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(078) 岩井さんとデートします③

◇◇◇ コンクール会場 ◇◇◇


コンクール会場のホール内。


♪ ♪~♪、♪~♪


オレと岩井さんは、1人目の演奏を

聞いているところ。


コンクールの日程は、8月予選、

10月准本選、12月本選となってる。

本大会は全国規模であり、

本日は東京都予選第3地区だとさ。


そう考えると次に進むには相当

ハードルが高い事が素人でも感じ取れる。


1人目の演奏を聴いてるが、篠崎さんより

技術的、表現的に格下であれば

次へ突破できる可能性が高い。

だが、オレにはコンクール的に

うまいのか下手なのか判断できない。

大体、弾いてる原曲を知らんのだ。

話にならない。


そして、2人目の演奏が始める。

やはり同じだ。判断できない。

1番目と優劣がつけられない。

審査員はどう判断してるのだろう。


そして次はいよいよ篠崎さんの出番だ。

更にオレのドキドキが高まる。

出場してる人は凄いよ。

オレだったら直前で逃げ出すに違いない。

そんな事を考えていたら

2番目の演奏が終わってしまった。


「次だね」

「あぁ。結果はどうあれ。

 本人の納得のいく演奏ができれば

 いいと思ってる。

 高校最後の思い出になるよ」


「それって本選で戦ったときの話じゃない?

 納得のいく演奏が出来たとしても

 予選すら通過できなかったら

 わたしだったら一生へこむよ。

 立ち直れない。きっと」


オイオイ、怖いこと言うなよ。

オレがコンクール出場するよう

背中を押したんだぜ。

篠崎さんまで部屋に閉じこもられたら最悪だ。


「ん~ん。

 岩井さんの言う通りかもな。

 そうなったら、ピアノの楽しさを

 思い出すようオレが全力で

 サポートするしかないな」

「篠崎さんのこと、好きなの?」


ほんと女子って色恋が好きだよね。

オレの周りの女子は

全員好きに決まってるじゃん。


「恋愛対象として見れるかという意味か?

 だとしたらYESだ」

「私は?」


さて、岩井さんはどうなのだろう?

オレの中でアイミーと同じカテゴリに属性してる。

手の届かない的な存在ですよ。


「もう、答えなくていいです」


即答できない時点で答え合わせが

出来てしまったか。


おっと、水色のドレスをまとった女性の登場だ。

篠崎さんである。いつもと雰囲気が違う。


「私、あの子知らない」

「Aクラスの子だよ」


♪ ♪~♪、♪~♪


演奏が開始される。

とにかくミスしないでくれと、

祈るような形で両手を組んだ。


篠崎さんの表情は真剣そのもの。

いつもの楽しく弾いてる彼女の姿を

見てたから別人のようだ。

思い描く演奏ができてるのだろうか。

素人のオレには全く分からないし、

彼女の表情からも把握できない。


5分くらいだろうか。

あっと言う間に演奏が終わってしまった。

ミスタッチはなかったように思える。


ホールへの入退出は演奏者が交替する間だけ。


「他の出演者も聞く?」

「いや、出よう」


他の出演者に興味はない。

篠崎さんの演奏が終わると共に

オレらはホールの外へと出た。


彼女に会って、とにかく話がしたかった。

ロビー内を歩き回り、篠崎さんを探すも

見つからない。

まだバックヤードに居のだろうか。


「居たよ!」


人気(ひとけ)のない隅に水色のドレスを発見。

背丈ほどのある観葉植物が壁となり

よく見えない。

顔は見えないものの、衣装の一部分で

まぎれもなく篠崎さんだと分かる。


岩井さんが彼女の元へと足を踏み出す時、

オレは岩井さんの腕をつかみを止めた。


「やめよう」


オレは気付いてしまった。

篠崎さんが泣いていたのを。

だから隠れるようにしていたのだ。


おれの一言で、岩井さんも状況を

理解したようだ。


「結果発表まで外に出てよう」


オレはそう言って、岩井さんと共に会場を出て

お昼に食べたベンチへと戻ったのである。


1時間半ほど暇をつぶしただろうか。

会場へと戻る。

結果はまだ発表されてない。


「細倉くん?」


背後から声を掛けられた。

篠崎さんである。

落ち込んでる様子は見られない。

見ると、篠崎パパとママも一緒のようだ。

オレは、両親へ軽く会釈する。


「演奏聞きましたよ」

「ありがとう。どうでした?」


さて困った。

篠崎さんが泣いてるところを

見てしまったのでコメントが難しい。


「凄く上手でしたよね。結果が楽しみです」


最後の言葉はいらなかったか。

地雷を自ら配置してしまったではないか。


「彼女さんですか?」


篠崎さんが隣にいる岩井さんを

ちらりと見てオレに問い掛けた。

さて、岩井さんのことをどう説明しよう。

この状況をまったく想定してなかった。


「えーっと」

「ハルキと付き合ってます」


岩井さんはオレに身体を密着させ

腕を組み彼女アピールをしたのだ。


ちょっと待った!

こいつバカじゃねぇ。


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