続・囚人のジレンマ
「あなたはこれから田中君とは別行動してもらいます。」
「バカ言え。あいつは俺の監視役なんだぞ?簡単に別行動できると思うのか。」
「彼は承諾しましたよ。」
「嘘だろ?あいつは俺の遠隔監視能力さえ持っているのか!」
「そのようですね。GPS監視、モニター監視等を提案しようと思ってましたが、必要ありませんでした。」
俺が憮然としていると、脳に微弱な思念が届いた。モールス信号だ。
「・- ・・-- ・・- -・--- -・-・・ ---- -・--- -・--・ ・-・・(いのうえきこえるか)」
「!?」これは田中からの思念会話だ。しかし俺は受信だけで送信はできない。すると続けてモールス信号が届いた。
「-・-・・ ---- -・--- ・-・-- ・- -・ ・・・ ・-・・・ --- ・・-- ・・-- ・--- -・--- ・-・-(きこえていたらおれの能力の欠点を伝えろ)」
なるほど、金子→杉下を通して意思疎通を図るのか。一芝居打つ必要がある。
「わかったよ。田中はどこでもいつでも俺を監視できるってわけだな。でも24時間とはいかないぞ。あいつも魔力が無限てわけじゃないからな。ハイディングですら相当の魔力を使う。一方、田中は女神の加護の影響で、どちらかといえば悪い力である魔力量はそう高くない。さっき言ったGPSとかなんとか提案しといた方がいいぞ。」
金子はおれの目を真顔で見ながら答えた。
「小賢しい井上くんが随分と建設的なことを言いますね。何か裏がありそうですね。」
「何いってんだよ。俺はあいつにも会えなくて、魔力がいつ切れたってこともわからない。一方的に監視されるモルモットだぞ?いまさら俺が何かを企むことなんてできないよ。ちゃんと言われた仕事はやるからさ、俺が女神にも顔が立つように絵を描いてくれよ。」
しばらくして、改めて田中から念話が入った。
「・-・・ ・・ ・- -・ -- ・・- -・ ・・ ・-・ (念話が届いたようだな。)」
よし、作戦は成功だ。「田中の魔力にも限りがある」という情報を与えるだけで杉下が確認に行くことはわかっていた。田中からの一方的な念話ではあるが。
しかし次のモールス信号に戦慄した。
「-・・-・ --・-・ -・ ・・・ ・-・-・- -・・・ ---・- ・・ -・--・(もし裏切ったら、次回は必ず裏切る)」
田中は完全に俺を信用していない。だから俺が裏切らないように釘を刺したのだ。もはや田中は女神の完全な眷属といっても過言ではないだろう。モールス信号は続く。
「-・・・ ---- ・- ・--・ ・・・ -・-・ --・-・ -・ ・--- --・-・ ・-・-- ・--- -・-・- ・-・・ ・・ ---・- ・-・・・ -・・・ ・-・-- ・・ -・-・・ -・--・ -・ ・・ -・-- ・--- -・- ・-・ ・- ・-・-- ・・ --・-・ ・--・ ・--・ ・--- ・---・(俺はこいつらに協力したフリをして対象をさがす。お前はできるだけバニシングを使わないで協力しつつ対象を探せ。)」
完全に田中側につくこともできず、かといって金子側に依存しすぎる事も出来ない。
ザ・ジレンマ




