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(085) 堀北さんを応援してます

◇◇◇ 国立科学博物館 ◇◇◇


国立科学博物館の裏口。

職員用の通用門に、スーツ姿の男性陣5名が

事前連絡もなく突然押しかけて来た。

業務時間中の通用門は、常に開門状態ではあるが

警備員によって通行は監視されている。


「どのような御用件でしょうか?」


入り口を通させないよう警備員は代表者

らしき人物の前に出る。


「警察だ」


先頭に立つ代表者は警察手帳を見せ、

自分らは刑事であることを明かした。


「責任者と面会したい」

「ご予約はされてるでしょうか?」


「予定は取ってない。事前連絡もしていない」

「了承しました。少々お待ち願います」


警備員は直ちに内線電話をする。

刑事らを応接室へと通すよう指示され

彼らを指定の場所へと待機させたのである。


10分ほど経過しただろうか。

館長が刑事が待つ部屋に現れる。


「本日はどのような御用件でしょうか?」

「これは極秘にして頂きたい」


と刑事は話を切り出し、正確なことははっきり

と伝えられないが、台湾からある人物がお忍びで、

この博物館に訪れる予定であることを伝える。


それを踏まえ本題へと入る。


昨夜、殺害予告が届いた。

ターゲットは、お忍びの人物だ。

文書には、関係者しか知りえない、

いつ、誰が、何時に、この博物館へ来るかが

正確に明記されたていたという。

更に、この館内で殺害すると予告されていたのだ。

ふざけた事に差出人は館内を調査したという。

『監視カメラにオレ様が映ってるよ。

 見つけられるものなら見つけてみな。』

と警察を挑発するような

文面で締めくくられていたという。


一見、いたずらにも思えるが、一般人が

知りえない情報を知っていることから

無視できないという結論に至り

ここへ来たという。


「当日は観光先を変更する予定でいるが

 犯人を特定したいと我々は考えている。

 もし関係者に犯人が居るとなると、

 場所を変更したところで回避できない。

 そこで、過去2週間分の監視映像

 を提供して頂きたい。

 裁判所の令状は出ている」


刑事は裁判所の令状を館長の正面に見せる。


「速やかに提出して頂きたい」

「分かりました。

 監視室の者に連絡して至急

 お渡しするように致します」


裁判所の令状が出ているのであれば従うまで、

館長は下の者に指示を出し、応じるのであった。


◇◇◇ 某大学病院 ◇◇◇


ここは某有名な大学病院。

応接室で1人、ソファに腰かけ、

誰かを待っている女性がいる。

女性は、自分の左手を見つめて、

何度もグーとパー繰り返していた。

その女性とは、そう堀北さんである。


なぜ大学病院にいるかというと、

通い続けてる病院へ定期健診で伺ったところ

診察はなく、ある物を渡された。


それは大学病院への紹介状である。


どうやら知り合いの大学病院に堀北さんの

病状について相談したところ大学病院側が

興味を示し、是非とも精密検査をして

病状を確認したいとの申し出があったという。


無料で検査が受けられると聞き、紹介状を持って、

その足で大学病院へ向かったのである。

とりあえず説明を聞きに行くもりだったが、

まさかその場で検索することになるとは。

到着するなり、いろいろな検査室に回され

測定することに。

一通り終わると何故か応接室で待機させられ今に至る。


♪コンコン


2人の男性が入って来た。

1人は白衣であり、もう1人はスーツ姿。

向かいの椅子に座るなり、スーツの男性から

口を開く。


「初めまして、田中と申します」


堀北さん?ハルだよ。

長いこと会ってなかったような感覚がする。

ハルキの身体ではなく、田中の身体を使って

堀北さんと再会したのだ。


堀北さんが大学病院へ向かったと、

諜報員からの連絡を受け、オレも急いで

大学病院へ足を運んだのである。

そして、堀北さんが検査を受けてる間に

いろいろと整理をして、ここへと来た。


オレは軽く挨拶を交わし、左手首について

検査結果を隣の先生から説明させた。


検査結果は

『病状が深刻でリハビリでは完治できない』

とはっきり堀北さんに告げたのである。


オレは知っている。

堀北さんがリハビリを頑張っていたのを。

少しの望みを掛けていたのを。

この検査結果によって、堀北さんの希望は

完全に途絶えたのである。


病院の関係者として厳しい現実を叩き付けてしまった。


それを聞いた堀北さんは、

下を向き両手で顔を覆い隠す。


え!泣いてるの?

あの堀北さんが無言で泣いてる。

どんなに辛くても他人にはその姿を見せない

堀北さんがだよ。


やばい。心が張り裂けそうだ。

オレは、上を向いて涙がこぼれないように

するので必死だった。


堀北さんへは更に追い打ちが掛かる。


「一般的な手術をしても改善する

 可能性はほぼないでしょう」


堀北さんは下を向いたまま理解したと

首を縦に振る。

もう、彼女を強く抱きしめてあげたい。


「1つ御提案があります。

 完治できる術式があります。

 ロボットによるエンドスコピック手術

 になります。

 実は日本で事例がなく初の試みとなります。

 手術が成功すれば、手首は元のように

 動かせるようになるでしょう。

 お約束します。

 この術式を堀北さんで試してみたいのです」


それは手首に小さな切開をし、内視鏡を使って

手根管を見ながら手術を行うというもの。

医者がモニタを見ながらロボットを遠隔操作する

手術である。


「今回、堀北さんをお呼びした理由は、

 その被験者、第一号となってもらいたい。

 というご案内です。

 もちろん、手術代のお支払いは不要です。

 術後のケアも無償で致します。

 どうでしょう。考えて頂けませんか?」


オレが、堀北さんに全国大会に出てもらいたい。

その一心で術後の回復が早い手法で、

精密な手術ができる方法を見出したのだ。


頼む受けてくれ。

泣いる堀北さんを見たくない。


「手術の時間はどのくらい

 掛かるのでしょうか?」


オレは医者の顔を見る。


「1時間から2時間程度です。

 次の日には退院できるでしょう」


その流れで、続けて医者に手術の概要を

説明させた。

一通りの説明を受け、堀北さんの出した答えは


「家族と相談させてください」


であった。


「それはもちろん。

 じっくり話し合うといい。

 不明なところがあれば遠慮なく

 病院へ電話してくれて(かま)わない」


オレは、堀北さんに承諾書を手渡す。

これに記入してくれれば、次の日には手術が

できる手はずにしてあると付け加えたのである。


「フリークライミングの選手なのですよね?

 話しは聞いてます」

「あ、はい。アマチュアですけど」


「期待の選手とも伺ってます。

 若い選手の()(つぶ)したくない。

 完治するまで我々が全力でサポート致します。

 職員一同、あなたを応援します」


当初、手術が高額なうえ、

治る見込みは50%と聞かされていた。

また、リハビリしても回復は日常で

困らない程度までしか見込めない。

そんな選手として絶望的な状況から

一転して希望が見えてきたのである。


「ありがとうござぃめす」


堀北さんは感極まってしまった。

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