手土産の絆、街への道
「ほなな?悪いけど、一回たかちゃんに任せてくれんか?多分、お前らが街に行ったらボコられるやろ?たかちゃんが街の偉いさんつれて来て話し合いしよか?」
ゴブリンたちは喜びに沸き、年長者がたかちゃんの手を強く握った。粗い緑色の指が、たかちゃんの肌に温もりを伝える。『街への案内役を務めさせてください』と申し出る声が、集落に響く。人間とゴブリンの和平交渉が、意外な形で始まりそうだ。小屋の影が長く伸び、畑の作物が風に優しく揺れる。
「えっとな……ほな悪いけど、お前ら自分らで作ったもんで、何か手土産みたいなんとかある?しょうもないもんでもええねん。ゴブリンが作った服とかだけで価値はあると思うわ。何か人間側に手土産持って行こうぜ」
ゴブリンたちは、目を輝かせて小屋から品々を持ち出してきた。手作りの布地は、粗い糸で織られ、ほのかに魔力が染みついている。木彫りの装飾品は、細やかな彫りが施され、ゴブリンたちの誇りが感じられる。これらは街で高く売れるだろう。年長者が、一つ一つを丁寧に包み、たかちゃんに手渡す。
「この木彫りのヤツ、ええな?多分、これ値打ちもんなるんちゃうか?」
年長ゴブリンが、誇らしげに頷く。これは古代ゴブリンの伝統工芸品で、魔力の結晶が埋め込まれている。表面の彫りが、森の光を反射してきらめく。市場価値は相当高そうだ。ゴブリンたちは、品々を大切に抱え、互いに励まし合う。
「よっしゃ。そしたら、何人か一緒に来てくれや。街に行こうぜ」
10匹のゴブリンが、軽装の鎧を身につけ、手土産を大切そうに抱えて同行した。鎧の金属が、森の木漏れ日に輝く。たかちゃんを先頭に、森を抜け、街への道を進む。ゴブリンたちは、緊張しながらも、たかちゃんの背中を信頼の目で見つめていた。木々の葉ずれが、足音に重なり、道中の緊張を和らげる。