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銀翼のキセキ・外伝

エレクトラの夢 ~銀翼のキセキ外伝~

作者: 刹那メシ
掲載日:2026/10/23

 彼女はよくしゃべる子だった。

 黙っていたら、それなりの美貌の持ち主なのに、眉根を寄せたり、目を見開いたり、口を尖らせたり、表情を目まぐるしく変える。美貌が崩れることを微塵も気にしていないようであった。

 そして、飛びきりの笑顔。本当に、目の前のことが楽しくて仕方がない――そんな笑顔だった。

 だから――彼女の周りにはいつも人が集まっていた。

 彼女が、五大貴族の令嬢だと聞いたのは、後になってからだった。

 ずるいと思った。

 最上位の貴族なら、お高く止まっていればいいのに。

 そうしたら、こんな劣等感を感じることもなかったのに。

「ねえ、ハンザ・ミルに興味ある?」

 それが初めての言葉だった。

 高等院の初めの頃まではずっとやっていた球技だった。難関のエリリア修学院を目指すと決めてから、試験勉強のためにやめた。彼女はそのことを知っていたのだろうか?

 所詮、我が家は成り上がりだ。貴族を名乗ってはいるものの、代々続いている家柄とは訳が違う。陰口を叩かれているのにも気付いていた。でも、別にいい。エリリア修学院に入ったのは、高度な教育を受けるためだ。友達を作るためじゃない。

 それなのに――

 その笑顔は人懐こかった。私の家名が何であろうが、彼女には関係ないようだった。

「一緒にやらない?」

 彼女は、瑠璃色の瞳で私の顔を覗き込んだ。少々無遠慮だったが、その感じに戸惑った。それまでは、誰も私の領域に踏み込んでは来なかったから。

「弱いけどいい?」

 思ってもみなかった言葉を口走る自分に気付いた。

 輝くような笑顔が自分に向けられる。

 それまでは、遠くで目にしていた笑顔。

 私に向けられることはないと思っていた笑顔。

 彼女は、私がハンザ・ミルのチームに入ることをとても喜んでいた。

 そして、私は――

 高嶺の花だと思っていた彼女を、自分が喜ばせることができて、嬉しかった。

 その時からだ。彼女を忘れられなくなったのは――

 いや――

 修学院に入って、初めて彼女を目にした時から、私は彼女のことが忘れられなかった。


 エレクトラは深く息をついた。

 ……どうして、私が心惹かれるのは、女の子ばかりなのだろう?……

 ……だから、この夢は夢でしかないのだ……


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