8、闇鍋ではなくゲテモノ鍋?
闇鍋は混沌を極めた。
最初に沈んだのは意外にもこういうことに一番慣れていそうな千歳教授。
百鬼夜行の残り物を掴んでしまった。次は鞍馬。彼はあえなく仲間の不意打ちに合い、黙らされた。その次は蜜柑。レモンティーと訳の分からないもので煮られたシュール缶は、激マズだったらしい。あっけなくノックアウト。半分、自業自得という。残ったのは、なんでもばりばりブラックホールの様に美味しそうに食べる胡桃、まるで極上の食事でも食べるかの如く、上品に眉一つひそめず具材を嚥下する瀬野、注意深く具材を臭いと形で見極め、拾っていった俺。この三人だけが残った。
「あら、意外です事。まず倒れるのは佐久間さんだと思ってましたわ」
「ほんとうにね。意外と悪運強いじゃないか佐久間君!」
たおやかに微笑みながら瀬野は真っ黒い具材を何事もなく嚥下し、胡桃がドヤ顔で具材を足す。おいおい、まだ入れるのか。とんでも食材を。
「これでも注意深くてね……ぐはっ!!」
お、俺は、な、なにを食ってしまったんだ……?
「あちゃ~…佐久間君の悪運もこれまでか。」
「さすが鵺の尻尾です。破壊力抜群ですね」
「んなもん、鍋なんかに入れるなよ……ガクッ」
俺は何とも言えない蛇肉のような味に気絶した。
そこからの記憶は、俺にはない。
「あらあら。落ちてしまいましたか。胡桃さん、口直しにそこの霊鳥の霊肉を取ってください。」
「瀬野ちゃん、昔っからこれ好きだものね。じゃ、胡桃は龍の鱗肉でも……」
「ふふふ、お互い物好きですね……」
(だって、薬としても食物としても美味しいんですもの)
「瀬野ちゃんこそ……ふふふ」
(だね。これで、倒れなくて済むのだから、儲けモノよ)
その日、吹雪の夜に、女子二人の怪しげな高笑いが聞こえたそうな――。