レベル下げ!?
「実は田中くんとの協議が成立しましてね。」
そういえば田中は何をやっていたのであろうか。あいつの力ならあらゆるスキルを駆使して普通に脱出できるはずだ。それをしていないということは、女神への忠誠による俺の監視もあるだろうが、不自由ない生活を保証されているということでもあるのだろう。
「俺は馬車馬のように働かさせられているというのに、あの野郎・・」
怒りが湧いた。怒りに震えていると、そんな俺の気持ちを読み取ることもなく金子が言葉を続けた。
「君のバニシングが解禁されました。女神様の許可を取っていただきまして。」
「禁じたり推奨したり、なんやねん!」
関西人でもない俺も関西弁で怒りのツッコミをせざるを得なかった。
「ただし、あちらの世界に化外の者は増やさない、という条件付きですが。女神様はこうもおっしゃっていたそうです。転生者や魔王によって荒廃した世界の復興のためにも魂が潤沢に欲しい、と。」
「それは無理だろ!俺は今回の仕事でもレベルが上がって既に62だ。もはやこの世界に俺よりレベルが高いやつを見つける方が難しい。」
「だから、暗殺対象に合わせてレベルを下げてください。」
「そんなことできるわけないだろ!」
俺は言い切ったが、金子はニヤリと笑った。
「できますよね?できる方法は知っているはずです。」
俺の背筋に冷や汗が流れた。抗鬱剤やアルコールで実験した時のことを思い出した。この辺りのレベルの仕様は、田中に話してしまっていたかもしれない。
「あなたは実験室に入って様々なテストを受けてもらいます。既にレベル測定装置も作りました。あなたのサーチング能力に頼る必要もありません。」
金子がそう言い終わると、ガタイのいい男が2人入ってきた。俺はレベルこそ高いが、その他のステータス値はほとんど上がっていない。
「バニシング、バニシング、バニシング!」
金子ほか2名に対し咄嗟にバニシングを連打したが全く効かなかった。
「前に無駄だって言いませんでしたっけ?そのチート能力もこの施設では無効です。」
「嫌だ!やめてくれぇ!」
俺は囚われの宇宙人が如く、二人の男に両腕を捕まれ連行された。




