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4.A級冒険者

 翌日、朝。

 愛式は王都の路地裏で目を覚ましていた。

 愛式の肩に寄りかかっていた小鳥遊はまだ目を覚ましていない。

 その光景を向かい側で眠っていた幸喜はニヤニヤとした表情で見ている。

 それに苦笑いを返しながら、小鳥遊の方を優しく揺らす。


「おい、小鳥遊、朝だぞ。」


「う、うん...え!」


 小鳥遊に声をかけると、小鳥遊は一瞬状況がわかっていなかったが、愛式に寄りかかっていたことに気づくと顔を赤くして急に立ち上がった。

 それを幸喜と温かい目で眺めてから、2人に話しかける。


「よし、じゃあ行動を開始しよう。昨日言ってたカミーユの知識で心当たりの知識がある人物っていうのはA級冒険者アルフレート・ガルデゥーンだ。彼は生前のカミーユと数度パーティーを組んだことがあり、カミーユに命をすくわれたこともある。だから、こちら側の事情を話せば助けがもらえるかもしれない。」


 俺のその言葉に、2人は頷いた。

 それを見て、俺は2人を先導して歩き出した。




 一時間ほど歩いた後、俺はある建物の前についた。

 その建物には剣と盾が交差したシンボルの看板がある。

 この世界の「ギルド」である。

 様々な仕事を協会員に斡旋している組織である。

 そこに俺たちは入って行った。

 ギルドの建物の中は熱気に包まれていた。

 多くの青年の男たちが掲示板の前に集まっている。

 女性もいるが、割合としては少ない。

 その中を平民の服を着た愛式たちが歩いていく。

 小鳥遊の美しい黒髪黒目の容姿が人目を引いて、数名の男が寄ってくる。

 そして、小鳥遊に話しかけようとするがその機先を制すように、愛式は声を張り上げた。


「アルフレートはいるか!!」


 その声に周りの男たちは驚き、足を止める。

 その男たちを押すのけるように、1人の男が愛式たちの前に進み出てきた。

 その男はスキンヘッドの大柄の男で大きな戦鎚を背に背負いながら俺の方を値踏みするように見ると、

 一つ頷き、受付の人間に「部屋を借りるぞ。」と声をかけると、ついてこい、と視線で示してギルドの奥に歩き出した。

 俺たちはそれについていく。

 小鳥遊に話しかけようとしていた男たちは事態が把握できないのか呆然としていた。




 ギルドの応接室。

 そこで俺たちとアルフレートはテーブルを挟んで向かい合っていた。

 アルフレートが俺たちに話しかける。


「お前が、カミーユの後継者か?」


「恐らく、その通りです。俺はカミーユに力と知識をもらいました。」


 いきなりカミーユの話を聞かれて驚いた。

 後から聞いた話によるとアルフレートは知り合いの死霊術師を通じてカミーユの魂がまだ現世に居る事を掴んでいたらしい。

 だから、そんな彼の前にカミーユと同室の魔力を持った人間が訪れたのだからカミーユに関係した何者かと推測するのも当然だろう。

 俺は正直に事情を話すことにした。

 その方が信用を得られると思ったからだ。

 俺はアルフレートに事情を説明した。

 俺の話を聞きながら、アルフレートは頷いている。

 俺が事情を説明し終わると、


「なるほど、異世界召喚術か...噂には聞いていたが、まさか帝国が手を出すとはな。そこまで戦線が厳しいのか?脱出も考えておくべきか...そして、お前たちが異世界人か...」


「はい、そしてお願いがあります。どうか私たちが帝国から逃れるのに手を貸してくれませんか?」


「ふむ...」


 アルフレートは数十秒思案した後答えた。


「いいだろう。カミーユ様は俺の大恩人だ。そしてお前をみればそのカミーユ様が力を与えたとわかる。手を貸してやろう。」


「ええ、ありがとうございます!」


 俺は交渉が順調に終わってホッと一息ついた。

 もしかしたら俺がカミーユの名を語っている嘘つきだと思われる可能性もあったが、どうやら彼は俺を一目見た時から俺がカミーユから力をもらったと分かっていたようだ。


「では、具体的な策を考えようか。場所はこのままで良いだろう。ギルドの応接室はかなり防諜性に優れている。」


 そう言って、彼は一度部屋から出ると、大きな紙を持って帰ってきた。

 それはどうやら世界地図のようだった。

 数個の大陸とその大陸にある国々が描かれている。

 それを見ながら、アルフレートは話し始めた。


「とりあえずこの地図でいいだろう。大体はこの地図の通りだ。国境線は変わっているところが多いと思うがな。そして、お前の話ではカミーユはウリエ王国にいくことを薦めていた、そうだな?」


 アルフレートの質問に俺は首肯する。


「結論から言うと、俺は反対だ。理由は簡単で、今日からこの帝国から王国に対して大規模な攻勢が始まったからだ。敵国である四国同盟のうちドルツクネ連邦国しかそのカバーに回れない状況を生かした、起死回生の一手と言えるだろう。」


 アルフレートは地図を指差しながら考えを説明していく。

 帝国が頼みの国に侵攻を始めたと聞いた時は俺たちはみんな息を呑んだ。


「じゃあ、どこがいいかと言うと、まず海路はありえない。魔大陸も皇国もどっちもきな臭いし、そもそも帝国の目が厳しい。じゃあどこかがいいかと言うと、ドルツクネ連邦国だ。ここがウリエ王国への支援のために帝国への注意が若干疎かになる可能性がある。それは他の二国、フラッツ王国とミルツ共和国も同じような状況だが、フラッツ王国はこれからの冬は雪がきつい。そしてミルツ共和国は、帝国を南北に分断しているアルプ山脈は西に行くほど標高が高くなるからドルツクネの西にあるミルツはさらに侵入が厳しい。よって、おれはドルツクネを推す。お前らはどう思う?」


 その言葉に俺たちは反応できないでいた。

 アルフレートは予想以上に優秀だったからだ。

 最初の印象はスキンヘッドも相まって「怖そう」と言うものだったが、話してみるととても理知的であった。

 そして、すぐに立ち直った愛式が返事をする。


「あぁ、それで構わない。ありがとう。」


「お前はカミーユ様の後継者だからな。当然だ。それと、お前らは将来的に仲間を全員連れ出したいんだろう?俺がいればあと最大2人はいけるぞ。ただし生意気な奴は勘弁だがな。」


 彼の言う仲間とは生徒のことである。

 なるほど、彼が手伝ってくれるなら今の段階でもっと生徒を連れ出してもいいかもしれない。

 そう考えた愛式はアルフレートと会議を進めていった。

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