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ヴァインスヘイムが賢者たる所以

作者: おといち

やぁ、諸君。私はヴァインスヘイム。皆からは賢者と呼ばれている。

今はここ『リヴァンダプール』の街で行われている騎士団の入団試験、その審査員長としての席に座らせてもらっている。


何故賢者である私が騎士団の試験で審査員長を務めているかって?

それは話すと長くなるが、まぁいいだろう。

人だかりができているので覗いてみたら、実に面白そうな試験をやっていたのでな。

さも「私は偉い人です」みたいな顔して置いてあった椅子に座っていたらこうなったのだ。


ハハ、「言っている意味がわからない」という顔をしているな。それでいい。

意味など存在しないのだから。

なにを隠そう、この世界は”ノリと勢いが全ての事象を凌駕する世界”なのだ。


なに?「説明が足りない」だと?なんとノリの悪いことを言う奴なんだ、君は。

まぁいい、見ていればわかる。パッションだ。ドントシンクフィール。綴りは知らん。



「エントリーナンバー1番!!アルフレッド!!俺はーー」


ーー話にならないな。


「失格。次」


「な!?!?待ってくれ!!まだなにもしていないじゃないか!!」


アルファベータガンマとやらがなにやら喚いているが、知ったことではない。


「二度は言わん。失格だ、下がれ」


まぁ言ってしまったがな。許せ。


「納得できない!!せめて理由を言ってくれ!!」


「はぁ。本当に仕方のない奴だな。

いいだろう。手短に言うが、お前はこの世界を勘違いしている」


「か、勘違い…?」


「愚か者が!!!感嘆符の数だけで勢いを表現した気になってるんじゃァないと言うことだッ!!!」


「はっ…!!」


やれやれ。ようやく気が付いたようだな、己が未熟さに。


「し、しかしアンタだって今…」


「ーー”気圧(けお)された”だろう?」


「!!」


「それが全てだ」


「くっ……出直して……きます……」


「問答無用!ホロスティックバースト!!」


俺の手から出たなんか凄い光がアルマーニを襲う。まぶしい。あったかい。


「ぐあああああ!?」


この期に及んで三点リーダの乱用で落胆を表現するとは、救いようのない愚図め。

浄化の光で焼かれて消えろ。


む?今の光は”魔法”か、だと?

そんなこと私が知るわけないだろう。適当に強そうな名前を叫んだらなんか出ただけだ。

言ったはずだ。ここは”ノリと勢いが全ての事象を凌駕する世界”だと。


ぶっちゃけ賢者なんて誰からも呼ばれたこともないし

ヴァインスヘイム三世という名前も響きがイカすから名乗っているだけだ。

なんなら先月まではシンと名乗っていた。あの時はそういうシンプルなのが渋いと思っていたからな。

そういう周期、あるだろう?男ならみーんなわかる。



「服がダサい。不合格だ」


「喋れり方が嫌いな奴に似ている。失せろ」


「ブッブー!とにかくダメでーす!」


まったく、騎士団の入団試験というから飛び入りで審査員長をしてやっているのに

随分とーー


「やれやれ、随分とレベルの低い奴ばかりだな」


ほう?こいつ、これまでの参加者より数枚格上と見た。


「俺の名はーー」


「いや、もういい。帰れ」


名乗ろうとする男の声を遮る。周囲が「まさか」「あいつまで」と騒ぎ立てる。

そこそこ名の知れた奴なのだろう。


「…俺の聞き間違いか?”帰れ”と言われた気がしたのだが?」


「間違いではないぞ。ゴートゥーホーム。綴りは知らん」


簡単な綴りであるとは思うが、知らんと言っておく。

挑戦しなければ怪我をすることもないのだ。


「ほう?理由は…いや、あえて聞くまい。アンタ、俺と勝負しな」


「いい心がけだ。理由は戦いの中で知るといい」


決まったな。よし、理由を考えるか。


審査員長のフカフカな椅子から腰を上げた私は、男の前に立つ。

彼奴のクラスは恐らく剣士。その手に剣を持っていることからわかる。

先ほどのホロバを見たからだろう。男は慎重にこちらの様子を伺っている。そう、慎重に…。


「この痴れ者が!!ナイトメアブラックシャドウーー漆黒!!」


私は両の手を天に掲げ、叫んだ。すると、黒いバリバリした宇宙的なヤツが男を包み込んだ。


「ぬあああああ!!」


男は断末魔を上げながら黒焦げになった。黒っぽい言葉を羅列した甲斐があったというものだ。


「慎重に様子を伺うとは、なんと恥知らずな男か」


「ぐ…!」


どうやらまだ息があるみたいだな。断末魔を上げたなら潔く死ぬのが筋ってものだろう。


「どうしてもわからん。なぜ、俺は名乗る前に…」


「わからんか?仕方あるまい、冥土の土産に教えてやろう」


「た、頼む」


「そろそろ飽きたのだ」


そう、飽きたのだ。ノリと勢いだけで場を持たせるのは案外キツいから仕方がない。

なにより文字数もそろそろいい感じだろう。


「そん、なーー…」


力尽きたか。俺も力尽きた。いろんな意味でな。

ふと黒焦げの男を見やると、首からドッグタグを下げていることに気が付いた。

そういえば名前すら聞いてなかったな。どれ、墓に刻む為にも見ておくかーー


【シュタインブラッド三世】


ーーやぁ、諸君。今日から私の名はシュタインブラッド三世だ。

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