18. 『悪人』の【権能】
夜も更けてきた。
篝火の爆ぜる音と真夜中の月明かりの絡み合う光景は幻想的で、まるでこの世とあの世の狭間の如く見る者全てを魅了する。
加えて、全身を絶えず刺激する殺意の嵐は相乗効果のように祭壇に集まった人々を釘付けにしていた。
人間も、“龍人”も、等しくたった一人の気迫に吞まれているのだ。
見事と言わざるを得ない“龍気”の操作だ。
老獪にして油断ならない“龍人”だと、どの邑人と比べても警戒していたのだが…………やはり、判断は正しかった。
“オドラの民”をまとめ上げる邑長、オン。
かつて世界に覇を唱えた“龍族”の末裔にして、基礎的身体能力から“龍気”と呼ばれる強化手法まで確立している“龍人”の長。
正面戦闘ならば、“白金”級冒険者と同等か、状況次第であれば勝るであろう実力を誇るオンを相手にして左腕と左脚も満足に使えない己では不利だと万人が生存を諦めるであろう。
膨れ上がる殺気が形を成して襲い掛かる錯覚すら伴う緊張感に、かすり傷一つで致命傷になりえるであろう絶望的な状況。
援軍は期待できない。
アナスタシアは言うまでもなく、ホロウや、彼女の友人であるテリア嬢もまたオンを相手にすれば力不足が否めない。
だが、それはオンにも適応できる。
強すぎるのだ、彼女は。
外見や実年齢を度外視したオンの強さは、他の“龍人”の追随を許さない。
それは、つまり邑人がオンの加勢に入ろうものならば、却って邪魔になってしまうのだ。
前提として、互いに助力はない。
けれども、彼我の戦力差は依然として己が圧倒的に不利。
まあ、そう見えるように道化を演じてきた甲斐もあったとみるべきであろう。
“龍族”が“龍気”を生み出した経緯について、改めておさらいしよう。
うん万年前の世界で“魔族”と人間種はそれぞれ、【魔術】と【権能】を生み出して長所を伸ばしつつ短所を潰すように進化していた。
けれども、“龍族”は弱点らしい弱点も、特筆すべき長所もまたなかった。
このままでは“魔族”や人間種に生存競争で負けると察した『龍皇将軍』が腐心した結果、苦肉の策同然に生み出されたのが“龍気”なのだ。
同時に『龍皇将軍』の苦悩は、現代を生きる“龍人”には“龍気”を使いこなせないという点に欠点を抱えている。
“龍気”とは即ち、五体満足で巨体を維持していた“龍族”であるから真価を発揮したのだ。
人間と変わらぬ上背に多少の肉体強化を施したところで、巨体を強化していた相手に勝てるように【権能】をその身に宿せる人間種に勝利を得られるはずもない。
例え、四肢の半分が機能不全に陥っていたとしても、結末は変わらないのだ。
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「それでいいんだよ、ホロウ。僕も、君と別れるなんて御免被りたいところさ」
その言葉が耳朶を打った刹那に、無意識に涙が頬を伝っていた。
アナスタシアは言葉を尽くした。
商人ならば幾ら親密な相手であっても、打ち明けるには抵抗のある本心を包み隠さずに口にしてぶつけた。
だが、相手はあの屁理屈も理屈だとして正当性を訴えるような、性根の歪んだ男だ。
未だに本名すら明かしていないような不義理な男だ。
無論、それだけではないと分かっている。
ドルからの脱出に手を貸した時も、ロバートを討ち果たした時も、緻密で大胆な計画と突飛でいて理にかなった謀略を披露した時も。
目的の達成と、アナスタシアやホロウの身の安全を両立させて成し遂げた。
最後には意志を汲み取ってくれる人間だと理解していた。
だが、そうだとしても…………。
「い、一体…………何が、起きているの?」
ぽつりと思わず零してしまった言葉が全てを物語っている。
