第一話:「絶望の始まり」
レオンが目を覚ましたとき、目の前には見たこともない荒れ果てた大地が広がっていた。破壊された建物がいくつも立ち並び、空は黒く染まり、どこまでも不気味な静寂が続いている。彼が普段過ごしている世界とは明らかに違う。「ここは……どこ?」レオンは頭を抱え、目の前の景色が信じられなかった。
「家に帰りたい……」
一言呟いても、返ってくるのは風の音だけだった。無意識に後ずさりをするが、足元に何かが触れた。振り返ると、そこには干からびた動物の死体があった。荒廃した世界の無慈悲な現実が、レオンの心を急激に冷やしていく。
「早く、ここから逃げないと……!」
彼は本能に突き動かされるように走り出した。どこへ向かうべきかもわからないまま、ただ足を動かし続ける。途中でちらりと視界に映ったものがあり、足を止めた。遠くに立つ廃墟の陰から、何かがこちらをじっと見つめているように感じたからだ。レオンは思わず身を隠し、息を潜めて様子を伺った。
影の中から姿を現したのは、奇怪な姿の“何か”だった。巨大な牙を持ち、四足で歩くその姿は、かつて見たことのある地球上の生き物とは全く異なっていた。「……モンスター?」レオンの心は恐怖でいっぱいになったが、その場で動けずにいた。
だが、そのときだった。
背後から聞こえる鈍い音。振り返ると、別のモンスターが今にも襲いかかろうと牙を剥いている。その瞬間、レオンの脳裏にただ一つの考えが浮かんだ。「逃げろ!」彼は必死で走り出したが、足がもつれ、石につまずいて転倒してしまう。
モンスターがすぐ目の前に迫る。絶体絶命の状況で、レオンの心は叫んでいた。「助けて……!」その瞬間、彼の目に青白い光が走り、何かがレオンの身体を包み込むように浮かび上がった。そして次の瞬間、彼は全く別の場所に転移していた。
「テレポート……?」自分に何が起こったのかを理解できないまま、レオンは呆然とした。視界に広がるのは先ほどとは異なる場所、朽ちた木々と雑草が生い茂る荒野だった。生き延びた安堵と、この力の正体への驚きが交錯する。
しかし、安心したのも束の間、レオンはこの異世界がただ単なるサバイバルではないことを知ることになる。新たな場所で見つけた集落の跡地には、多くの人々が生き残るために暮らしていた痕跡があったが、今はすでに廃墟と化していた。
「誰もいないのか……?」
その静寂に不気味さを感じながらも、彼は歩き続け、廃墟の中で朽ち果てた装備や食料を見つける。しかし、すぐに自分の無力さを思い知らされる。使い物にならない装備や腐りかけた食糧は、むしろ彼の孤独を深めるだけだった。
「どうやって、生き延びればいいんだ……?」
疲れ果てて崩れた壁に背を預け、彼は膝を抱えて泣き崩れた。慣れない恐怖、孤独、そして無力感が彼の心を押し潰していた。
だが、諦めることはできなかった。彼には、どうしても生き延びなければならない理由があることを思い出した。それは、自分の家族や友人たち、帰るべき日常だった。この異世界から必ず帰り、またあの穏やかな日常に戻る。その強い意志が、彼の心に再び火を灯した。
「絶対に、生き延びるんだ……」
そう心に誓ったレオンは、必死で自分にできることを探し始める。そして、わずかな食料と壊れかけのナイフを手に、再び歩み出した。