11. 『悪人』…………いいや、『極悪人』だ
密林、森林。
どちらかというと、どちらでもない。
湿気の籠った空間でもなく、しかして、寒冷な大地でもない。
なんとも不可思議な緑の監獄。
それが、アデラ・ジェーン山脈へと足を踏み入れたホロウの偽らざる感想であった。
既に山脈を東の都市目指して三日ほど渡り歩いているが、変わり映えのしない周囲の景色に進むべき道が正しいのか不安が首をもたげていた。
しかし、事前にホロウが“コンスタンティノープルの雪辱を晴らせ”とかいうふざけた銘の打たれた作戦で奪取した物資の一つであるコンパスは違わず東を示している。
一日中、アナスタシアと交代で御者台で見渡しているが、鬱蒼としたアデラの山では気分もまた閉ざされてしまう。
そのせいもあって、アナスタシアの間で交わされる言葉は少ない。
いいや、要因は気分を下げる密林だけではない。
彼女が都市での生活に慣れていた、という側面もあるだろう。
商会代表であった彼女は副代表とやらに裏切られて初めて、血を這うような過酷な生活に身をやつしたのだ。
ホロウのように空腹を紛らわせる術も知らず、決して快適とは言い難い寝床で短時間の睡眠を確保する手法も、いつどこから脅威がふりかかるかも知らない暗澹も経験にはないのだ。
けれども、見るからに衰弱はしていない。
後一押しで倒れてしまうだろうと見積もった状態で、それでも、緊張の糸が途切れないのだ。
商会代表として鍛えた胆力か、それとも生来の忍耐力なのか、どちらにせよ夜の見張りや経路の確保などホロウと遜色ない程度に役割をこなしている。
さて、既に日没を過ぎて四日目の行軍が終わったのだが……本来ならば率先して主導しなければならない男の存在を忘れてはならない。
城塞都市ドルからの脱出が必要とされるアナスタシアとホロウを繋ぎ止めて、二級傭兵の物量包囲から見事脱出経路を確保した『悪人』を。
適材適所、神算鬼謀。
傭兵団の団長たる元“黒鉄”級冒険者を見事に手玉に取り、傭兵団の機能を大幅に損なわせた上で組織の頭を潰してドルからの脱出へと貢献した奴。
常識外れの【権能】を駆使して、敵の【権能】どころか味方の──アナスタシアの【権能】、その応用的な運用すら看破して盤面を支配した賢しき者の権化。
初対面では無機質で生に固執していた狂気の男、それが第一印象で二度と会いたくないと思った。
二度目の邂逅では、胸の裡が沸々と湧き上がる理由のわからない嫌悪感に自分でも驚いた。
飄々とした軽薄な態度、白濁色に濁った瞳、人を小馬鹿にしたような口調、応仰な反応。
何から何までが受け入れ難く、同時に敵に回してはならない得体の知れない生物。
漠然とした印象から毛嫌いしていたホロウであったが、その懸念は的中することになる。
ドルからの脱出に際して、比較的容易な役割を与えられたホロウやアナスタシアとは異なり、首魁であるロバートに直接時間稼ぎを行う最も危険な役を引き受けたのだ。
その結果として、元より不自由そうだった左腕を失って、水面下の攻防の果てに右目を代償に潰した。
加えて、【権能】の超過使用による反動受領は内臓機能に致命的なダメージを与えていた。
アナスタシアの口車に乗って方針が決まった途端に意識を手放して、三日余り目覚めない体たらくを見るに、相当な無理をしていたことだろう。
…………正直に言えば、感謝はしている。
ホロウ自身の戦闘能力は『悪人』を遥かに凌ぐだろう。
少なくとも、十戦中十戦は確勝できる。
しかし、ロバート相手には分が悪い。
なにせ、彼は元“黒鉄”級冒険者で、ラ・カール・レイヴ流の達人剣士だ。
【権能】を完全稼働させても勝利は望み薄であった。
そう、あの『悪人』だからこそ辛勝できたのだ。
だが、何かが小骨のように刺さっている。
