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 ヴィンツ・ミュラー海軍元帥の邸宅は南港を望む官公庁街と下町のちょうど境目にある。高い塀にぐるりと囲まれた敷地の中央に、装飾的な窓の並んだ一見古めかしい館が建てられていた。

 鉄格子の門を遠隔操作で開けると、ジャクソンは広い玄関前の車寄せに停車させた。


「お待ちしておりました、イルマ少尉。元帥とお嬢様がお待ちになられておりますが、まずはお客様をお部屋にご案内するように応せつかっております」


 見事な銀髪を後ろに撫でつけた老人が出迎えて腰を屈めた。


「ありがとう、ジョットさん。またお世話になります。こちらがミスター・サッタール・ビッラウラです。この方は執事のジョットさん。彼がこの邸の一切をしきっているから、何かあれば何でも相談すればいいよ」


 アレックスが快活に応じてサッタールに老人を紹介する。


「お疲れでしょうが、昼餐は二時からでもよろしいでしょうか」

「うん、それなら小一時間あるからちょっと休めるな」


 無言のまま会釈したサッタールを、ジョットは上から下まで値踏みする目で見て、うんうんとうなずいた。そのまま玄関に入り長い廊下を歩きながら、控えめな態度でサッタールに話しかける。


「勝手ながら、ビッラウラ様のお部屋におくつろぎになられる時のお召し物をご用意させていただきました。お気に召していただけるとよいのですが。あと軽いお飲物も冷蔵庫に入れてありますので、どうぞ一息いれてくださいませ。昼餐は平服でと元帥のお申し付けがございました。夕方からまたパーティーにご出席とのことでしたので、もしよろしければその間に礼服をお預かりさせていただいてもよろしいでしょうか? 他になにかご希望があれば、なんなりとお申しつけください」


 トルネード号での、まるで半透明人間的な扱いを当たり前と受け止めていたサッタールは面食らってそっとアレックスの心を探った。すると関知したかのようにアレックスが微苦笑を浮かべる。


「ジョットさんはこうしたことのプロなんだよ。俺はプロの仕事は尊敬してお願いすることにしているんだ」

「では私もあなたに倣ってお願いしよう」


 ジョットがその返答を聞いて小さく頭をさげた。


「光栄です、イルマ少尉。それではあなたの軍服も一式お預かりさせていただきます。シャツも、靴も」

「頼むよ。せめてマクガレイ准将に叱られない程度には身なりを整えないとね」

「それどころか海軍一の美男子を目指してくださいませ。ミュラー家の執事に世話をされてこの程度かと思われましたら、私は悔やんでも悔やみ切れませんゆえ」


 その口調の中に、世話焼きの熱意を潜ませて言う執事を、サッタールは興味深く眺めた。

 コラム・ソルは大きな共同体で、皆、身体が動くかぎり自分の世話は自分でする。あのアルフォンソですら自分の食事は自分で作るし、シャツが破ければ繕いもするのだ。


(まあ、あいつは、その気になれば世話を焼きたがる相手には事欠かないがな)


