エレクトラの夢 ~銀翼のキセキ外伝~
彼女はよくしゃべる子だった。
黙っていたら、それなりの美貌の持ち主なのに、眉根を寄せたり、目を見開いたり、口を尖らせたり、表情を目まぐるしく変える。美貌が崩れることを微塵も気にしていないようであった。
そして、飛びきりの笑顔。本当に、目の前のことが楽しくて仕方がない――そんな笑顔だった。
だから――彼女の周りにはいつも人が集まっていた。
彼女が、五大貴族の令嬢だと聞いたのは、後になってからだった。
ずるいと思った。
最上位の貴族なら、お高く止まっていればいいのに。
そうしたら、こんな劣等感を感じることもなかったのに。
「ねえ、ハンザ・ミルに興味ある?」
それが初めての言葉だった。
高等院の初めの頃まではずっとやっていた球技だった。難関のエリリア修学院を目指すと決めてから、試験勉強のためにやめた。彼女はそのことを知っていたのだろうか?
所詮、我が家は成り上がりだ。貴族を名乗ってはいるものの、代々続いている家柄とは訳が違う。陰口を叩かれているのにも気付いていた。でも、別にいい。エリリア修学院に入ったのは、高度な教育を受けるためだ。友達を作るためじゃない。
それなのに――
その笑顔は人懐こかった。私の家名が何であろうが、彼女には関係ないようだった。
「一緒にやらない?」
彼女は、瑠璃色の瞳で私の顔を覗き込んだ。少々無遠慮だったが、その感じに戸惑った。それまでは、誰も私の領域に踏み込んでは来なかったから。
「弱いけどいい?」
思ってもみなかった言葉を口走る自分に気付いた。
輝くような笑顔が自分に向けられる。
それまでは、遠くで目にしていた笑顔。
私に向けられることはないと思っていた笑顔。
彼女は、私がハンザ・ミルのチームに入ることをとても喜んでいた。
そして、私は――
高嶺の花だと思っていた彼女を、自分が喜ばせることができて、嬉しかった。
その時からだ。彼女を忘れられなくなったのは――
いや――
修学院に入って、初めて彼女を目にした時から、私は彼女のことが忘れられなかった。
エレクトラは深く息をついた。
……どうして、私が心惹かれるのは、女の子ばかりなのだろう?……
……だから、この夢は夢でしかないのだ……