なにも、自分一人でロバートへ挑む必要性などなかっただろう。
ホロウの潜伏能力が物資の奪取に有利ならば、アナスタシアを回収した後で共闘すれば良かったのではないか。
そうすれば、『悪人』は左腕も、右眼も失わずに済んだはずだ。
「……とっとと起きろよ、『悪人』。死ぬなら、せめて吾の感謝を受け取って死ね」
パチパチと爆ぜる火種を尻目に、見張りを引き継いだホロウは馬車の中で惰眠を貪る男へと悪態を吐く。
気にいらないし、不愉快。
だが、覚悟は知れた。
口先だけの慢心野郎などではない。
腐るほど見てきた汚泥が如き同業者ではない。
かといって、アナスタシアのような気品も信念もない。
けれども、仲間を危険に晒すことはなく、何を差し出しても目的を遂行させる尋常ではない覚悟だけは認められる。
だから、せめて後一度でいいから、あの減らず口を聞いてもいいかも知れないと──
「…………………………死にたくは、ないけれど君の感謝は貴重だからね。素直に受け取るとしよう」
「…………?」
「おや、狐に摘まれたような面白い表情をするね。それが君の感謝なのかな?」
「……、…………ッ!? き、貴様……ッ! 今、いまの……聞いてッ!?」
「それは、勿論。どうやら随分と眠っていたようだけれど、あれから何日経ったんだい?」
やはり、嫌いだ。
大っ嫌いだ。
その澄まし顔も、おどけたようた口調も、人の心配を軽く扱う態度も。
何よりも、彼が起きて。
ホッと安堵した自分が、気に入らない。
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彼が起きた。
ドルでの死闘から四日間にわたって目覚めることがなかった彼が。
勿論、生きている点には疑問がなかった。
酷く衰弱して、いつ息を引き取るかわからなかったが。
アデラ・ジェーン山脈へと入ってから、安全が確かめられた段階で彼の治療に取り掛かったが。
外傷は勿論のこと、身体内部の機能を大幅に損なっていた。
左腕と右眼の欠損。
大量出血による高熱。
そんなものは些事だと考慮できぬ程に、内臓が傷ついていたのだ。
それも、ロバートとの死闘で負った負傷ではない。
恐らくは、【権能】の多重行使による代償行為。
アナスタシアとて【権能】について多くを知っている訳ではない。
しかし、生まれてこの方裏稼業で生き残ってきましたっ! と言うホロウや、何故か常識の大部分が欠落している彼と比べると熟知している。
【権能】とは無尽蔵の神秘ではない。
【権能】は魂の外部構造だ。
つまり、【権能】の行使には燃料として魂を献上している。
無論の前提として少量の行使ならば問題がない。
例えば、心肺機能を行使して全力疾走したところで数メートルならば当然のように完結するだろう。
だが、数百キロの距離を全力疾走すれば、いずれどこかで限界が来る。
個人差があるとはいえ、限界が到達しても身体の警鐘に耳を傾けず継続すれば、身体の不調に見舞われて最後には意識を手放して倒れるだろう。
それと、同じだ。
多少の行使ならばいい。
しかし、先の作戦でアナスタシアが行使したように、【権能】の長時間使用や乱用、応用的運用においては多くの懸念材料が転がっている。
アナスタシアの場合は、単体の生命体に対して作用する【悪因叛逆】をロバートの意識を転移しうる団員数人に対して使用したがために、軽度の頭痛に見舞われた。
彼のそれは常軌を逸していたが。
一体如何なる頻度と無茶な運用をしたのか、もはや推測の閾値を超越している。
知らなかったとは言わせない。
彼の【権能】は全知の代物。
そして、短い付き合いながらも病的なまでの彼の慎重性は理解しているつもりだ。
