(007) 人生最後を迎えます①
=-=-= 登場人物 =-=-=
ハル :寮に住む高校生 (主人公)
ノノン:天使と名乗る少女
堀北 :告白未遂のクラスメイト
カイ :ハルと同じ寮に住む友人
登校途中で幽霊が出現した。
名前はノノンという。
これで悩み事は2つとなった。
1つは堀北さんにどう接すればいいか。
そしてもう1つは、隣にいる幽霊だ。
幽霊は実在する。
信じがたいが受け入れるしかない。
新たな発見はオレの部屋だけでなく
外にも出れるということだ。
部屋に住み着いてるのではなく
オレに憑いしているものと推測される。
可愛くて露出の多い霊なんて目の毒だぜ。
カイはというと、学校に到着するまで、
『彼女が出来たのか』としつこく聞いて来たが
適当にかわし続けた。
◇◇◇ 教室 ◇◇◇
時刻は朝8時25分。
オレは教室に足を踏み入れる。
「待てよ」
少し離れたところからカイは急ぎ足で
オレに近づき、続いて教室へと入る。
カイは隣のクラスである。
こいつも友達が居ないらしく、
教室にカバンを置くと、いつものように
授業が始まるまでオレの席で無駄話する
のが日課だ。
いつものように教室が活気づいている。
どうやらオレらが最後のクラスメイトらしい。
ノノンは教室の中にまで付いて来る。
オレの左隣に位置したまま壁を素通りして見せた。
もはやそんな事でオレは驚かない。
それよりも数名からの視線が強く感じられる。
オレぐらいのエリートとなると、直接確認
しなくてもそれぐらいは分かる。
もしかしてノノンが見えているのだろうか?
いや視線はノノンではなくオレに向けられてる。
ワイシャツは新しい。
まさかズボンのチャックが開いてるとか。
いや大丈夫だ。
直視する1人と目が合ってしまった。
その人物は直ぐに目をそらしたが、
オレは動揺を隠せないでいる。
堀北さんだから。
ハハハ、顔が笑ってないよ。
昨日の事、絶対怒ってる。どうしよう。
帰りたい。今すぐ帰りたい。
どうして登校してしまった?
ずーっと頭の片隅にあっただろうが。
どこか遠くへ行きたい。
誰もオレを知らない町へ逃げたい。
とりあえずカイが居てくれて助かった。
いつもはウザい奴が今は心強い。
冷静になれオレ。
女子に抱き着くことなんてよくある事だろう。
いや、ない。昨日の事件、どう説明する?
「ハルどうしたの?顔色悪いよ」
教室に入ってから動揺するオレに
ノノンが投げかけるも。
「ちょっと黙っててくれ」
「なんすか?」
ノノンへの返答にカイが反応した。
「何でもない。独り言」
やべぇ。
どうやらノノンの声は俺だけにしか
聞こえないらしい。
頭おかしい奴認定されないよう
ノノンとの会話は気を付けないと。
自席に着くと、となりの堀北さんは
黒板を見つめダンマリを決めている。
横顔も可愛い。
「ちょっと細倉くん!」
堀北さんの2つ前の席に座る女子が立ち上り、
もの凄いけんまくでオレの正面へと来る。
仁王立ちで両手を腰に当てガン見だ。
怖ぇよ。こんな人うちのクラスに居たっけ?
「あなた昨日。
堀北さん、呼び出していきなり
抱きついたんだって?
押し倒して、オッ、・・・
胸を揉んだって聞いたわよ。
どうなの?」
ハハハ。そいうことになってるのか。
揉んでませんって。冤罪です。
<<本当なの?ねぇねぇ>>
ノノンさん?
国際会議中なので黙っててくれませんか!
「この変質者!あなたこれ犯罪よ。
謝って済む問題じゃないわ」
強引に抱き付いただけだろ!
それが犯罪か。
あえて大きい声で怒鳴らなくてもいいじゃん。
ほら、知らない人だって居るんだし。
あんた、堀北さんとたいして仲良くないだろう。
出しゃばるなよ。頼むから。
地球上の男は全て敵ってやつ?
そいうタイプかよ。
それとも自己アピールですか。
頼むからオレに向けるの止めてくれません?
最悪だ。最悪な日だ。人生の終わりだ。
前略、母上様。
オレはただ告白したかっただけなんです。
高校生活の最後に彼女が欲しかったんです。
リア充を求めてはいけなかったのでしょうか。
高望みだったのでしょうか。
これから公開処刑となります。
オレの人生、やり残したこと沢山あります。
後悔ありまくりです。
短い人生でしたが、先立つ不孝をお許しください。
「おい糞女!見てもねぇくせに
適当なことぬかしてんじゃねぇ」
限界に達したのか、
沈黙してたカイが爆発した。
カイくん、かっこいぃ。
やばい。泣きそう。
「失礼な人ね。あなた誰?
細倉くんの味方な訳?」