 それはサッタールとてそうだったが、こんな風になにからなにまで他人に自分の身繕いまで委ねるのは小さな子供のようで面はゆい。

 おそらくはそう裕福な家の出ではないだろうアレックスが自然に受け止めている方が不思議だった。



「いや、だって。俺だって軍務に就いているときは自分でするさ。ただアイロンがけまで手がまわらないというか……」


 案内された部屋で疑問をぶつけると、アレックスは真っ赤になった。


「いや。前はシムケット……ウェイブレット号の副官が細々と気にしてくれていたかな? でも靴だってちゃんと磨けるよ。洗濯だって!」


 まるで幼児が自分はこれができるのだと主張するように並べ立てる上官に、ジャクソンが冷たく突き放す。


「私はあなたの世話をしようとは思いませんから、どうぞ十全にその能力を発揮してください」

「当たり前だろ。誰もおまえに世話なんか頼んでないよ」

「ええ。私は護衛が仕事ですからね。では夕方の出発まで、私も休憩を取らせていただきます」


 素っ気なく言ってジャクソンがドアを閉めて出ていくと、アレックスは不満げに頭をかいた。軍帽を被っていないと、ふわふわした髪が無秩序に広がる。


 部屋は二間続きで広い居間とベッドルーム、シャワールームにトイレがついている。光沢のある箪笥には新品の下着とこちらの人間が身につけているような服が幾通りか揃えられ、クローゼットの下にはブーツから室内用のスリッパまで並んでいた。


「俺の部屋は隣だ。いつでも呼んでくれていいから。あ、それから……」


 思い出したようにアレックスはポケットから携帯通信機を取り出した。


「車に乗ってる間に、医師の連絡先とコラム・ソルに残してきた通信機のナンバーを入れておいた。あ、俺のも入ってるよ。使い方はわかるかな?」

「使ってみて、わからなかったら聞く」

『多分、それも盗聴はされる。それを頭において使ってくれ』


 アレックスはサッタールの手を握って、思念で告げた。この数日で、口にできないことは触れて思い浮かべればサッタールは勝手に聞き取ってくれると学んでいる。逆はサッタールが伝えようと念じない限り無理のようだったが。


「今着ている物も、念のために荷物に入っている衣服も、まとめて洗面所の籠に入れておけば、食事の間にジョットさんがきれいにしておいてくれるから、用意されている物を着てくれ。ああ、でも他人が自分の部屋に入ってくるのは嫌じゃないかい?」

「構わない。元々あまり公私の区別のない環境で育ったから」


 心の中までも、と付け加え、サッタールはアレックスの目を真っ直ぐに見た。


「ありがとう」

「うん」


 目を細めて笑い、アレックスも割り当てられた隣の部屋に引き取っていく。その笑顔がいかにも人の良さを思わせていた。





 執事が昼餐と言ったとおり、それはなかなか豪華なランチだった。

 生まれて初めて、着慣れたゆったりした服から、身体の線が出るような細身のシャツとズボンに身を包んだサッタールだったが、その着心地の違和感も元帥とその孫娘の強烈な印象で忘れ去っていた。


「よくぞ、よくぞ。ここまで参られた。かの伝説の人々、波濤荒い大海の真ん中に、隠れたまいしから三百年。いにしえに我と我が身を捨てて星の危機を救いたもうた英雄たちの子孫を我が賤の屋に迎えることができようとはっ!」


 この広大な邸宅のどこが賤の屋なのかわからず首を傾げるサッタールの当惑をものともせず、ミュラー元帥は両腕を広げて超常能力者の少年を抱きしめた。


 議長に続いて二度目の抱擁は、ちっとも儀礼的ではなく、警戒心も感じられない。興奮が伝わるばかりだった。


「元帥っ!」


 アレックスが断固とした非難をこめて叫ぶが、ミュラーは意に返さないで、腕にいよいよ力を込める。サッタールは反射的に障壁をたてたが、それでもこの老人の持つ様々な感情に飲まれそうになった。

 惑星への忠誠、深い悔悟と激しい怒り、家族への愛、戦いの興奮と嫌悪。

 五十年を越える軍隊生活を彩る断片的な記憶と感情が激しく渦を巻いている。


「お祖父様、これでは、わたしくが挨拶できないわ」

「おお、すまん、すまん。そうだったな」


 ようやくミュラーが離れ、一息つく間もなく今度はサッタールと同じぐらいの歳の少女が、ほっそりした手を差し出した。


(海軍の関係者は、なんでこんなに私に触れたがるんだ?)


