表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/44

序章 惑星ファルファーレ

SFと言っていいのかどうなのか…。他星系でのお話だからいいのか…。

超常能力を持つ人たちと普通の人間は、うまく共存できるのかどうかと真面目に考えていた時に生まれたお話です。

長くなりますが、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

 絶海の孤島。緑あふれる島の岬に、少年が立っていた。

 長い黒髪を風になびかせて、空を睨んでいる。青灰色の瞳を、眩しさから細くすぼめて、それでもなお一心に空を睨んでいる。


「もうすぐ、その時が来る」


 少年の小さな呟きに答えたのは、ただ岩に打ちつける波の音と白い海鳥だけだった。

 空に異変が現れるのは、もう間もなくだった。



 惑星ファルファーレには、四つの大陸がある。名の由来は、宇宙から見た大陸の形が、ちょうど蝶が四枚の羽を広げたように横たわっているからだ。東のブル、西はヴェルデ、南はブルーノ、北をグリージョと呼ぶ。


 そして惑星の表面積の三分の二には、洋々としたロジェーム海が広がっている。ファルファーレは莫大な水をたたえた青い星だ。


 ファルファーレはまた、地球とは異なり二つの月を持っていた。この惑星の発見者は、大きい方をトゥレーディア、小さい方をロビンと名をつけた。トゥレーディアは約三十日でファルファーレを一周し、ロビンは十日で巡っている。


 人類が居住可能な惑星を熱心に探索していた時代、ファルファーレの発見は大衆から喝采を浴びた。


 当時の地球は人口の爆発的増加と環境悪化からくる絶望的な問題を抱えており、二つの月による潮汐が地球の何倍も大きく海岸の侵食が激しいとか、地軸の傾きが地球よりも小さいため四季の変化に乏しいとか、あるいは惑星の平均気温が地球よりも三度ほど低く極地の氷結面積が大きいとか。


 それぐらいの困難は、外宇宙を亜空間航行できるほどの科学技術を持参するのだから必ず克服できると考えられたのだ。


 かくして汚れなきユートピアの星という謳い文句の元にフィオーレ星系第四惑星ファルファーレへの植民が計画され、地球の暮らしに飽き飽きしたのか、あるいは新たな星を開拓する冒険に憧れたのかはともかくとして、第一次から第五次までそれぞれ数千人規模での植民が開始された。


 大多数は希望を胸にファルファーレに降り立った人類だったが、第五次植民団を最後にその活動は突然打ち切られ、以後地球とは似て異なる道を歩むことになった。


 植民当初は、地球での様々な教訓を省みて、出身の人種民族を分けへだてることなく穏やかに暮らしていた人類も、結局はまるで母星の歴史をなぞるように戦争と連合を繰り返した。

 植民団を統括する組織が瓦解したのは百年を少し過ぎた頃。やがて大陸ごとの政府を持つようになったのがそれから二百年後のことだった。


 その後間もなく起きた激しい大陸間戦争の末にようやく惑星ファルファーレとしてまとまった統治機構を持つに至ったのは、一度は失った亜空間を飛ぶ船が再び開発され、今度はファルファーレを母星に他星系へと飛び立つようになってからのことである。


 最初の植民団がこの地に足をつけてから実に六百年という時が過ぎていた。


 四大陸のパワーバランスを保つため、各大陸のちょうど中央の海、羽根を広げた蝶の胴体に当たる部分に人工島セントラルが造成され、ファルファーレ連合中央府が置かれた。そして二度と惑星内での戦争の愚を犯すまいと陸・海・宙の三軍の統括本部もここに同居する。


 以降、四大陸政府と中央府は、権限の集中と委譲を繰り返しながら、多様な文化を保持しつつも一つの言語と文明を持つファルファーレ人として宇宙空間にその名を知られることになる。


 そのようなファルファーレの歴史の中で、ただ一つ特異な道を歩んだ島がある。セントラルとはちょうど反対側、広大なロジェーム海の真ん中に浮かぶ孤島コラム・ソル。

 大陸間の戦争にも外宇宙への飛翔にもいっさいの干渉せず、関心を引くこともなく、ひっそりと暮らす人々のことを、ファルファーレのほとんどの住民はその存在すら知らない。


 ――コラム・ソルにいつから、どのような民族が住んでいるのか。

 ――なぜ忘れられた存在となってしまったのか。


 知っているのは、ファルファーレ中央府の一握りの上層部だけだったが、その最高幹部の彼らですら、ただそのような存在であると承知しているだけで、コラム・ソルの土を踏んだ者もなければ、その住人と顔を合わすことも言葉を交わすこともない。

 最高機密として封印され、普段は意識にものぼらない島だった。


 そしてファルファーレ暦七六五年、異変が起きた。



※ファルファーレ世界地図です

挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