第十二話:「魂の契約、デカラビアとの出会い」
夜が更け、レオンは密かに心の中で第三の悪魔と契約する覚悟を決めていた。すでにパイモンとアルファスの力を得たことで多くの強敵を倒してきたが、異世界の荒廃した地ではさらに凶悪で強大な存在が立ちはだかる。どれだけ繰り返し死に戻っても抗えない敵が現れるたび、希望と絶望の波が彼の心を蝕んでいた。
冷たい夜風が森を吹き抜ける中、レオンは集中して闇の中に意識を向けた。その時、彼の周りの空間が一瞬にして変わり、まるで底知れぬ闇に飲まれたような気配が漂い始めた。その闇の中から、何もない空間にぽつりと異形の姿が浮かび上がった。翼のようなシルエットと鋭利な目が闇の中で輝き、レオンを見据える。
「ようこそ、我が名はデカラビア。求めるは力か、魂か、それともさらなる破滅か?」
その声は静かながらも底知れぬ威圧感に満ち、レオンの心に直接語りかけるようだった。レオンは何かに引き寄せられるように無言でその姿を見つめ、目を逸らすこともできなかった。
「俺は力を求めている。今よりさらに強大な力が必要だ。」
「代償として貴様は何を捧げる?」デカラビアは微笑むように冷たく言葉を続けた。「知っての通り、最も価値のある代償は魂。だが、貴様の魂ではなく他者の魂でも可能だ」
その言葉にレオンは驚きつつも、心の奥底で強烈な欲望が芽生えるのを感じた。自分が奪った命が力に変わるならば、その犠牲を惜しむ理由はなかった。
「俺が殺した相手の魂で契約を結べるか?」レオンは冷静に問いかけたが、その心はすでに高揚していた。
デカラビアはにやりと冷たく笑い、うっとりとした目でレオンを見た。「人間はなんて愚かで、そして最高の存在だ。貴様のような者が他者の魂を捧げる……それ以上の喜びはない!」
契約を結ぶ決意を固めたレオンは、深い呼吸をして一歩前に進んだ。
「ならば、契約を結ぼう。俺が倒した相手の魂を、お前に捧げる。代償として、さらなる力を得ることを望む」
デカラビアは満足そうにうなずき、冷たい手をレオンに向けて差し出した。「契約は成立だ。貴様に与えるは、さらなる身体強化と圧倒的な力。だが気をつけるがよい……その力を使いすぎれば、貴様自身が飲み込まれる」
契約を終えた瞬間、レオンの体にかつてないほどの力がみなぎった。筋肉が隆起し、闇のエネルギーが渦を巻き、彼の周囲を包み込んだ。今や、彼の存在そのものが圧倒的な恐怖を放ち、闇の中で輝くような力が体中から放出されていた。
「これが……新たな力か……」
レオンは拳を握りしめ、自らの中に宿る圧倒的な力を確かめた。その力は以前のアルファスの力すらも凌駕し、敵の攻撃を容易に無力化できるほどの強度を感じさせた。だが、同時に自らの心の奥に黒い渦がうごめくのも感じていた。
契約を終えたレオンは、新たな力を手に入れたことでかつて恐れていた敵にすら恐怖を感じなくなっていた。もはや彼にとって、この異世界での戦いは生き残りをかけたものではなく、ただ力を示すための行為に過ぎなくなっていた。
「デカラビア……この力で俺はどこまで行けるだろうか?」
「どこまでも。だが、進み続ければ必ず代償は訪れる。貴様の望む終わりがどのようなものであろうと、それは貴様の選択次第だ」
レオンは無言でデカラビアの言葉を聞き流し、再び夜の闇へと歩き出した。その心には、かつての仲間や友の影も、後悔の念もなかった。ただひたすらに、力への渇望と欲望だけが渦巻いていた。