彼は知っていて、想像を絶する苦痛に耐えて涼しそうな表情でロバートと死闘を演じながら、【権能】を行使していたのだ。
嘆息せざるを得ない胆力に、規格外の魂の総量。
少なくとも、常人が同じように行使すれば廃人待ったなしだ。
つまり、諸々の外傷や、内的損傷を考慮に入れると、彼の生存確率は限りなく低迷していると断言できた。
何故だか、言動とは裏腹にホロウは彼の目覚めを待望しているように見えるが、アナスタシアは絶望的であると目を伏せた。
かといって、落胆しなかったかと問われると否と返答できる。
ほんの表面上の生い立ちを話して目の色が変わった奇怪な男であったが、ホロウの評する通りの『悪人』には思えなかった。
確かに、【権能】を使用した前後では……そう、性格が変貌した。
しかし、それは彼の性根が、人格が捩れたとイコールではない。
【権能】と魂は相互関係にあって、【権能】が魂に介入して人格を瓦解させるなんてあるわけがない……はずだ。
事実、あの心奥を悟らせない不気味な雰囲気は健在だった。
けれども、抜け殻のように息をしていただけの姿から、生きる目的を見つけた活力に満ち溢れた変化は前向きに受け止めて良いものだと思えた。
だが、現実的に考えると二度とあの不気味で不愉快な表情をした男を視界に収めることはないと諦観していた。
まさか、自分がぐっすりと眠っていた最中にひょっこりと起きて交代性の見張りを務めたと、朝一の寝ぼけ眼で見て、覚醒しきれない脳で聞いても処理できないだろう。
起き抜けの衝撃はその後も尾を引いて、一日中気が気でなかった。
それでも、彼の軽口に憤慨したホロウが突っかかる様相は自然と口角が上がってしまって。
気がついた時には、鬱々とした雰囲気はまるで嵐の去った後の快晴が如く消え去っていた。
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どうやら、生き残ったらしい。
目が覚めると漆黒に包まれた懐かしい緑の香りが鼻腔をくすぐり、爆ぜる篝火の音を聞きながら、馬車の天幕が視界に飛び込んできた。
最後の記憶はロバートの命を刈り取って、ホロウに叱責されて、アナスタシアの援軍もあって改めて彼女の協力を取り付けた所で途絶えている。
どちらにせよ、ドルからの脱出──“コンスタンティノープルの…………”何だっけか、忘れてしまった。少なくとも状況にそぐわないふざけた名前だった──は完勝に終わったわけだ。
全身の痛みは引きつつあるために、ホロウを揶揄いつつ、アナスタシアとの談笑……という名の事情聴取を受けて二日余りアデラ・ジェーン山脈を進んでいく。
快調とまではいかないが、それでも激しい運動をしない上に、霊力を用いた自然回復能力の促進を利用すれば傷も塞がりつつある。
けれど、やはり生の実感が湧いている現状はとても気分がいい。
ドルに滞在していた時は、密林でのサバイバルから奴隷の身分を偽って、ようやく手に入れた文明人らしい生活だった。
まあ、それも二日と経たずに消し炭と化したのだが……はて、アリーは如何に過ごしているのだろうか。
息災であればいいな、と絶賛逃避行中の己がどの口携えて叩いているんだか。
さて、思考が逸れた。
あと数日もあれば帝国領の東側にたどり着くと羅針盤と帝国の全覧図を駆使して、ホロウが得意げに説明してくれた。
あまりに自信満々な表情であったがために、思わずぐしゃぐしゃと頭を撫でてみると、それはもう見事に顎下へと一撃をもらってしまった。
いや、いけないな。
聞くところによれば三日も眠っていたようだから、思考能力も未だ鈍いようだ。
改めて、現状を整理してみよう。
アデラ・ジェーン山脈へと入って五日目の深夜、馬を休ませつつ、馬車の荷台で天幕に守られながらぐっすりと入眠している二人のために、見張り番の役割についている『悪人』。
