門前の叫び、執政官の驚愕
街の門に到着すると、石畳の道が広がり、商人たちの声が響く。たかちゃんは両手を挙げ、深呼吸をして叫んだ。衛兵たちが慌てて駆け寄り、槍を構える。門の影が、ゴブリンたちの緑色の肌を覆う。
「おぉ〜い!!ワシはたかちゃん言うんや!!ゴブリン引き連れてるけど、たかちゃん危ないもんやないねん。誰か偉いさん連れて来てくれや!!」
衛兵の一人が、たかちゃんに近づき、警戒の目を向ける。槍の先が、微かに震える。
「あんた、多分衛兵さんやろ?そこまで偉くないやろ?あんたじゃ、話し通じんやろ?とりあえず、コイツらゴブリンが持ってるの見てくれや。ええ、木彫りの装飾品持ってるやろ?」
衛兵は装飾品を覗き込み、目を輝かせた。『これは...!』と声を上げ、すぐに上層部への報告を約束する。たかちゃんはゴブリンたちをなだめ、大人しく待った。ゴブリンたちは、手土産を握りしめ、不安げにたかちゃんの袖を引く。街の喧騒が、遠くから聞こえ、緊張の空気が濃くなる。
やがて、街の執政官が到着した。厳つい鎧姿の男で、ゴブリンたちを見て最初は剣に手をかけたが、装飾品を見て表情が変わる。鎧の鎖が、歩くたびにカチャリと音を立てる。
「ステータスオープン!!これ、見りゃわかるやろ?ワシ、全言語能力ってのがあるねん。だから、コイツらゴブリンと話せるんや」
執政官はステータス画面を見て、目を見開いた。『これは...!』と声を上げ、ゴブリンたちに向かって宣言する。『和平交渉の場を設けましょう』。館の扉が開き、皆を招き入れる。
たかちゃんを通訳として、ゴブリンと街の和平交渉が始まった。執政官の館で、両者の代表が集まる。重厚な木のテーブルに、地図が広げられ、土地の境界線や資源の共有について、熱い議論が交わされた。ゴブリンたちは畑の一部を街に提供する意向を示し、執政官は土地の保護を約束した。たかちゃんはゴブリン語と人間語を交互に通訳し、場を繋ぐ。空気が徐々に和らぎ、窓から差し込む陽光が、皆の顔を照らす。
「よっしゃ、これで互いに上手い事纏まったんと違うか?」
両者が握手を交わし、無事和平が成立した。ゴブリンたちは喜びに飛び跳ね、街の人々から感謝の宴が開かれることになった。たかちゃんは、皆の拍手に包まれ、照れくさそうに頭を掻いた。館の外で、鐘の音が平和を告げるように響く。