(006) 幽霊は実在するぞ②
カイが携帯を使って時刻を確認する。
「やばい遅刻すんぞ。早く着替えろよ」
そう言えば起きてから何も準備してない。
今日も学校があるのだ。
オレは急いで部屋を飛び出し、
共用トイレで用をたす。
うちの寮は、トイレ、バス、洗面所が
部屋になく全て共用となってる。
食堂もあり、朝と夜はバイキング形式で
各人が勝手に食べるスタイルを取ってる。
次に洗面所で歯を磨く。
その間もカイは部屋を散策してるのだろう。
不思議な事に幽霊は付いて来てない。
あの部屋から出られないということだ。
やはりハイテク技術で映し出してたのだと
再確認できた。
歯を磨きながらテンションはダダ下がり。
堀北さんにどんな顔をすればいいのか。
そっちの方が問題である。
このままスタッフは出てこないつもりか。
更にドッキリが用意してあるとか。
一通りのルーティーンを終え。
オレは自分の部屋の前に立ち深呼吸。
頼むからテレビスタッフがドッキリの
プラカードを持って部屋に居てくれ!
♪ガチャ。(扉が開く)
オレがドアノブに握ろうとした時に
内側からドアが開けられた。
やはりそうだったか。
「遅い、急げ、外で待ってるぞ」
カイがしびれを切らしたのか
タイミング良く廊下に出て来たのだ。
オレは入り口から首をつっこみ
部屋の中を覗くも。
スタッフはいない。
幽霊もいない。
「下 (玄関)に居るぞ」
カイは、すれ違いざまに部屋を出ていく。
オレは1分で制服に着替えることに。
◇◇◇ 通学路 ◇◇◇
閑静な住宅街をオレとカイは
会話しながら歩いてる。
同じ制服を着た学生も前後に数名おり
同じ進行方向へ進んでいる。
そう、学校に向かっているのだ。
寮は学校の敷地内にはない。
歩いて15分と少し離れた場所にある。
だが徒歩で登校できるのは大きい。
ギリギリまで寝てられるのだから。
「でだ、連れ込んだ女は誰だったんだ?
他校か?」
「まだ言ってんのかよ」
「いいじゃん、白状しちゃえよ。
秘密にすっから。
絶対誰にも言わない。約束する」
カイの絶対はあてにならない。
むしろ言ったら広まると思った方がいい。
「テレビなんだろ?
頼むから後で堀北さんに説明してくれよ」
その時である。
「ハル!?」
「うわ~~~~~っ」
突然オレの目の前に先ほどの幽霊が出現したのである。
思わず一歩下がり倒れそうになるほど
メチャメチャ驚いた。
「何してるの?」
カイは驚いていない。至って冷静だ。
なるほど、ここで出現するこを
事前に知ってたって事か?
幽霊は抱きしめて!と言わんがばかり。
両手を広げて浮いている。
そして浮いたまま俺の左隣に来て腕を組む。
と言っても握られてる感触はないけど。
カイはオレの右隣に位置してる。
♪チリンチリン
正面から自転車が向かって来ていた。
危ないと思った時には手遅れ。
自転車はよけることもなく、
堂々と幽霊の身体を通り抜けて行ったのだ。
「もう、失礼な人よね」
幽霊はご立腹。
どういうこと?パニックです。
カイは見えてないふりをしてるものと
思い込んでいた。
どう考えても自転車に乗ってた人には
幽霊の存在に気付いてなかった。
となると、カイも本当に見えてない
ということになる。
「カイ、確認するがここに女の子がいる。
ほんとうに見えない?」
「またパントマイムかよ。それ面白くない」
幽霊はオレの左腕を組み上機嫌のご様子。
今までの事を整理する。
ここまで来たらもうテレビの収録は在りえない。
カイにも見えてない。
こいつは本物だ!