それがボクで、アナスタシアの理想を手助けするために、ホロウと契約を結んで帝国東領土であるリヴァチェスター領もしくはロンディーン領へと逃避行を行なっている。
そして、超えるべき障害であるディシェリ傭兵団の包囲を突破した。
代償として、己は機能不全にあった左腕と、一世一代の隙を生み出すために右眼を捧げたと。
ああ、記憶の混濁もなく、(既知とはいえ)生存の歓喜も引いたようだ。
ボクたちは勝利して、生き残ったのだ。
いいや、それは正しくはない。
【運命識士】を閲覧していた限り、ボクという情報はロバートとの謀戦後も変わらず顕在であった。
故に、ボクがあの場で、あの時間軸で絶命するなんてことにはならなかった。
それも偏に、【運命識士】を酷使してボクの生存確率を一定値以上まで引き上げた成果だろう。
所謂、乱数調整に等しい。
ロバート率いるディシェリ傭兵団と矛を構えるにあたって、超えるべき障害は多くあった。
けれども、手元にある札で十分対処が可能だった。
先ずは、ロバートの【権能】だが、アナスタシアの悪意へと干渉する【権能】を応用して思考を一時的でにも奪ってしまえば完封できる。
そのために、彼女に多大なる負担をかけたようで、目覚めてすぐに……勿論、ホロウと舌戦を繰り広げた後で彼女に平謝りをした。
正直に、相当な無理を強いている自覚はあったので土下座の覚悟をしていたが、寛大な彼女は二つ返事で許してくれた。
…………寝ぼけ眼で心ここに在らずだったから、とりあえず頷いておいただけかもしれないが。
それでも、傭兵団による人海戦術を瓦解させる手段については後腐れなく終わらせた。
問題は、全てボクに収束されるだろう。
ロバートとの正面戦闘は避けられなかった。
幾度となく【運命識士】を使用して、あらゆる運命軸の事象を覗いてみたが、穏便に済ませられる路は存在し得なかった。
故に、如何に彼の戦闘能力を下げるかに全霊を賭けてみたが、紙一重の結果に終わった。
やはり、己に足りないものは戦闘能力だろう。
いや、わかっている。
所詮は温室育ちの日本人であるボクが、生来命のやり取りを繰り返してきたホロウや、ロバートのように動けるわけがない。
もし、十分な力を持てたとしても、上手く利用はできなかっただろう。
そう、小学生に拳銃を与えても、発報するしか運用方法を見出せない。
弾倉が空になれば、弾詰りに見舞われたら、きっとすぐに斃れる。
要は、力の性質を理解することだ。
拳銃だって立派な鈍器となり得るし、同じ弾薬を保有している者から奪い取ることだって選択肢には存在する。
現状のボクに残された力とは、即ち、【運命識士】だ。
密林を進む道すがら、アナスタシアに解説を享受すると【権能】とは魂の外殻機能だと言う。
そして、無駄に使用すれば魂が耐えきれんない、とも。
けれども、あれほどに【権能】を酷使したボクが健在であるために、正しいとも言い切れないと。
ああ、確かにその通りなのだろう。
ボクは【権能】を呼吸するかの如く利用した。
ロバートを相手にするに際して、作戦を構築するために。
戦闘が避けられないと知って、ラ・カール・レイヴ流の動きを見切るために脳内で【運命識士】によって生み出された達人相手に戦闘予測を行なって。
作戦実行中も毎秒単位で“未来”を予測して。
その代償が内蔵の破壊で、三日間の昏睡の正体だと。
振り返ると、随分と無茶をしたものだ。
ホロウが後先を考えない己に憤慨したのも、アナスタシアが眉を顰めて言外に攻めたのも、今となっては生き急いだ愚者に対する不信感の表れだったのだろう。
この先も、きっと受領してもらうこととなるだろうが。
申し訳ないと罪悪感は感じているが、だからと言って、安全策ばかりをとってもいられない。
