揚げ足…殺し…コワイ!コワくてたまりません…」


「ここは『血と裁きの教団』!殺す気がないやつは弾かれ…すぐ抹殺されます!ぼくは正常だ」


「…はぁ…ため息が出そうです…同時に…」


 間――


「だからこそ興味深い…さて、では、逆流するとしましょうか…土師はせ道灌どうかんさんが殺される前に殺したのは…足利あしかが清潤せいじゅんさんです」


「!!!」


「さあ、次です、その前は清潤せいじゅんさんが一楼いちろうさんを殺しました」


「!!!」

「そうでしたか…」


「ええ、お気づきの部分はある筈。しかしこれほどに美しい殺意の矢の連鎖が他に有りましょうか…」


「……」


「そして…皆さんここで異変にお気づきでしょう…次朗さんと市朗さんの死体はひと部屋にまとまっていました」


 間――


「これは…正しくこの事件の揺らぎの発端!」


「!!!」


「蛇が自らの尻尾を喰い迷宮入りするはずだったウロボロス殺人計画!!」


「??????」


「それが…このホツレがために○○◎○○○○○式殺人事件と成り下がってしまったのです!」


「!!!!!!」

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