 脳天気なアレックスはともかくも、もしかしたら精神感応の意味が分かっていないのかと内心で悩んだ時、少女が苛立った声で詰問した。


「わたくしには挨拶もないの?」


 熱烈歓迎の元帥とは違う高ぴしゃな口調に、サッタールはそっと少女の心を走査して面食らう。


『異国の王子なんだったら、手を取ってキスの一つもしなさいよ。ガッカリだわ』


 サッタールは唇を尖らせている少女とその指先を見比べ、心の中にあった画面に沿うように膝を折った。


「失礼しました。サッタール・ビッラウラと申します」


 白い指先をすくい上げ、一瞬だけ唇に触れさせてすぐに放す。すると少女の頬に血が昇り、尖っていた唇がキュッと弧を描いた。


「わたくしはイリーネよ」


 サッタールの恭しい態度に満足したのか、少女は名前だけ告げるとさっさと席に座ってしまう。


「ジョット、お腹空いてるのよ。早く始めなさい」


 その驕慢な態度を、元帥をはじめとして誰も咎めない。


(アレックスとジャクソンが話題にしていたのがこの子か)


 サッタールの知っている島の女たちは、皆、素朴で働き者だったから、軽くカルチャーショックを覚える。


「皆様、お待たせいたして申し訳ありません」


 ジョットが慇懃に頭を下げて、物言いたげに突っ立ったままのサッタールとアレックスに目を遣った。


「どうぞお席に。ビッラウラ様、イルマ少尉」


 二人が座らないと始められないと暗に言っていることを遅ればせながら理解したアレックスが、小さくため息をつきながらサッタールを促した。


 冷たい前菜、スープ、肉料理と進む本格的な食事が、ジョットの采配の下に粛々と進む。


「そうだ、ミスター・ビッラウラは食事に好き嫌いはないのかね?」


 配られた皿には大きなステーキが載っていた。濃厚なソースと脇に果物のローストが添えてある。新しく換えられたナイフとフォークを手に、サッタールはミュラーの質問に答えるのに少しばかり間を置いた。


「ない、と思います。正直に申し上げて、こちらでは島の食事とはかなり異なりますので」


 これはなんの肉だろうと考えながら、ナイフを入れる。サッタールの知っている赤身の肉は海獣のものだった。だが香りも肉質も違うから、何か陸上の動物なのだろうと見当をつける。


「え……そうだったんだ……のですか? 艦ではそんな様子は見られなかったので……」


 慌てたのはアレックスだった。軍艦の食事は決して貧しいものではないはずだが、いかんせんヴァラエティには欠ける。もしかして我慢していたのだろうかと心配そうな表情になる。


「ほう、ではコラム・ソルの名物料理とはどんなものだね?」


 ミュラーが重ねて聞き、サッタールは苦笑を昇らせた。


「名物と言うほどの物があるかどうか。海の幸は豊富にありますが、獣肉はありません。鳥と卵は食べます。あとは果物ですね。穀物も多くは穫れませんから、芋を粉にして薄いパンを焼いたりします」

「あら、じゃあ馬に乗ってハンティングなんてやらないの? 名家の男の子はたいていするって聞いたのに」


 イリーネの遠慮の欠片もない寸評にサッタールは澄ました顔で答える。


「馬に乗るどころか見たこともありませんよ、お嬢さん。せいぜい海獣を銛で打つぐらいです」

「やだ、それじゃあ単なる漁師じゃないの」

「猟師になろうにも、獲物はトカゲぐらいですからね」

「いやー、ね、トカゲなんてっ、食べるの?」

「いいえ。まだ食したことはありません。ああ、クラゲもたくさんいますよ。群れて泳ぐ姿はとても美しい。もし島においでになる機会があれば、ご案内しましょう。一緒に漂うのも一興です」


 イリーネが身震いして、ナイフとフォークを置いた。


「私、食欲がなくなってしまったわ。ジョット、もうデザートをちょうだい。口当たりのいいシャーベットをね」


 少し大人げなかったかと思いつつ、サッタールは分厚い肉を切り、焼いた果物も添えて優雅に口に運ぶ。口の中にソースの辛みと果物の甘みが広がり、肉の素朴な味わいを深いものに変えている。