ハギンズの妨害が如何なるものか断定できない上に、ロバートのような“黒鉄”級冒険者と今後相間見えない可能性も皆無ではない。
そのためには、力が必要なのだ。
ロバートの最後の一合。
本来ならば、左腕を犠牲にするだけでは防ぎきれなかった。
左半身に霊力を集中させて不可視の鎧が如く間隙を突く手筈であった。
だが、そうはならなかった。
何故か? ああ、ロバートにとっては不運で、ボクにとっては予期しない幸運。
【権能】が進化したのだ。
曰く、“実存昇華”。
【権能】には四つの位階があって、何かの拍子に枷が外れる場合があるという。
つまり、【運命識士】はロバートとの戦闘中に“ 実存昇華”を成し遂げて第二段階を開通させたのだ。
…………実感はないけれどね。
「【運命識士】第二段階──“我域顕現”」
ポツリと【権能】と、その方向性を指定する手順をトリガーにして正しく【権能】は実態を発揮できる。
脳内のイメージをそのままに、望み得る地点にそれは展開された。
神々しい程の透明度を誇る霊力と【権能】、魂の混合物。
眼前には直径十メートルはあろうか、正六面体が現れた。
途端に流れ込んでくる【運命識士】が伝える“我域顕現”の基本情報。
正六面体の内部では、己が支配者であって裁定者である。
己が敵対者と認めた生命体、無機物、概念であっても、その本能的機能を省いたありとあらゆる外的機能を排除できる。
つまりは、一度でも正六面体の領域内へと足を踏み入れて、己が敵対者と断定すれば、【権能】も、霊力も一切合切を無為として切り捨てられる。
けれども、己はその全てを利用して蹂躙できると。
そして、何よりも目を張る効力として、ボクの支配領域下で己が命を落とした場合に限って、蘇生が可能なのだ。
敵対者には強力な制限を課せる上に、苦難を乗り越えても己は不死者が如く蘇ることが可能だと。
故に、正六面体が構築する領域を、【楽園】と名付けた。
「アナスタシアも言っていたが、随分と規格外のようだね」
だが、無敵にも思える【楽園】にも明確な弱点がある。
【権能】や霊力の運用を封じたところで、生命体本来の力、即ち暴力で己を虐殺すれば良いのだ。
ロバートのように、獣のように。
だからこそ、己が如何なる力を渇望すれば良いのかが明瞭となるのだ。
「【楽園】は【運命識士】の拡張能力だ。と言うことは、だ。こういうこともできるわけだ」
【楽園】内部へと足を踏み入れると、周囲の情景がうっすらと霧がかかったように曖昧になるだけ。
観察を終えて、視線を正面へと向けると、そこには記憶に違わぬロバート=クライブの姿があった。
いいや、細部は大きく異なる。
先ず、己がドルで打倒した彼よりも若々しく、活力に満ち溢れている。
加えて、ギラギラと絡みつくようで、さっぱりとした殺気を纏っている。
先までは、人の気配などなかった【楽園】に死した人間が、時間を遡行するかの如く存在している。
現実離れした眼前の現象こそ、【運命識士】と【楽園】の迎合が織りなす力を獲得するための手段だ。
【楽園】に【運命識士】の情報を投影させることで、現実にはあり得ない存在の確立が可能となるのだ。
そして、【楽園】の細部は己で設定可能。
【楽園】内の時間経過を外界と比較して、十倍の範囲で緩慢にすることができるのだ。
つまりは、【運命識士】の把握しているありとあらゆる強者を相手に、幾度となく甦れて、果ては十倍の時間に渡って鍛錬が可能となる。
きっと、地獄となること間違いない。
勝てぬ相手に気の遠くなる時間、嬲られ続けるのだから。
だが、確実に力は蓄積されるはずだ。
己には才覚も、力も持ち得ないが、経験ならば得られるのだ。
さて、始めようか。
力を得るための儀式を。




