第十四話:「さらなる犠牲」
荒廃した大地を歩き続けるレオンは、やがて人間たちの小さな集落にたどり着いた。いくつかの家屋と、怯えた目で彼を見つめる住民たちが目に入る。すでにレオンの放つ闇の気配が住民たちの恐怖を煽っており、子供たちは母親の影に隠れ、老人たちはおずおずと距離をとっていた。
「……おい、あんた、どこから来たんだ?」
集落の中でも若そうな男が恐る恐る声をかけてきた。彼はレオンの異様な雰囲気に戸惑いながらも、集落を守る責任から話しかけたのだろう。だが、レオンは冷たい目で男を見下ろし、ただ一言返した。
「力を得るために……ここにいる」
その言葉に、男は不安げな表情を浮かべ、集落の他の者たちと共に後ずさった。レオンの瞳にはもはや人間らしい温かさも優しさも見えない。ただ冷酷で無慈悲な殺意が宿っている。
その夜、レオンが眠りにつくと、例の暗闇の空間に引き込まれ、デカラビアが彼を待っていた。
「レオンよ、お前が手にした力にはまだ限界がある。それ以上の力を求めるのならば、さらなる犠牲が必要だ」
デカラビアの声は冷たくも甘美な響きを持っており、レオンの心に強く染み渡った。
「代償が必要なのは分かっている。だが、どれだけ犠牲を払えばいいんだ?」
レオンの問いに、デカラビアは静かに笑みを浮かべた。「それは、貴様の決断次第だ。力を求めるほどに代償は大きくなる。それを承知で貴様はここまで来たのだろう?」
レオンは一瞬だけ迷いを見せたが、すぐに心を決めた。もう戻ることはできないと感じていたし、今さら何を犠牲にしようとも失うものはないと思っていた。
「俺にさらなる力を与えろ。どんな代償であろうと構わない」
その後、レオンは目を覚まし、暗闇の中で決意を新たにした。そして再び集落に戻り、住民たちに向かって冷徹な視線を向ける。
「お前たちの命が、俺に必要なんだ」
レオンのその言葉に、住民たちは驚愕の表情を浮かべ、一斉に逃げようとした。だが、彼の圧倒的な闇の力によって、住民たちは次々と倒れていく。子供も、大人も、老人も、彼の前では等しくただの犠牲でしかなかった。
そして、彼らの魂がデカラビアに捧げられた瞬間、レオンの体に新たな闇の力が流れ込むのを感じた。さらに強大になったその力は、まるで暴走するように彼の内で渦巻き、欲望の炎が激しく燃え上がった。
さらなる力を手に入れたレオンは、かつて感じたことのないほどの強さを体にみなぎらせながら、もはや「なぜ戦っているのか」「何のために力を求めているのか」さえも忘れかけていた。
「これで……やっと……」
彼の言葉は、まるで空虚な祈りのように虚空に消えた。力を得るための犠牲は無限に続くかのようで、彼の心に染みついた闇はもはや彼を開放することはなかった。
次なる犠牲、さらなる敵――彼は無意識のうちに、再び「力」を求め、絶望と破滅の道を歩き続けるのであった。