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第八話:「狂気の代償とさらなる試練」

アルファスとの契約によって、無尽蔵の力を手に入れたレオン。だがその代償として「魂」を捧げなければならない彼は、既に常軌を逸した覚悟と冷酷さを手にしていた。欲望と力への渇望は日に日に強まり、次なる標的を探しながら夜の闇をさまよい歩いていた。


ある夜、レオンは人里離れた小さな集落にたどり着いた。そこは平穏な暮らしを守るための壁に囲まれた人間たちの拠点だったが、異世界の荒れ果てた現状では安全な場所などどこにもない。盗賊や怪物、あるいは同じ人間によって、いつ襲われてもおかしくないという恐怖に怯えながら生活していた。


レオンは、その小さな村で「力の糧」を手に入れることを決めた。彼が村の中に足を踏み入れた瞬間、まるで生気を吸い取るかのような異様な気配が周囲を包み、人々が警戒の目を向け始めた。


「おい、誰だ!こんな夜遅くに何しに来た!」


村の警備をしていた男が警戒しながら問いかけてくる。しかし、レオンはその問いかけに答えることなく、静かに相手を見据えた。彼の瞳に宿る狂気と無慈悲さに、警備の男は一瞬で恐怖に凍りついた。


その瞬間、レオンはアルファスの力を解放し、一気に男に近づくと、一撃で彼の喉元を切り裂いた。男が息絶えると、彼の魂がレオンに吸い込まれていくのを感じた。その快感とともに、レオンの中で新たな力が膨らみ、狂気がさらに深まっていくのを感じた。


「これでまた少し、力が増したな……」


そう呟きながら、レオンは村の中に向かって歩き出した。恐怖に怯える住民たちが見ている中で、彼は一人また一人と命を奪い、アルファスに捧げるべき魂を増やしていった。


それから数日後、レオンが夜の闇の中で眠りにつくと、夢の中にアルファスが現れた。暗黒の空間に響く彼の冷徹な声が、レオンの意識を引き戻すように響いた。


「レオン、我が与えた力をここまで使いこなすとは見事だ。だが、お前はまだ代償の重さを理解していない」


レオンはその言葉に苛立ちを覚えながらも、冷静さを保った。


「代償の重さ?俺はもう数えきれないほどの命を奪っている。これ以上の何が必要なんだ?」


アルファスは冷笑を浮かべ、続けた。


「代償とは命だけにあらず。お前が自らの心を喰い潰し、感情を捨ててゆくたびに、その代償が現れるのだ。お前がかつて知り得た者たちは、お前の意識から消え去り、やがてお前自身も誰かにとってただの怪物に過ぎなくなるだろう」


アルファスの言葉に、レオンは一瞬戸惑いを見せた。しかし、その戸惑いもすぐに消え、代わりに強い覚悟が浮かび上がってきた。


「それで構わない。俺はこの力を使って、全てを支配するために生きるんだ。例え代償がどれほど重くとも、俺は進み続ける」


アルファスは満足げに微笑み、レオンに対して薄く笑みを浮かべた。


「いいだろう。ならばその決意のまま進め、レオン。我が力はお前の中でさらに強くなり、お前自身をさらなる狂気の渦へと導くだろう」


その後、レオンはさらに荒れ果てた世界をさまよい、周囲の存在を力の糧としながら進み続けた。しかし、彼の心は徐々に狂気に染まっていき、時折、自分の意志を制御できなくなることが増えていった。アルファスの力を暴走させるたびに、彼はかつての記憶や情を失い、ただ力への欲望だけが彼を突き動かしていた。


ある時、彼が進む先に大規模な盗賊団が立ち塞がった。彼らは数十人もの戦士を従えており、普通の人間なら到底立ち向かえない規模だった。しかし、レオンは何の恐れも見せず、むしろその戦力を糧として捧げるべく、アルファスの力を解放した。


力が解き放たれると同時に、レオンは暴走状態に陥り、次々と敵を無差別に攻撃し始めた。周囲には鮮血が飛び散り、盗賊団は恐怖に駆られて逃げ惑うも、彼の手からは逃れられなかった。レオンは無意識のうちに彼らの魂を吸収し、さらに力を増していったが、その顔にはもはや理性は残っていなかった。


レオンが暴走を止めたのは、すべての敵を殲滅し尽くした後だった。気が付くと、彼の周りには無数の死体が散乱しており、血の匂いが鼻を刺した。彼の体は異様な疲労感に襲われ、魂を吸収した影響で体中に狂気が満ち溢れているのを感じた。


ふと、レオンの脳裏にアルファスの言葉が浮かんだ。


「代償を払うたびに、お前は大切なものを失っていく」


その言葉が、今更ながら彼の心に重くのしかかる。彼がかつて抱いていた些細な希望や、普通の幸せを追い求めていた日々は、もう遠い過去のものとなっていたのだ。彼はこの力を使うたびに、自らの心を喰い潰し、自分を怪物へと変貌させているのだと感じた。


だが、レオンはその一瞬の弱気を振り払い、拳を握りしめた。


「俺はもう引き返せない。この力と代償を受け入れて進むしかない。そうでなければ、この世界で生き残れないんだ」


彼は深い息をつき、再び歩き出した。この狂気に満ちた世界で、彼がどれほどの力を手にしようとも、その代償がいつか彼を追い詰めることは避けられない。だが、レオンはそれでも進む覚悟を決めていた。


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