別れの約束、新たな風
翌日、ゴブリンたちの集落。朝霧が畑を覆い、作物が露に濡れる中、たかちゃんは皆を見回し、優しく諭した。木々の葉が、静かに揺れる。
「ほな、これからはたかちゃんの通訳なくなるけど、お前ら仲良くやれよ?お前ら、言葉のわからん犬とか猫でも何考えてるわかるやろ?」
ゴブリンたちは感謝の言葉を伝え、年長者が涙ぐみながら言う。『また来てください』『困ったときは呼んでください』と。粗い手が、たかちゃんの肩に触れる。
「それで、しっかりと人間語とゴブリン語も互いに学べばええやん。そしたらたかちゃんの全言語理解みたいな能力も必要なくなる。こんな能力、勉強で出来るんや」
ゴブリンたちは目を輝かせ、人間の文字や言葉を学ぶ意欲を見せた。互いの文化を理解し合う良い機会になりそうだ。小屋の前で、子供ゴブリンたちが、畑の土を弄びながら笑う。
「よし、ほんなら、たかちゃんは旅に出るわ。多分、たかちゃんの使命は世界中のモンスター達と仲良く出来るような世界を作る事なんやろ」
ゴブリンたちは涙を流しながら手を振った。『また来てください』『旅の無事を祈っています』と。年長者の声が、森に響く。
「おう!!お前らもしっかりやれよ!!最初に会えたのがお前らでよかったわ!!ほなな〜!!」
そう言って、たかちゃんは草原の向こうへ歩き出した。ゴブリンたちは『さようなら』と手を振り続け、集落に平和の風が吹き抜けた。異世界の空の下、たかちゃんの頭空っぽな外交が、世界を変えていく――そんな予感がした。草原の草が、たかちゃんの足跡を優しく覆い、新たな冒険の風が、背中を押す。