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緑の集落、言葉の橋

森の入り口に到着すると、木漏れ日が差し込む中、緑色の小柄な生き物たちが畑を耕していた。ゴブリンたちは、粗末な鍬を手に、土を丁寧に掘り返す。汗が彼らの緑色の肌を光らせ、畑の作物が風に揺れる。たかちゃんは深呼吸をし、木々のざわめきを聞きながら、声を張り上げた。森の空気が、緊張で張りつめる。


「おい、こらそこのゴブリン!!ちょっと話しようぜ!!」


ゴブリンたちは一瞬、鍬を止め、棍棒を構えて警戒した。鋭い目がたかちゃんを射抜く。だが、たかちゃんの言葉が『全言語理解』で伝わり、彼らの耳に完璧なゴブリン語として届く。『話がしたいだけなんだ』という穏やかなニュアンスが、緊張を溶かすように広がった。ゴブリンたちは互いに顔を見合わせ、棍棒をゆっくりと下ろす。一匹の年長ゴブリンが、たかちゃんをじっと見つめ、粗い手で合図を送った。集落の中へ、静かに案内される。


木の小屋が並ぶ簡素な村は、土の匂いと煙の香りに満ちていた。ゴブリンたちは、畑の作物を取り囲み、年長者のリードで口を開く。粗いゴブリン語が、たかちゃんの耳に流暢な日本語として響く。彼らは畑を指さし、悲しげに訴えた。人間が自分たちの畑を荒らすと。実は、人間の冒険者ギルドがゴブリン討伐の依頼を出しており、土地争いが絶えなかったのだ。ゴブリンたちの目には、疲労と諦めが浮かぶ。


「お前ら何で人間と揉めてるん?」


「ここはお前らの土地やねんな?それを人間が自分達のものや〜って言って、お前らの作ったもん奪うから、お前らも腹立って人間に攻撃するんよな?」


ゴブリンたちは、ゴロゴロと喉を鳴らし、深く頷いた。年長者が、泥だらけの畑を指さす。その土は、ゴブリンたちの汗で湿り、作物は細々と育っていた。深刻な問題だった。この地域では、人間とゴブリンの土地を巡る争いが、血なまぐさい事件を引き起こし、畑は荒れ果て、家族を失ったゴブリンたちの声が、静かに響く。


「お前らはどうなん?やっぱ、人間とは争いたくはないのか?争うのと平和とやったら、平和の方がええんか?」


ゴブリンたちの目が、輝いた。彼らは一斉に頷き、興奮気味に語り出す。『話し合いで解決したい』『畑を荒らすのは本当は好きじゃない』と。たかちゃんの言葉が、彼らの心に希望を灯したようだ。年長ゴブリンの手が震え、畑の土を優しく撫でる。森の木々が、風に囁くようにざわめき、集落に温かな空気が流れた。

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