(074) 金沢さんに会いに行きます
◇◇◇ ジム ◇◇◇
オレは、堀北さんが通うジムに到着した。
カイとも待ち合わせしてる場所でもある。
2人とも来てるのだろうか。
ジムの中へと足を踏み入れた。
「こんにちわ」
「こんちわ」
1学年女子と目が合うなり挨拶される。
丁寧にお辞儀までする。
いいね。2つ下はみな礼儀正しくて。
それに対して、言葉遣いも態度も悪い
2年の茶髪コンピはなんだ。
思い出すだけで腹が立つ。
「凛心先輩に会いに来たんですか?」
「そうそう。来てます?」
「いえ、まだ。
昨日、一昨日と14時に来たから
今日も同じ時間くらいだと思いますよ」
「そうかぁ」
来るの早すぎたか。
「もし、お伝えしたいことがあるなら
Lineしますよ」
え!堀北さんのアカウント知ってるの?
金沢さんの名誉のためにもオーパーツ事件
には触れられない。
大義名分ができた。
「堀北さんのアカウント知ってるの?
教えてもらっていい?」
・・・
「ごめんなさい。
美沙先輩が絶対に教えちゃダメって
釘を刺されてるんです」
あの小ぎつねめ!
どこまでオレのじゃまをする気だ。
「ごめんごめん。キミの対応は正しい。
むやみに他人のアカウント教えるのは
よろしくない」
「なら、1つ頼んでいいかなぁ。
堀北さんが金沢さんの自宅住所知ってるか
細倉が聞いてって頼まれた。
聞いてもらっていい?」
「金沢さん?」
「そう。金沢さん。
大丈夫、堀北さんには伝わるから」
彼女は、オレの言ったことを
堀北さんに伝えてくれた。
この子、かわいいなぁ。
やっぱ、年下の子ってがいいな。
「返答が来ました。
どうして住所を知りたいの?
だそうです。
何て返しますか?」
さて、堀北さんはオーパーツ事件のことは
知ってるのだろうか?
知らないなら知らないままにしておきたい。
「細倉先輩のLine ID教えて
って凛心先輩から来ました」
マジ?
堀北さんとつながれる?
この日をどんなに待ち望んだことか。
これは人類史上、歴史的快挙となるであろう。
浮かれている場合ではないな。
後輩に金沢さんのこと知られたくないから
オレと直接会話したいってことか。
堀北さんも事件のことを把握してるのだな。
当然か。
オレは、彼女にアカウントを教えた。
そして、堀北さんがオレをフレンド登録
したのが確認できた。
続けてオレも調印する。
これにて、堀北と細倉による平和友好条約が
締結さることとなりました。
そして、オレは歴史的1文を送る。
Line<細倉です。
この1文は、21世紀のターニングポイント
として後世に語り継がれることとなるであろう。
よし、NFTでオークションに出せば
大富豪になれるかもな。
Line>なぜ金沢さんの住所を知りたいの?
そんな事務的なこと、やめようよ。
お互いのパーソナルなことについて
会話してからにしませんか。
おっと、バカなこと考えてないで、
まじめにやらないと。
Line<おそらく博物館の展示品破損
が原因だと思うけど。
携帯電源を切ってるようで
つながらないんです。
心配なので、直接会いに行って
みようかと思ってる。
なので金沢さんの住所を知りたい。
Line>住所知ってるよ。
私も一緒に行っていい?
マジ!デートですか?
Line<是非。
実はカイが言い出したことであると伝え。
3人で行くこととなった。
堀北さんとの待ち合わせ場所を決め、
カイには集合場所の変更をDMする。
「ありがとうね。
キミのおかげで人を救えるかも知れない」
後輩ちゃんにお礼を言って
オレはジムを出て行く。
◇◇◇ 病院 ◇◇◇
現在時刻は20時。
オレは、乃々佳の病室へと戻って来た。
「ノノン!
堀北さんとカイと3人で
金沢さんの家に行ってきました。
残念ながら金沢さんに会うことは
出来なかったよ。
だけど、金沢さんのお母さんとは
少し会話してきた」
お母さんの話しでは、オーパーツ事件が
ショックだったらしく、部屋に閉じこもって
居るんだとか。
連日ニュースで取り扱われてるので無理はない。
今日はオレらが来たというのをお母さん
経由で伝えてもらい。
後日改めて伺うこととしたのである。
このやり方が正解なのかは分からない。
オレらが行くことで更に不安を与えて
しまうような気がしてならない。
どうしたら良いのだろうか?
「堀北さんの方だけど。
いつもの明るい感じで元気だった。
手首の方は、リハビリしてて
しびれが和らいでるとは言ってたが
果たしてどこまで本当か分からない」
堀北さんはオレらを心配掛けまいと
絶えず笑顔でいる。
そこが堀北さんの良いところでもあるが、
オレは堀北さんも心配してる。
絶対に落ち込んでるはずだ。
オレとカイの2人がそろうと堀北さんは
心の底から楽しでるように見える。
オレらが居る時間だけでも怪我のことは
忘れさせたい。
金沢さんも同じように出来たらいいなぁ。
「明日は、篠崎さんのコンクールに
行って来るよ。
だから明日は夕方に来るよ。
ノノンも篠崎さんの演奏聞きたいだろう?
良いんだぞ、天使の姿で会場来いよ」
ノノンと何日会話してないだろう。
時が経つにつれ、ノノンを忘れそうだよ。
10分でいいから現れてくれよ。
明日、コンクール会場で待ってるからな。




