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(096) またもやピンチ

◇◇◇ 某大学病院 ◇◇◇

時刻は11時。


予定通り堀北さんの手術が開始された。

別室で1人、オレはモニタ越しに手術を眺めている。

オレに出来ることは、成功を祈るのみ。


どうしても悪いことばかりが頭を駆け巡り

不安が増していく。


オレはモニタの電源を切った。

どうも心臓によろしくない。

結果だけを知ることにした。


♪ピコ


突然、田中の携帯にメールが届く。

PMCの諜報員から。


確認するととんでもない通知がされていた。

金沢宅へ請求書が送られたという。

それは、破損させたドクロの修理代

2000万円だそうだ。

金沢さんは青ざめてるかも知れない。

やばい、なにか対策しないと。


♪ピコ


今度はハルキの携帯にグループLineが届く。

カイの奴、しつこいぞ。


金沢>ドクロ修復代の請求書が来た。

   どうしよう。


通知は金沢さんからだった。

内容を見て驚いた。

こういうことは皆には知らせないと思ってたから。

もしかしたら相当追い込まれてるのかも知れない。


打ち明けてくれてありがとう。

対処し易くなった。

金沢さんが変な気を起こさないようにしないと。


ハル>偽物かも知れないから

   その請求書の写メ送って!


金沢さんは1人ではないと感じてくれたら嬉しい。


♪ピコ


請求書の現物写真がアップされた。


ハル>ありがとう。

   知り合いの知り合いに弁護士が

   いるから相談してみる。

   だから、オレからの連絡がある

   まで行動しないで。


頼むから変な気を起こさないでくれ。

これで少し安心してくれるといいが。


カイ>ハルの言う通り偽物だよ。

   テレビだって金沢さんは悪くないって

   言ってるし。

金沢>請求書に記載されてる

   会社の住所は合ってるよ。


カイ>大丈夫だって。

   その請求書が本物だとしても

   壊したのは運営側なんだから。


いいぞ!カイ。

そのまま続けてくれ。


金沢>それはドクロの首の傷でしょ?

   修復代は頭部の傷って書いてある。

カイ>金沢さんは悪くない。


そうやって会話を続けてくれ。

少しでも安心させてやってくれ。


オレはPMC社へ電話し、

即行動に移すことを決めた。


術後の堀北さんと会話したかったが、

金沢さんが優先だ。


堀北さんの担当医である星屋(ほしや)医師に

緊急の用事ができたことを伝え、

急いで病院を後にする。


◇◇◇ TOKYOギャラリー ◇◇◇


時刻は16時


銀座一等地に5階建ての小さな美術商がある。

そこはTOKYOギャラリーの本社。

オーパーツ展の主催会社であり、金沢さんへ

ドクロの修理代を請求した会社でもある。

その美術商の正面口に1台のタクシーが停車する。

後部座席から降りて来たのは

見た目50代のおじさん、1人のみ。


彼はジュンである。


ホムンクルス (複製体)を田中から

おじさんへと乗り換えていた。


理由は、田中だと直ぐに身元が割れるから。

アーツファクトリとのつながりが知られ、

岩井さんやアイミーに危害がおよぶのを恐れてのこと。


TOKYOギャラリーの1、2階は売り場となっている。

オレは店内へ入るなり、女性店員へドクロ破損事件

について社長と会話がしたいと伝える。

するとあっさり面会が実現することに。

そのまま5階へ上がり社長室へと入る。


「社長を務める八重田(やえだ) 宏一郎(こういちろう)です。

 本日はどういった御用件でしょうか?」


いかつい連中が5,6人居ると思っていたが、

室内には社長1人だけあった。


金沢(かなざわ) (かえで)に請求した

 ドクロの修復代を取り下げて頂きたい。

 という要件です」


「それは、お受けできません。

 彼女に非がないにせよ。落としたのは明白」


破損させたのはお前が押したからだろ。


「修復はタダでは御座いません。

 金沢楓には賠償責任があります。

 弊社と致しましては請求する権利がある」


確かに意図的でないにせよ破損させたのは

金沢さんだ。彼女が支払う義務はある。


「大変失礼ですが、彼女が落とした時、

 ドクロは頭から落下してます。

 ニュースでもはっきりと映ってます」

「えぇ、ですから請求は頭部の部分となります」


頭部にも傷が見つかったとでも言いたいのか。

そう来たか。

それにしても2000万は取り過ぎだろ。

本当に傷なんてあるのか?

『見せろ!』と言ったらわざと傷をつける

可能性はある。

手元にドクロがない以上、この議論では戦えない。


では切り札を出すか。


「この映像をご覧ください」


と言って、オレはスマフォにある映像を流す。

それはオーパーツ展の監視映像であった。

ニュースでまだ取り上げられてない激レアもの。


その映像は、金沢さんにぶつかった人物の顔が

はっきりと映っている。

その人物とは社長であった。


しかも、ドクロの展示品に誰かが近づくのを

待っている素振り。

そこへちょうど金沢さんが来たので、

社長がわざとぶつかり逃走。


騒ぎの中、スタッフが手招きをして裏口から

逃がしてるのもバッチリと映っていた。


「もし、請求を取り下げないということでしたら

 こちらを証拠として我々から裁判を起こします」


付け加えて、切り抜きでない24時間記録

されてる原本を持っている。

しかも前日分もある。

更に博物館館長のサインも添えてあるため

本物の監視映像であると証明できる

ことを説明した。


「どうされます?

 社長の返答次第では各メディアへ

 この映像を送り付ける予定ですが」


余裕ぶっていた社長の顔が険しくなる。


「1つお伺いしたい。

 金沢楓とはどのような関係か?」

「何の関係もありません」


これを言っておかないと、金沢さんに別の

嫌がらせが起こる可能性がある。

金沢さんが人質にされたら反撃が難しくなる。


「知人の友達です。要するに他人だ。

 私も助ける道理はない。

 ですが、今回は知人の頼みですので

 こうやって動いた次第」


♪バタン


突然、体格のいい野郎2名が、社長室へ入って来る。

その1人がオレに顔を寄せ忠告する。


「貴様、ここから帰れるとは思うなよ」


もう1人は、刃物をオレに見せつける。

オレはそんなことにはひるまない。

むしろドラマでしか見ないシチュエーションに

つい笑みを浮かべてしまった。


「何が面白い?」


ここは動揺を見せてはいけない。

こうなることは想定済みだ。


「健全な会社だと思ったのですが反社でしたか」

「んだと貴様!

 自分のおかれてる状況を理解してないようだな」


「社長、大丈夫ですか?

 私がこの店に入ってから隠しカメラで全て録画されてますよ。

 データはクラウド上に記録してます。」


オレは胸元にある小さなカメラを社長に見せる。


「1時間以内に車の中に置いたタイマーを切らないと

 Youtubeで自動配信する仕組みになってるのですが。

 あと、博物館の監視映像もメディアに送り付けます」

「社長!はったりだ」


最悪、オレはここで死んでもいいと思ってる。

痛い思いはするが、本当に死ぬわけではない。

そんな覚悟でここに来てるんだよ。


♪社長!はったりだ


オレはスマホで本当に記録されてる事を見せる


「はったりだと思ってもらって構わない」


さぁどうします?

記録してるのは嘘じゃないぜ。

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