「とても美味しいですね」


 黙々とデザートの用意をするジョットに向かって言うと、執事は口をほころばせて頭を下げた。


「コックに伝えておきます。今度は魚料理をお出ししましょう。こちらの魚も悪くはないと思います」

「楽しみにしています」


 魚なんてあんまり好きじゃないわ、というイリーネの抗議は全員に黙殺された。元帥は孫娘のわがままをニコニコ見ているだけだし、アレックスに口を挟む資格はない。

 イリーネがさっさとデザートを平らげて部屋に引き取るまで、静かな食事が続いた。





「すまんな、どうもイリーネは思ったことを口にしないではいられない質でな。わしに似たかな?」


 わははと笑いながら元帥が口を開いたのは、食後の珈琲に移ってからだった。


「いえ。私も口が過ぎました。お許しください」


 いやいやと大仰に手を振りつつ、元帥は表情を改めた。


「本当に、よく来てくれた。コラム・ソルについてのイルマの報告が最初にあがった時、わしはイルマが夢でも見たか、騙されでもしたのかと思った。そんなはずはない、彼らは伝説だと。軍艦で何度もロジェーム海を横断していながらな。それが再び、中央府でその名を聞いて、これは容易ならざることだと遅まきながら気づいたのだ。もし宇宙軍が持ち出さなかったら、わしはイルマの報告を今も放置していたかもしれん。コラム・ソルの人々が我々と関わりを持とうとするなど考えられなかったからな」


 元帥は目を瞑って一口珈琲をすすった。この好奇心豊かそうな老人が、コラム・ソルについての知識を持ちながらそれを無視しようとしたのが、サッタールには納得できなかった。

 だが自然と漏れ出る感情以外を探ろうとはせず、礼儀正しく続きを待つ。


「迷惑ではなかったのだな、ミスター・ビッラウラ?」

「ええ。それは私がイルマ少尉を呼んだ時からおわかりでしょう。すでにマクガレイ准将にも島の状況はお話してあるはずです」

「うむ。サラの報告は読んだ。彼女は周到に、報告を電子メールなどにせず、手書きで手渡ししてきよったよ。軍の内部にもいろいろな人間がいるからな」


 彗星の禍で電子機器が使えなくなっただけで深刻な社会問題になるほどにこの社会にはそれらが浸透しているからこそ、情報の漏洩を恐れる時は手渡しなのかと思うと、少しおかしい。


「人口の減少と資源の枯渇。それではあのような孤島で生きるのは難儀なことだろう。わしは若い頃に一度、乗っていた艇が難破して漂流したことがある。君たちの状況とはむろん違うが、あの時の恐怖は忘れられぬ。倒れていく仲間たち、減っていく食料と水。外部のどこにも連絡がとれない中で、このまま救助を待ちながら衰弱して死ぬのか、それとも一か八か海に飛び込んでどこまでも泳いで脱出するか、救命ボートの中で考えた。まあ、実際は救難信号をキャッチしてくれた漁船に助けられたがね」


 難破船のたとえはわからないでもない。救難信号の代わりに、サッタールはアレックスを捕まえたのだ。


「サラは私宛の報告書にこう記している。コラム・ソルはこのまま放置すればいずれ衰滅するか、あるいは……ファルファーレ連合国中央府政府の最大の敵になるだろうと」


 言葉を切って、元帥は無表情にサッタールを眺めた。

 なるほど、とサッタールは心中で笑う。あの女性将軍はやはりただ者ではない。友好な態度を見せつつも、いかなる危険の可能性も排除せずに対処をするのは、老練な軍人らしかった。


