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魔法で極める暗殺稼業  作者: マッスルアップだいすきマン
魔法で極める戦争稼業
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よい子の洗脳工場社会科見学

 板橋の病態研究所での会見で海削は最後に一言付け加えていた。

 「この病態研究所と、空き家になった近隣の家をお借りして、放射線障害に苦しむ方々の治療を行います。また、放射線障害相談会を今週金曜日に日比谷公園で実施いたします。予約は不要です。気になることがございましたら是非相談会にいらしてください。混乱を避けるため、既に下痢や嘔吐等の症状が出ている方は病態研究所へ、症状が出ていないが不安な方は日比谷公園へお越しください。」

 「自覚症状が出ている者」とアナウンスしたものの、病態研究所にはただ相談したいだけの人が大挙して訪れた。特に札幌の方は政府も放ったらかしであったので、観光バスで何台も板橋に来訪した。いずれも金を持ってそうなジジババたちである。

 既に空き家になっていたマサユキ宅の隣家数棟がある一区画を(勝手に)更地にして、駐車場と待合スペースを作った。何か言ってきた土地の権利者などは例外無く蹴り飛ばしてワームホールに突っ込んだ。プレハブ小屋だったワームホール入り口は、急ごしらえで診療所風にアレンジした。研究所員に擬態した共産党青年団が診察を装い、相談者を順番にワームホールに落として行く。一分もしないうちに肉体と脳みそがクレンジングされた真人間が穴から出てくる。このルーティンを繰り返した。


 俺は向こうの世界はどうなっているのか興味があったので、俺もくぐってみることにした。ワームホールの先に落とされた人間は、残念ながら化外化していた。いや、残念でもないだろう。向こうの人間が無秩序に入ってきたらこっちの世界は崩壊する。頭がパッパラパーやオッパッピーになるくらいが丁度いいのだ。前に俺が連れてきた薬学生たちに関しては残念に思えたが。

 エマちゃんはワームホール付近に建物を2棟建てていた。一つは牧場転送用、一つは改造用なのだろう。俺達の意図を汲んで上手いことやってくれていた。運営も魔改造化外がやっていた。牧場転送用と改造用は中で繋がっていた。よく確認すると、ワームホールから落ちてきた奴は全員まず改造用に送られ、魔法で複製され、コピーの方が牧場に送られていた。俺はオリジナルのブレインウォッシュ工程を見学することにした。化外達は頭だけ出るような箱を被せられ、魔法で動くベルトコンベアのようなもので次の工程に移った。次の工程では、水流カッターのようなもので頭蓋骨が縦に切開され、骸骨の手のような装置で脳だけ取り出された。取り出された脳は何か紫色の液体に数分間浸けられて、また元の頭に戻されていた。まさにブレインウォッシュという言葉がふさわしいだろう。その後縫合などはしなくても、異世界のご都合主義で傷跡もなく綺麗に元に戻っていた。


 この一連の過程を見学し一人「へぇ~」と感心していたら、背中側からひょっこりツアレが顔をだした。

 「パパ、これ私が作ったんだよ。すごいでしょ。」

 「いやー!すごいね!パパ感動しちゃったよ。向こうの仲間もベタ褒めでパパも鼻が高い。」

 「鼻が高い場所にあるとなんかメリットあるの?」

 「あ、いやぁ、うちの世界の慣用句みたいなもんだよ。『やりますねえ!』みたいな意味だよ。」

 「ふーん。」

 「ちょっと聞きたいんだけど、あの紫色の液体は何なの?」

 「あれ?あれはいにしえの魔女の秘薬だよ。色んなもの煮込んだ煮汁に私の唾液とパパの精液を混ぜてある。最初は手作業でチューニングしてたんだけど、なんかどんどん送られて来るからめんどくさくなっちゃって、漬け置きブレインウォッシュ工程にしたんだよね。」

 娘の効率の良さに父親ながら舌を巻いた。

 「うちのバカがさ、勝手に送り込んじゃってて、手間かけて悪かったよ。でも効率化してくれたみたいで助かってるよ。」


 しばらく娘と二人で工場内を見学した。ツアレは、宇宙へ家族旅行をした時より心なしか楽しそうだった。無事洗脳が完了した化外は列を作ってワームホールへ帰っていった。

 「ところでパパ、最強の兵士がほしいって言ってたじゃん?」

 「ん、忘れちゃったけどそんなこと言ってたっけ??」

 「やだなあ、忘れちゃったの?で、人体ってさ脚のほうが筋力あるじゃん。だったら上半身も下半身にしたら良いんじゃね?って思ったわけよ。肉弾戦なら下半身だけあればいいし。」

 そう言いながらツアレは持っていた小瓶から球根を出し、建物の壁に投げつけた。球根は粉々に砕けたと思ったが、煙の中に上半身も下半身の化外が出現した。これは・・。なんかのゲームで見たことあるやつだ。

 「通称マネキン君。今回のキュウコンマンは土に埋めなくても発芽するから便利だし、役に立つと思うよ。」

 いい。これはいいぞ!

 「ツアレ、最高だよ!これは、役に立つ。」

 俺はコイツラがロシアの大地を埋め尽くしている光景を想像し、ファンタジックな気分になった。

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