アナスタシアのみならず、ホロウも、友人と思われる少女も、邑人でさえも目を見開いて動揺を隠せずにいる。
いいや、実際に翻弄されているオンであっても、焦燥に包まれているのだと手に取るように分かる。
つい数分前まで、アナスタシアには彼が追い詰められていると思っていた。
事実、人質として軟禁された時点で、アナスタシアは生存を半ば諦めていたと言ってもいい。
しかし、自身の命を天秤にかけてもホロウの決断を後押ししたいと訴えた本心に従って、気が付いた時には叫んでいた。
勿論、オンの怒気に触れて何て軽率な言動に走ったのだろうかと足元が瓦礫するような後悔と、他にも幾らでも手があったのではないかと自問する思考が重なっていた。
それでも、危機的な状況を打開する術は残されていないのだと思い至り、発狂しそうにもなった。
いい年をした女がはしたないと思うけれど、あの時は本当に絶望したのだ。
ホロウはアナスタシアの慟哭を聞いて、選んでくれた。
また、再び、ホロウと言葉を交わせるのだと歓喜していたのだ。
そんな都合のいい妄想を、完膚なきまでに叩き割ったのが、オンより溢れ出た絡みつくような殺気であった。
身の丈を優に超える“魔獣”に、それも腹をすかした凶暴な獣に、睨まれたように全身が硬直してしまった。
生命が脅かされるような恐怖と対峙して、初めて自身の脆弱性に気が付いた。
アナスタシア=メアリには生き延びる術がないのだと直感して、それでも悔悟すら生じ得ない圧迫感の中でこと切れる瞬間を待つだけ。
「流石は今代最強の“龍人”。練度が桁違いだ。けれども、悲しいかな。君程度の“龍気”では僕を凌駕するにはまるで足りない」
瞬きの次には命はない。
そう思っていたアナスタシアの予想は、見事に人を弄ぶような存在である『悪人』によって木端微塵に砕かれたのだ。
城塞都市ドルにてディシェリ傭兵団を闇討ち紛いの奇襲で食い破った時とは状況が違う。
作戦を立案する暇も十分ではなくて、自分やホロウのサポートも受けられない。
敗色濃厚の吶喊しか想像できないであろう絶望的現実であったはずだ。
だというのに、どうして彼はオンを圧倒しているのだろうか。
武や戦とは縁遠いアナスタシアでは、眼前で何が起こっているのか欠片だって理解できない。
二手も三手も計算された足運びや、反撃につながりうるであろう回避方法、相手の虚を突くような攻勢。
見逃したであろう一撃を数えれば枚挙にいとまがない。
つまりは、オンも彼も最高峰の応酬を繰り返していて、彼が終始優勢であると直感してしまう。
きっと、【権能】を用いた攻防なのだろうと憶測できるが、それにしても、異常だ。
“コンスタンティノープルの雪辱を晴らせ”作戦にて彼が編み出した【権能】の戦闘法は斬新で、今でも覚えている。
【運命識士】は“未来”を閲覧できるために、一秒先の“未来”を毎秒脳内に投影させることで完全無欠の回避と反撃が可能になるのだ。
だが、勿論のことながら欠点は存在している。
想像を絶する負担が、どの臓器よりも繊細な脳髄へとかかってしまう。
使用限界としてはたかが数分。
だが…………オンの暴風が如き猛攻を既に十分余りに渡って凌いでいるのだ。
突拍子もなくて、常人が思いもよらない帰結へと至る彼だからこそ、何かしらの絡繰りがあるのだと察せられえる。
けれども、アナスタシアには一端すら掴むことができない。
口惜しさと、未だ立ち直れない衝撃のおかげで啞然として一連の攻防を眺めるしかない。
せめて、彼がこれ以上の傷を負うことなく勝利できるように祈るしか、ないのだ。
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「それでいいんだよ、ホロウ。僕も、君と別れるなんて御免被りたいところさ」
