3.ウリエ王国
ミリタリーにわかなので戦争の規模とか役職とかおかしいかもしれませんがそんなところがあったら指摘してくださいm(__)m
視点は愛式たちが大広間から飛び出した地点に戻る。
愛式たちが飛び出した後、残された生徒約三百名は恐慌状態に陥った。
異世界転移を現実として認識し、また同じ立場である生徒が逃げ出したのだから混乱に陥るのはしょうがないであろう。
そして、そんな生徒たちは周りにいた兵士たちに容易に取り押さえられ首に武骨な首輪をつけられた。
これは奴隷術に用いられる首輪でありこの首輪をつけたものは主人に対して反抗することが出来なくなる。
そんな、奴隷と化してしまって生徒たちの前に、軍服を着た壮年の右目に眼帯を付けた男の軍人が現れた。
「初めまして、異世界人の皆さん。私は帝国陸軍ヘルムート・オーバー少佐だ。皆さんの教官となる。ところで...」
ヘルムート少佐は、そう言って、いまだに反抗の意思を隠していない生徒たちのグループに目を向けた。
彼らは高校でも不良として目立っていたグループだ。
ヘルムート少佐はそんな彼らに向かって悠然と歩いて行った。
そして、不良グループのそばにいた軍人に少し話しかけたと思うと、その軍人は心配そうな顔をしながら不良グループの首輪を触っていた。
それに不良グループは総じて不快そうな顔をしていたが、突然騒ぎ出して、全員が立ち上がった。
彼らは先ほどまでは指先一本も動かせなかったが、軍人に触られたことによって体の自由が戻ったのだった。
「おい、何のつもりだよ。」
ヘルムート少佐に不良グループのリーダーがそう声をかける。
しかし、ヘルムート少佐はその言葉を無視して、不良グループに構えた。
「かかってこい。俺を倒せたら自由にしてやる。」
不良グループは全員で10人、ヘルムート少佐がどれだけ鍛えられていてもさすがに1対10ではかなわないと考えるもののほうが多いだろう。
それは不良グループも同様だったようで、一瞬呆けたような顔を浮かべると、全員でヘルムート少佐を取り囲んで殴りかかった。
三分後、生徒たちの目の前に移っていたのは、泣きながら、嗚咽を漏らしながら許しを請う不良グループだった。
彼らの腕はみな一様におかしい方向にねじ曲がっており、立っていられなくなったのか全員が倒れ伏している。
ヘルムート少佐は不良グループのリーダーの腹部に執拗に蹴りを入れている。
ヘルムート少佐と不良グループの戦いはヘルムート少佐の圧勝で終わった。
不良グループは一発も攻撃を入れることが出来なかったのだ。
そんな不良グループをヘルムート少佐は執拗に痛め続けていた。
まるで恐怖を刻み込むように。
ヘルムート少佐は大広間に登場した時から絶えず無表情で、それが彼を一層不気味に見せていた。
そして、不良グループのリーダーがうめき声すら出さなくなると、かすかなため息をつき、近くにいた軍人に「救護班を。」と言って生徒たちの正面へと歩き出した。
生徒たちは皆ヘルムート少佐への恐れの感情を抱いており嗚咽を漏らしている女子生徒も少なくなかった。
そんな生徒たちにヘルムート少佐は生徒は宣言した。
「いいか、お前ら。お前らは俺たち帝国の道具だ。粉骨砕身して帝国に尽くすように。もしも帝国への忠誠が足りないと判断したものがいたならば容赦なく鉄槌を下す。だが、もし帝国へ並々ならぬ貢献をしたら褒美をやることも考えている。今日はとりあえずここまでだ。今日はこの城に泊まり、明日から帝国軍学校へ泊らせる。わかったな。」
ヘルムート少佐はそう言うと、大広間から退出していった。
白衣を着た救護班が駆け足で大広間に入ってくる。
残された生徒たちは皆一様に絶望と恐怖にとらわれていた。
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ウリエ王国王城のとある一室。
ここにウリエ王国現王、軍務卿、ウリエ王国軍最高司令官の三名が集まっていた。
彼らの座る机には三つの水晶玉がおいてあり、その水晶玉につながっている複数の管が傍にある大きな箱につながっている。
