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魔法で極める暗殺稼業  作者: マッスルアップだいすきマン
魔法で極める暗殺稼業
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漆黒の破滅砦

 魔獣群帯の森を抜け、俺たちは目的地の漆黒の破滅砦目前までたどり着いた。途中にエンカウントした魔獣は田中と中村がほぼほぼ退治してくれた。なんの仕事もしていない俺にもキッチリと経験値が入った。こんなことなら俺一人を森に放り出すなんて非効率なことしないで、最初からパーティを組んでくれたら良かったのに、と不満感を感じた。

 「さて、そろそろパーティらしい隊列を組もうかの。わしと田中は後衛、中村と井上は前衛じゃ。」

 俺は面喰った。俺は全然アタッカーじゃねえぞ!

 「なんでだよ!俺はナイフもつかえねえよ!」

 「かといって補助魔法も何もできないじゃろ。バニシングが効く相手にはバンバン使って放り投げてくれ。」

 俺は何も言うことができなかった。俺ができるのはしょせんバニシングしかないのだ。期待すらされていない。


 砦の門番も中村があっけなく倒し、簡単に場内に進入した。だが、その瞬間、闇の中から複数のモンスターが襲い掛かってきた。ほとんど人型だが、その目は赤く光り、牙をむき出しにしている。彼らの咆哮が砦の壁に反響し、恐怖を煽る。

 中村は剣を振りかざし、次々とモンスターを斬り倒していくが、あまりの物量に圧倒され始めた。汗が額を伝い、息が荒くなる。彼一人では対処しきれない。必然的に俺にもお鉢が回ってきた。

 「くそっ、こんなに多いとは…!」俺は手をかざし、魔法の詠唱を始めた。青白い光が手のひらから放たれ、モンスターたちに向かって飛んでいく。光が触れた瞬間、モンスターは悲鳴を上げて消滅する。

 「中村、後ろだ!」俺の叫びに反応し、中村は振り向きざまにモンスターを斬り裂いた。だが、次々と現れるモンスターに対処するため、俺はさらに強力な魔法を使うことにした。

 「炎よ、我が敵を焼き尽くせ!」俺の声と共に、巨大な火球が現れ、モンスターの群れに向かって飛んでいく。爆発音と共に、砦の中は一瞬で炎に包まれた。モンスターたちは次々と焼き尽くされ、戦場は一時的に静寂に包まれた。

「ふぅ…これで少しは楽になったか。」俺は息を整えながら、中村と共に次の敵に備えた。


 ・・という妄想をしながら戦ったが、実際は中村が打ち漏らした敵や弓矢・弾丸に手をかざしてバニシングを掛けていただけだった。敵はどいつもこいつも壁や天井にめり込んでいる。分子レベルで壁と結合してしまっているような奴もいる。

 「終わったね。」

 田中と長老がやっと砦の中に入ってきた。俺も大したことはやっていないが、この二人も何もしていない。中村だけ異常なやる気を見せ、がんばってくれた。長老は体力回復魔法を中村に使うと、中村は再び熱血教師のように燃え上がり始めた。

 「うぉぉぉ!やればできる!」

 中村が広間を一直線にダッシュを始めた。

 「おい待て!」

 というのもつかの間、中村はトラップの落とし穴に引っかかって落ちて行ってしまった。田中がため息をつく。

 「中村さんてあんなにアホだったっけ?初めて会った時はかなりインテリに見えたけど。」

 「剣の上達とともに、脳みそも筋肉になってしまったんじゃろか。」

 二人の落ち着きっぷりに俺は慌てた。

 「お、おい。そんな冷静で良いのかよ!中村さんいないとボス戦ヤバくないか?それに中村さんの安否もさあ!」

 田中はニカっと笑った。

 「いや、中村さんもこっちの世界に来てから厨二化しているからきっと大丈夫だよ。」

 俺は頭が混乱した。厨二だから大丈夫?

 「とにかくボス戦だ。井上中心で頑張ってくれれば何とかなるから。」

 「おい、待て待て待て。絶対中村さんいた方がいいって!」

 「だいじょうぶだから。井上さえいれば。ほら、奴さん来たぞ。」

 奥の大扉から身長10mはある魔人が広間に入ってきた。中村が落ちた落とし穴の前で律儀にも止まった。

 「勇者一行はおまえらか。よくも我が砦をここまで蹂躙してくれたな。」

 そりゃそうだ。その感想はもっともだ。俺のせいで壁や天井からはモンスターの身体やら頭やら尻やらが生えている。蹂躙して申し訳なかった。俺が申し訳なさを感じていると、長老が啖呵を切った。

 「魔人アバドンよ。ここにいる人物を誰と心得る!賢者マサユキを討伐した勇者井上様じゃ!」

 それを聞いた途端アバドンと言われる魔人の脚が震えだした。

 「ま、まさか、そんな・・・。マサユキと刺し違えたと聞いているぞ!」

 「それがセラフィムの預言のとおり、勇者が復活したんじゃ!」

 魔人の、地震のような脚の震えが止まらない。地響きがこちらまで響いている。そんなガタガタタイムを無言で過ごしていたら、その間に落とし穴から中村が這い上がってきて魔人の足首を掴んだ。

 「うぎゃー!」

 足首を掴まれる突然の出来事にアバドンは悲鳴を上げて泡を吹き、その場にへたり込んだ。

 「井上、今じゃ!ここから52.6km離れた魔王城にこいつを飛ばせ!」

 「ほ、方角は??」

 「北北東だ!」

「た、高さは?」

 「なんでもいいよ!早くしろ!」

 「た、tan1°1km!バニシング!」

 魔人アバドンはレベルが70だったので俺のバニシングは効かないはずだが、泡を吹いていたので簡単に効力を発揮した。三角関数を計算する暇がなかったので適当に唱えたが、概ね指定の方向・距離に飛んだようだった。魔人アバドンは1Kmの上空から地面に叩きつけられることとなり、哀れだが。

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