その言葉は、まるで波紋のようにホロウの心中へと染み渡った。
あの時、ホロウが聞いたのはアナスタシアの言葉だけで、その後の『悪人』の返答までは聞けなかった。
顔を覆ってしまいたくなる程に、あの時の自分は平静ではなかったのだ。
まさか、アナスタシアがホロウへと“愛”をもって接していたなんて予想だにしていないかったから。
だが、『悪人』までもがホロウという人間を“感情”を通して受け入れているのかと疑問を呈するならば、断固として否と思う。
やもすると、商人たるアナスタシアよりも合理主義に傾倒しているのではないかとすら思える『悪人』が、彼女の言葉を受けても変わらないと断じたのだ。
それでも、一縷の希望を捨てきれはしなかった。
もしかすると、ひょっとすると、彼もアナスタシアと同じ気持ちなのではないか、と。
乏しく、風前の灯火が如く風が吹けば散ってしまいそうになる妄想だ。
まさか、実現するなんて思わなかった。
いいや、『悪人』の心中のみならず、オンたち邑人が強硬手段に乗り出すことすらホロウの平常心をかき乱す結果となった。
『悪人』が如何に思っているかは無関係で、ホロウの解答一つをもってして二人の命は裁定される。
何の策略もなく人質などという立場に甘んじている『悪人』に作戦があるのか? などの疑問は即座に霧散した。
『悪人』ならば、人質になる前に何らかの手を打つ男だから。
けれど、今、理解できた。
作戦など必要なかったのだ。
「流石は今代最強の“龍人”。練度が桁違いだ。けれども、悲しいかな。君程度の“龍気”では僕を凌駕するにはまるで足りない」
慢心を訂正せざるを得ない焦燥感と身を削るような圧力に歯を食いしばっているオンが不憫に感じるほどの隔絶がそこにはあった。
『悪人』には謀略も、策略もない。
迎え撃つだけの力があるから。
『悪人』の言葉に噓偽りはない。
それはオンもまた理解しているだろう。
言葉の通り、オンの“龍気”では『悪人』の“龍気”を崩すことはできない。
この際、どうして『悪人』が“龍気”を使えるのか、なんて疑念は放っておく…………彼のことだから、何かしら詐欺でも用いたのだろう。
ロバートとの死闘では使えなかった“龍気”を、現代においては右に出る者はいないオンの眼前で使いこなしている。
ホロウとてテリアとただ談笑していたわけではない。
“龍気”のより効率的な使い方を教授し、引き換えに隠密の術を教えた。
故にこそ、『悪人』の“龍気”が如何に異常で、現実離れしているのかよく分かる。
所詮は肉体強化の技法とばかりに収めていたが…………認識を改めざるを得ない。
物理攻撃だけではなく、“龍気”の内包された打撃ですら、ごく微量の“龍気”で受け流している。
まるで煙に拳を振るっているような、濃霧の中で掴みどころない紙を裂くような、圧巻の演武を見せられているような感覚。
「ま、さか…………“龍皇烈気”?」
「何だ、『悪人』の妙技をテリアは知っているのか?」
「ぇ……? 悪い人なの、あの人。ホロウちゃんのために頑張ってるいいお兄さんだと思うけど~?」
「や、やめてくれっ! お兄さんだと……? 悪寒が収まらないし、想像するだけで吐き気を催す」
「え、えぇ…………? じ、じゃあ、あのお兄さんは何で…………?」
「そんなもの、吾が知りたい……!」
もはや、ホロウには『悪人』という人間性が分からなくなってしまった。
出会った当初は合理主義の冷徹漢とばかり思っていたが、今となっては“愛”なんていう曖昧な概念のために命を張っている人情主義者と取れる。
テリアのように、『悪人』を奴の手のひらの上でなく俯瞰できる外部から認識すると善人に映るのだろうが。
