(058) 大会当日:ボルダリング①
◇◇◇ 試合会場 ◇◇◇
午前のスピード種目が終わり。
昼休憩に入った。
現在我々は、堀北ママが作って来てくれた
お弁当をジムの皆で仲良く食べてるところ。
よかった。昼飯代が浮いた。
そして、カイは後輩ちゃん達と会話が
はずんでる
「ハル!彼女連れてくればよかったのに」
ふざけんな!
会話のネタが尽きたからってアイミー使うな。
堀北パパに聞かれたじゃないか。
「細倉先輩、彼女居たんですか?」
ほら、そうなるじゃん。
「誰だか知ってる?
ここだけの話し、現役アイドルです」
カイやめろ。冗談で終わらせておけ。
「きゃぁ、禁断の恋」
「誰ですぅ?」
「国民的アイドルさんですか?」
「世間にバレたら大変じゃないですか」
超~最悪。盛り上がってる。
カイよ。
女子が恋ネタ好きだからって
そんな詰め方するな。
他校にまでこのネタが広がっちまった。
堀北パパには誤解を解かないと。
「彼女はいません。
こいつ中二病なんでスルーで」
<<アイドルのアイミーさん?
彼女だったの?>>
だから、スルーしてくれ。
こうなったら反撃だ。
「カイも可愛い金沢さん
連れてくればよかったじゃん」
「きゃぁ~、彼女さんですか?」
「そうだよ!」
え!
お前、そんなこと発言して大丈夫?
「凛心先輩の事が好きなのかと
思ってました」
おーい!堀北両親が聴いてるぞぉ。
こいつらにもオレは眼中にないのかよ。
そうですか。
「堀北さんは、ハルが狙ってるから」
「二股はダメですよ」
はい終わった。
オレの人生はここで終了です。
カイに投げたブーメランが
オレに刺さりました。
オレの顔は引きつってるだろうか。
堀北夫妻に振り向き。
「ねぇ」
肯定も否定もできない。
愛想笑いで返すので、
いっぱいいっぱいである。
その後もカイの奴はやりたい放題だ。
調子こいてグループLineを作りやがった。
とりあえず、ここにいるメンバーだけだけど。
なぜかオレまで入らせられた。
オレのLineにまた女子が加わることに。
オレのフレンドが、カイ以外全員女子
なんですが、そんなことある?
この流れで堀北さんのアカウントも
ゲットしたい。
しかし、後輩達もスポーティな体型で
いい身体してる。顔も可愛いし。
2つ下の彼女かぁ。いいねぇ。
ノノンさん?そんな目でオレを見ないで!
***
さて、いよいよ午後の競技が始まろうとしている。
♪実況
会場は女子ボルダリングに移ります。
現在1位は菊地17歳高校2年生。
その後に、神崎、本間と続いております。
注目の堀北選手は現在6位をマーク。
次のボルダリングは得意種目でありますが
どうみますか?
♪解説
スピードの動きを見る限り好調のようですね。
彼女の持ち味は独特なムーブにあります
♪実況
他の選手から『くノ一』と
呼ばれてるそうですが
♪解説
まさに忍者のような動きを見せてくれます。
男子が苦戦した課題3と4をどう挑むのか
今から楽しみです。
そして、もう1人注目したいのが、
オールマイティの菊池選手です。
もちろんボルダリングも得意としています。
彼女は現在1位。
堀北選手が今大会で優勝を取るには、
ここで菊池選手に勝つのが必須でしょう。
その辺が見どころではないでしょうか?
なるほど。
要するに次の種目、堀北さんは余裕ではないと。
菊池選手はサイボーグと呼ばれてるのかぁ。
忍者対ロボットの対決ってこね。
面白そう。
ボルダリングは、4つの課題を制する事。
各課題の『TOPホールド』を両手で保持すれば
完登となる。
いくつ完登できたかを競う種目である。
また、中間にはゾーンと呼ばれるホールドがあり
そこまで到達できれば中間点がもらえる。
完登+中間点で競うこことなる。
会場に選手が一同に登場した。
4分間のコースの下見時間だそうだ。
我がジムの4人が固まって、課題の壁に
向かって指を刺しながら相談し合ってる。
こういう時、仲間がいるっていいよな。
もしオレだったら、どのルートを通るだとか
アドバイスなど、同じジムだとしても言いたくない。
だが、堀北さんは積極的に3人へ話し
掛けている。
ライバルではなくチームという認識なのだろう。
その光景だけでも堀北さんが人として
優れてることが感じ取れる。
あなたカッコいいよ。
しかし、課題とやらをオレも応援席から
見てるが、どうやって登るの?
まったくイメージが湧かない。
男子の試合を見とけばよかった。
第1課題がスタートした。
コースは、ただ垂直に登るだけだが、
足を掛ける所も掴む所もまともにない。
案の定、最初の選手がトライするも
途中で落ちてしまう。
見てるこっちだって、登るのは無理と感じてる。
ボルダリングは5分以内であれば
何度でも再トライ可能だ。
なので何度もやり直すも
結果同じところで落ちてしまう。
最初の3選手はゾーンまでは到達できた
もののトップまでは辿り着けなかった。
これメッチャ難くない?
登れる人、いるの?
4人目で、ついに菊池選手の登場。
さぁ、サイボーグのお手並み拝見
と行きますか。
彼女は身体が柔らかいと言うか、
足のこうを使ってホールドをひっかけたりして、
いとも簡単に完登してしまった。
逆に最初の3選手が難しく登ってるじゃね
と思えるほどだ。
くっそ、敵ながらやるな。
そして、次の選手は我らの堀北さん。
菊池選手が完登してしまった。
堀北さんも完登する必要がある。
頼む!
堀北夫妻とオレは指を組み祈る。
そしてスタート。
菊池選手と同じような登り方をするかと
思い来や。
まったく違っていた。
そして、『くノ一』と呼ばれるゆえんを
知ることとなる。
ゾーンを過ぎたところで、両指2本ずつで
ホールドを掴み肘を伸ばしてぶら下がってる。
何をするのかと思いきや、
その状態から腕だけの力で全身を持ち上げジャンプ。
1つ上のホールドを握る。
更に同じことを2度続けTOPホールに到達。
完登である。
マジか!
オレは感動のあまり、
両手を上げ立ち上がってしまった。
周囲はオレに注目。
ハズ。
後ろに振り向き堀北夫妻に無言で
お辞儀して席につく。
驚くのはそれだけではない、
茶髪コンビの優香と美沙も
完登してしまった。
登り方は菊池選手に似ていた。
うちの2年生もなかなかやるではないか。
全てのトライが終わり。
第一課題の結果がでそろう。
堀北さんのムーブは独特であった。
確かに他の選手とは格上のような気がする。
藤沢さんがテレビでライバルと宣言した
理由を理解できた。
続けて第2課題も堀北さん、
優香、美沙、菊池選手の4名は完登。
流れが変わったのが第3課題からである。




