(064) クラスにオレを驚かす人物がいました
◇◇◇ 教室 ◇◇◇
堀北さんの口から衝撃的な発言が飛び出した。
このクラスに『ノノン』という愛称で
呼ばれる人物が存在するということ。
しかも、オレがそう呼んでたという。
その子の名は茂木 乃々佳。
ずーっと学校を休んでる子だ。
休んでる理由は知らん。
だが、堀北さんの話しぶりからだと
オレと乃々佳は親しい間柄だったらしい。
なぜ、その記憶がオレにない!?
やはりオレは二重人格者なのか。
その前にだ。
幽霊のノノンと乃々佳は
同一人物なのかが無茶苦茶に気になる。
乃々佳さんに会ってみたい。
会って確かめたい。
幽霊のノノンと関係があるのかどうか。
堀北さん、ありがとう。
「茂木さんが心配だから今日会って来ます。
何か分かりましたら次の部室で報告します」
「ほんと?お願いするね」
しまった!
1人でテンション爆上がりしてたわ。
堀北さんと乃々佳さんは、そんなに
仲良くないのかも知れないのに。
まぁいいか。
ホームルームが終わると、
教壇にいる先生の元へ。
そして、茂木乃々佳がどうして学校に
来ないか理由を聞いてみた。
すると、それはセンシティブな内容により
職員室で会話したいとのこと。
ついて行った先は、応接室のような
小さな個室を案内された。
そこで先生と2人きりで、乃々佳について
いろいろと教えてもらうことに。
先生の口から、つぎつぎと衝撃な事実を
知ることとなる。
乃々佳は現在大学病院に入院してて
寝たっきりの状態なのだそうだ。
命に別状はなく、身体のどこにも
異常はないとのこと。
普通に寝てる状態で、目を覚まさないのだという。
なんだそれ。そんな病気があるのか。
発見は、寮母さんだそうで。
これもたま衝撃であったが、
乃々佳もまた女子寮に住んでいるそうだ。
7月になって2日間、理由もなく学校を休んだ
ことから先生から寮母さんへ連絡したところ、
乃々佳が部屋で倒れていたのが発見された。
更に驚いたのは、オレと同じ地元の
島根県から一緒に転入して来たということ。
なぜ、オレはその事実を覚えてない!?
しかも転入したのは高校3年の春だという。
要するに今年だ。
オレはこの高校は4月から来たばかりで、
まだ4カ月しか経ってないのだそうだ。
どうして、それも覚えてない。
一緒に転入して来たってことは、
オレと乃々佳は幼馴染か恋人の
可能性が高いということになる。
でなければ、高3で同じ学校に
転入する理由が思い浮かばない。
ノノンと親しげに呼ぶことからも
間違いないと思われる。
乃々佳のことも覚えてないし。
一緒に転入してきたことも覚えてない。
3年生からこの学校に来たことも。
なにもかもオレは覚えてない。
オレは自覚した。
自分が記憶喪失であるということを。
だって7月より前の記憶がないのだ。
地元どころか両親の名前すら思い出せない。
オレの記憶喪失と乃々佳の入院は
関係があるのだろうか。
もう、知りたいだらけだ。
乃々佳に今すぐ会いたい。
そしてオレは、直ぐ行動にでた。
先生から乃々佳の入院先を聴き出し、
寮には戻らず病院へ直行したのである。
~~~ 病院 ~~~
病院に到着して受付で面会の手続きをする。
先生から教えてもらったので、
当たり前のことではあるが、
茂木乃々佳という人物が本当にここ (病院)に居る
ということを再認識した。
架空の人物ではない実在してるのだ。
手続きはあっけなく終わり、いざ病室へ。
病室は最上階。エレベータを降りると
ホテルなのと思えるようなフロアである。
病室の入り口もりっぱだ。
中へ入ると、もっとビックリ。
なんてゴージャスなのだろう。しかも広い。
堀北さんのトレーナーが入院する
病室とは偉い違いだ。
病室の広さは同じくらいだが、トレーナーは
6人部屋。こちらは個室。
しかも作りが違う。
壁には100インチ程のテレビモニタが
設置してあり、謎の絵も飾ってある。
ベッドのランクも上で、電動式で身体を
起こせるタイプ。
一般人がガンバってでも入れるような
病室でないことは一目でわかる。
政治家や企業のトップが使うようなところだ。
ここの病院は全室がこんな作りなのか?
寮のオレの部屋を見せるが恥ずかしい。
ベッドに横たわる人物がいる。
顔を見るのが怖い。
ノノンの顔をした乃々佳がそこに居たら
と考えるだけで心臓がバグバグだ。
確認するまでは帰る訳にはいかない。
勇気を出し、ベッドへ近づき覗き込む。
健やかに眠る女性がいた。
声を掛ければ目を覚ますのではないか
と思える寝顔である。
気になる顔だが、ノノンとは似ても似つかぬ
別人であった。
どこか期待していた。
点と点がつながると思ったのに。
冷静に考えればノノンでないことは
確認しなくてもない。
ノノンはどう見ても子供だ。
高校生には無理がある。
たまたまニックネームが同じだったってことか。
そして、眠る彼女の顔を見れば何か思い出す
かもと期待していたが、何も思い出せない。
こんな子と知り合いだったと言われても
ピントこない。
病名はなんなのだろうか。
先生は聞いてないとのこと。
まぁ、現代医学で直せないのだ。
病名を聞いたところで「?」の上に「?」を
重ねるだけだろう。
「ノノンだよな?
オレの部屋に遊びに来てたんだよな?」
つい、寝ている彼女に話しかける。
顔は違うけど、乃々佳がノノンであって欲しい。
「なぁ、返事してくれよ」
ずーっとノノンに触れたかった。
温もりを感じたかった。
だが、顔は別人だし、身体も大人だ。
外見的に似てる部分はどこにもない。
残念ながら、同一人物とするには無理がある。
この病室を利用してる乃々佳は何者なのか。
財閥のお嬢様か。
いや、それは会えり得ないだろう。
そんな人が寮に入るだろうか。
オレみたいな貧乏人と知り合いだろうか。
そもそも、お嬢様なら有名人や著名人の子が
集まるお嬢様学校へ通うだろう。
だんだん混乱して来た。
乃々佳は何者だ?