襲撃時も、ドル脱出時も、ロバート決戦時も、いついかなる時だって『悪人』の絵図の中で踊らされてみると途端に恐怖を感じてしまう。
そんな本能が理解を拒む存在は、一体どうしてホロウを仲間として引き留めるような言動を選んだのか。
どうして、左脚を切断されるような扱いを許容して、ホロウからの言葉を待ったのか。
眼前で繰り広げられる一方的な戦闘…………いや、戦闘などというには烏滸がましい児戯を見る限り、『悪人』はいつでも反撃が可能だったと思う。
ならば、人質とされた時点で反旗を翻してもよかったはずだ。
なにも、甚振られて侮蔑を与えられる立場を受け入れる必要などなかったはずなのだ。
やはり、分からない。
彼が、分からなくなってしまった。
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「それでいいんだよ、ホロウ。ボクも、君と別れるなんて御免被りたいところさ」
本心だ。
ようやく、ようやく口にして伝えれた。
驚愕に目を丸くして微動だにしないホロウの様子は、思わず笑みがこぼれてしまいそうだ。
アナスタシアの言葉と、己の願いは同一。
故に、激昂のままに殺気を隠すことなく襲い掛かってくるオンさえいなければ、このまま平穏に邑を脱出できたというのに。
やはり、中途半端な強者ほど厄介なものはない。
邑人程度ならば、“龍気”を零せば道を開けるであろうが、オンならば己に万に一つも勝利できると思ってしまうのだ。
頬を掠める拳の動きが酷く緩慢に視える。
視界の隅々で多様な感情を露にする人々の姿が次々と移り変わる。
それにしても、老齢だというのに見くびれない実力だ。
だが、体感時間二百四十時間余り、【楽園】内にて億を超える死を乗り越えて経験値として蓄積した“龍気”の前には一度たりとも死に直面していない者の力など到底敵うはずもない。
【運命識士】第二段階“我域顕現”──【楽園】。
領域内と領域外では十倍の時間の齟齬が生まれる環境下で、過去の英雄や超生物らを投影し、己が手で屠る。
【運命識士】と【楽園】が両立して初めて可能となる一種の埒外の裏技だ。
全盛期のロバート=クライブに始まり、剣術の始祖、億を超える軍勢、“魔獣”の群れ、果ては、『龍皇将軍』アリアオベリアすらも己は幾度の死を積み上げて辛勝を掴んできた。
【楽園】の利点は死を克服している点にあるが…………地獄すら生温いと感じられた経験だ。
なにせ、【楽園】に投影した相手は何も懇切丁寧に講釈を垂れてくれるわけではない。
ただひたすらに、殺意を滾らせて己の命だけを狙ってくるのだ。
段階的に強度を上げているからといって、必ずしも次のステージで最初から食い下がれるなんて夢物語だと身に叩き込まれた。
『龍皇将軍』と対面した時など、十メートルは優に超える巨体だというのに残像を残して踏みつぶされた
時の絶望と言えば、こう、なんていうのだろうか…………ぷちゃりと己の身体が潰れたトマトのような奇妙な音を聞かされたのだ。
先ず、目で追うところから。
二百回トマトにされて、ようやく回避ができるようになったら火を噴くわ、より巨大になるわ、大暴れするわ。
六百回に渡って全てに対処できるようになれば、“龍気”を使い始めてトマトなんて羨望の眼差しで見れる程に悲惨な死を繰り返して…………うん、もはや思い出したくもない円環だったさ。
その成果として、己の求める力は手に入った。
ジャスティ・レイヴ流に始まる三大剣術も、対大人数のノウハウも、“龍気”の使い方も、【魔法】の原理すら理解した。
まあ、気の遠くなるような試行錯誤の報酬だと思えば狂喜乱舞で受け取ろう。