「私たちがあなた方の最大の敵になるには、少々力不足だと思いますが」

「そうかな? サラが見聞きしたほんの数人でも、我々の社会を混乱に陥れるのは容易だろう。その数人の中にはもちろん君も入っている、ミスター・ビッラウラ」

「それは否定しません。混乱を起こすという意味なら。人命に係わる事態も引き起こせるでしょう。ですが、私たちはそんな未来を望んではいないし、数人では永続性もない。私たちは、ただ、生き延びたいのです。希望を持って」

「だから憲章を持ち出したのだな?」


 サッタールがうなずくと、元帥は深くソファーに背を預けた。何を考えているのか知りたい欲求に駆られる。が、元帥の鋭い視線がそれを制する。


「我々は上手に共存する道を探らねばならん。わしは君たちコラム・ソルの人々を敵に追いやりたくはないのだ。大陸間戦争で荒廃したこの星も、その悔悛から互いに手を結び合うことを学び、再び発展しつつある。だか、それでも多くの市民の目に見えないところで中央府は血を流し続けている。今でも、な。数百キログラムもあろうかという高速の隕石を操り、人の心を操り、電子の海に楽々と侵入するような人々を敵とするなら、それは完全なる殲滅戦になる。宇宙軍野郎の言うとおりだ。しかし、それは必ず将来に禍根を残す」

「私たちの側にも不信感はあります。今、おっしゃったような恐怖心から、あなた方は私たちを排除にかかるだろうと、悲観する者は少なくない。しかしこのままではいられなかった。その葛藤は小さいものではありません。ただ、わかっていただきたいのは、私たちは滅びに瀕していますが、それでも誰一人、外の世界から足りない富をかすめ取ろうとも、害そうとも思わなかった、ということです。これは私を信じていただく外ないのですが」

「誰一人? 住人の全員、百パーセントと断言できるのか?」

「できます。私は、この交渉に入る前、全員の心を見ましたから。人間は、口では嘘をつけますが、心の中で自分自身に嘘をつくのは非常に難しい」


 ふーむと鼻から息を大きく吸い込んで、元帥は身を起こした。琥珀色の瞳が、熱を帯びて見える。


「わかった。私は君を信じる。ちなみにサラもそう書いてきた。こちらが信頼すれば、君は応えようと努力する人間だろうとな」


 その人物評価が何に基づくのか思い当たって、サッタールは微笑みを漏らした。


「私は、島ではかなり皮肉屋で悲観的な人間だと思われているのですが?」

「そうか? ならば君の心を読む能力は君自身の感情に左右されているか、あるいはコラム・ソルの人々が人間観察を怠っているかだと思うがね。君はそんな子じゃないだろう」

「マクガレイ准将の観察力は私の力を凌駕するものだとは感じましたが……」


 突然の子供扱いに反論しようとする口を、元帥の笑い声が塞ぐ。


「わははは、照れるな、照れるな。いいか、もう一つ君が気づいていない君自身のことを教えてやろう。君は表情が豊かなのだ。イルマと同じぐらいにな。難しい交渉を前にそんなことを言われたら困るかもしれんが、覚えておくといい。君を見る人間は、その表情に魅了されることもあると」

「私が、イルマ少尉よりも……?」


 呆気にとられて笑う元帥を眺め、それから首を回してアレックスに視線を移す。拳を口に当ててなんとか笑いを堪えようとしていた若い士官は、その抗議するような眼差しに余計に笑いを誘われたらしく、ついに声に出して吹き出した。


「ま、まあ、いいじゃないか。私も元帥もマクガレイ准将も、それで籠絡できたと思えば」


 言い訳も納得できない。


「ジャクソン曹長は違うけどな」


 つっけんどんな口調で反論すれば、アレックスは涙のにじんだ目でサッタールを暖かく見下ろした。


「そうでもないと思うけどな。あいつ、大分口数が増えたからな」


 そんなことはない、心を読んで知っているのだという異議は、ついに言い出せなかった。


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