水晶玉は、映像水晶というものであり、遠くの景色を水晶に映し出すものであり、大きな箱はその水晶から複数の管を通じて音声を出力するものである。
その三つの水晶玉には、四国同盟の同盟国である、フラッツ王国軍務卿、ドルツクネ連合国軍務大臣、ミルツ共和国軍軍務大臣が映っていた。
その水晶玉にウリエ王国王アウグスト・ウリエが話しかける。
「まずは、現状について共有しようと思う。最高司令官殿。」
「は!まず、アリタリア帝国は今日の明朝、帝国全土に我が国への大規模侵攻作戦を発令。現在我が国と帝国の国境には我が国が二百万、帝国が三百万の兵士を展開していますが、帝国は二週間以内にさらに百五十万は増えると予想されています。対して我が国はこれ以上の徴兵は現実的ではありません。よってが、二百万の軍勢で食い止めなければなりません。」
「鉄道か...」
ウリエ王国軍最高司令官の話を聞いて、ウリエ王国軍務卿が忌々し気につぶやいた。
アリタリア帝国は鉄道の開発にいち早く着手したおかげで、二週間で百五十万もの軍勢をあつめることが出来るのだ。
それを聞いたウリエ王国国王が顔をしかめて、三つの水晶玉のほうへと顔を向けて、話しかけた。
「そういうわけでが、すまないが貴国たちにも冬の間も帝国とたたかってはくれないだろうか。」
その言葉にいち早く反応したのはドルツクネ連合国軍務大臣だった。
「ああ、もちろんだ。同盟国の一大事なのでな。我が国は横から帝国の横っ腹をつかせてもらう。」
しかし残りの二人、フラッツ王国軍務卿とミルツ共和国軍務大臣は険しそうな顔をしている。
先に口を開いたのはフラッツ王国軍務卿だった。
「すまないが、冬の間は厳しいかもしれない。実は魔大陸からの侵攻の兆しがあるのだ。」
「なんと、魔王たちが動くのか!?」
魔大陸。
フラッツ王国の北にある、様々な魔王たちが魔族や魔物たちを治めている大陸である。
フラッツ王国の冬はとても厳しいことで有名で、フラッツ王国の北の海は凍ってしまう。
そして、その凍った海の上を魔物たちが通ってフラッツ王国に攻めてくることがあるのだ。
しかし、ここ十数年は魔王たちは沈黙を保っていた。
その魔王たちが動くかもしれない。
もしフラッツ王国に上陸されてしまえばフラッツ王国に甚大な被害をもたらすだけでなく、ほかの国々にも被害をもたらす可能性がある。
そういう話になれば、ウリエ王国も強く出ることはできない。
ならば、とミルツ共和国軍務大臣のほうへと目を向けるが、こちらから帰ってきたものも芳しくないものだった。
「すまないがうちも厳しい。まず、冬の間にアルプ山脈を越えるのは無理だ。それにアセア皇国が戦争を仕掛けてくる可能性がある。」
アルプ山脈とは、アリタリア帝国を南北に分断している大山脈である。
この山脈があることによって、アリタリア帝国は南の要所が落とされたあとも戦争が続けられているのだ。
アルプ山脈を越えるにはアリタリア帝国が管理している、標高が低くなっているところに作られている関所を通らねばならず、当然帝国もそこに戦力を集中しているために突破するのは難しい。
ならばアルプ山脈の登ればいいのではないかと思うものもいるかもしれないが、アルプ山脈の標高の高いところには強い魔物や龍人たちが住処を持っていて、そもそも大人数でアルプ山脈を登りきるなんて土台不可能である。
そして、アセア皇国とは半年前までのミルツ共和国と同様に中立を宣言していた国であり、帝国の西の海にある島国である。
しかし、その海軍の充実さは帝国に勝るとも劣らぬといわれており、またミルツ共和国は海に面しているのにもかかわらず海での戦力が充実していないので、上陸を許す可能性は十分にある。
フラッツ王国とミルツ共和国の話を聞いて、ウリエ王国側は一様に厳しい表情を浮かべたが、すぐに表情を戻し、フラッツ王国軍務卿とミルツ共和国軍務大臣と少し話した後二人とは水晶玉による通信をきり、戦争に協力すると申し出たドルツクネ連合国軍務大臣と具体的な作戦を話し進めていった。
すいません。予想以上にノっちゃって愛式たちの話までいけませんでした。