鍛錬に費やした時間は大した問題ではない。
その過程における生命の危機にこそ、己が誇れる唯一の点だろう。
温室育ちの己が、アナスタシアを、ホロウを護るための力を得るに躊躇などしていられない。
兎にも角にも、文字通り死に物狂いで手に入れた力の真価を発揮する場が、こうも早く現れるとは予想していなかったが。
あまり時間をかけるものでもない上に、とっとと終わらせてホロウと言葉を交わしたい。
一方的な宣言ではなく、互いのリズムで、尊重できるような会話を。
「チェック・メイトだ、オン。ホロウは覚悟を示した。アナスタシアは理想を叫んだ。テリア嬢は決別した。君では、ボクたちの望みを阻害するにしては力不足だ」
焦りが身を滅ぼすとは言い当て妙で、動きが大雑把に退化したオンを打倒するなど赤子の手をひねるより安易だ。
“龍気”を込めた掌底を、背後に回って打ち付けるだけで行動不能にする。
「…………………貴様、どこで“龍皇烈気”を──?」
「テリア嬢も言っていたけれどね。そんな大層な代物ではないよ。“龍気”と“霊気”をいい感じに配分して固めただけさ。ボクでは、彼みたいに卓越した“龍気”は使えないしね。創意工夫さ」
「……? 貴様、何を言って…………」
「こちらの都合さ。『龍皇将軍』の強さには脱帽したってね」
【楽園】で相見えたアリアオベリアの使用した“龍気”は“龍皇烈気”と称される一級の代物だ。
ただの“龍気”の上位互換と侮るなかれ。
打撃は通らず、刃は弾かれ、風圧を剣戟と同等の切れ味に昇華させる最早思考を放棄したくなる出鱈目だ。
対抗するために編み出した手法こそ、“龍霊裂帛”と名付けた“龍皇烈気”の紛い物だが…………使いどころがあって一安心だ。
とはいえ、この世界で彼以外に使用できる者は、彼女ならばあるいは…………いいやたらればなど詮無きこと。
さて、思考が脱線したようだ。
「さて、改めて邑長オン。ホロウの言葉は聞いたはずだ。彼女が“龍人”であるかはこの際、置いておいて…………邑には永住しないとのことだ。見苦しく反抗したようだが、君では、君たち“龍人”ではボク一人にすら勝てない」
「何が言いたい…………!」
「つまり、君たちにはホロウの自由を阻害できない。ボクたちは早々に出立する」
歯を噛みしめて、拳を振るって怒りを発散させるオンの様相は、悔悟がよく伝わってくる。
“龍人”の願いも理解はできる。
人間による迫害を受けて瞬く間にその絶対数を減らした“龍人”には、ホロウのような存在は救いになるだろう。
だが、ホロウには自由意志がある。
“龍人”の下らない逆恨みの道具になど成り下がる必要は、ない。
「ホロウは君たちの鬱憤を晴らす便利な玩具じゃない。君たちが人間に何を思おうと自由だが…………せめて、君たち自身で行動して始めて、それに意味があるんじゃないか?」
返答など期待していない。
そういうものだと己は識っているから。
薄情だと思われるだろうが、“龍人”に対して己が手を差し伸べることはない。
そもそも、幾ら力を得たとしても己の手の届く範囲は限られている。
天地がひっくり返っても護りたいと思えた人を放り出してまで、彼ら彼女らを救ってやるだけの義理もない。
けれども、もしかすると、“龍人”が最初の一歩を踏み出すことができたのであれば…………仮定の話はやめよう。
“未来”など一寸先は闇に等しく、確定している事象は絶無なのだから。
己はホロウを選んで、“龍人”を切り捨てた。
現実を言葉にするとそうなるが…………穿ちすぎたか。
ただし、勝利に違いない。
だが、夜明けの兆しと消し炭へとなり果てた篝火の残骸に囲まれて、消沈している“龍人”たちの姿には後ろ髪を引かれて仕方がなかった。




