(056) 試合前夜
◇◇◇ 寮の自室 ◇◇◇
現在時刻は23時。
幕張から部屋へ戻り、まったり
してたところでアイミーからのLineが
通知される。
Line>ステージ見てくれた?
まさかあのまま帰ったり
してませんよね?(笑)
アイミーが本日出演したイベントの
ことが聞かれてる。
自分大好きな人なのだろうか?
見て欲しい上に感想まで求めて来てる。
逆の立場なら絶対来て欲しくないのだが。
Line<前から2列目で拝見しました。
トークだけなんですね。
生歌あると思ってたに。
<<ノノンも歌、聞きたかった>>
会場は大盛り上がりであった。
まず、観覧スペースが入りきれないほど人で溢れてた。
満員電車にこれ以上乗れないのに
乗ろうとしてる感覚。
後ろからギュウギュウに押されたのである。
イベントの内容は、現在放送中の
なんちゃらアニメの紹介と、そのキャラクタを
フィギア化したので販売する告知であった。
アイミーはそのアニメのエンディング曲を
担当してるということでゲストに呼ばれた
のだという。
定刻になると、アニメのエンディング曲が
流れ、観覧者によるコールが始まった。
どこかで練習してきたのかと思えるような
息の合ったコールである。
オレはついて行けず、呆然と立ったままだ。
次に司会者がステージ中央に登場し、
ゲストを呼び込む。
姿を現したのはアイミーである。
もの凄い声援が飛び交うことに。
改めてアイミーが別世界の人で
あることを再認識させられた。
先ほどまで一緒に会話してたのが
嘘のようだ。
Line>フィギアを紹介する場だから
歌はないよ。
だいたい登場時に曲
流れちゃってたし。
Line<あんなに楽しく笑うアイミーを
初めて見ました。
しゃべりも面白いし、
別人を見てるようだったよ。
Line>仕事モードはあんな感じ。
陽キャラでメディアに売ってますから。(笑)
確かに。
プライベートでもあんな陽気でいたら疲れるわな。
Line<見てよかった。
アイミーがどれほどファンに愛されてる
かを知れたし、ああいうイベントに
初めて行ったから全てが新鮮でした。
ありがとうございます。
呼んでくれて。
Line>楽しんでもらえたのなら
誘った甲斐があります。良かった。
他にも沢山のイベントがあるので
また行きましょう。
イベントはもう結構です。
楽しかったけど、あなたと並んで歩くの怖ぇよ。
Line<また、ありましたら是非誘ってください。
いつになったら本音を言えるのだろうか。
その後、スタンプを送りあってLineは終了した。
そうだ!
ライブのチケット料金調べないと。
ネット検索したら直ぐに見つかった。
一般チケット、全席指定8000円だとよ。
高けぇ。
3000円の席があると思ってたのに、
一律でこんな高額しかないのかよ。
予想が外れた。どうしよう。
アイミーにたんか切らず、チケットください
と素直に言っとけばよかった。
メッチャ後悔してる。
今更ちょうだいだなんて言えねぇ。
幕張への交通費でさえヒーヒー言ってるのに
どうやって8000円作ればいいんだ?
明日は堀北さんの試合がある。
東京大会なのに、なぜか試合会場は川崎だという。
篠崎さんのピアノもだけど、最近出費が多すぎる。
これがリア充の沼か。
<<ハル!どうしたの?>>
悩んでるところを感じ取られたか。
ミスった。
オレが無理してるのを知られたら
今後ノノンは何するにしても楽しめなくなる。
悟られないようにしないと。
ってオイ!
ノノンの姿を見て驚愕する。
「ノノン、大丈夫か?」
<<何が?>>
ノノンの身体全体が透けていたのだ。
このタイミングで消えるとかなしだって。
せめて、夏休みの間だけでも居てくれ。
「自分の身体見て見ろ!消えかける」
<<えぇ、どこもおかしくないよ。
いつもと変わらないけど>>
ノノンには自覚がないらしい。
「身体がだるいとかないのか?」
<<天使は病気になりません。>>
ダメだ。
オレにはどうしようもできない。
「来週ディズニーランド行こうな?」
<<そんなに早く行けるの?楽しみ>>
更に薄くなっている。
「アイミーのライブも見たいか?」
<<見たい見たい。
アイドルのライブ行ってみたい>>
もう、ノノンがほとんど見えない。
「オレも楽しみなんだ。
この夏で一生忘れない思い出を作ろう」
ノノンの返答はない。
「ノノン!ノノン?」
周囲を見渡してもノノンがいない。
見えないだけで、今もなお
オレの側に居たりして。
「ノノン!
このままお別れじゃないよな?」
返答はないけど。
聞こえてるかも知れない。
もしかしたらと、ノノンが現れてくれることを
期待したが、1時間まっても変わらなかった。
***
日曜の朝。時刻は5時。
「起きて。朝ですよ」
・・・
「ハルくん~」
「ん~ん。あと5分」
「ハルってばぁ。
起きないならチューするぞっ」
ノノン!?
ノノンの声に気付き飛び起きる。
オレの目の前にノノンがいる。
夢ではない。
身体も透けてない。
「そんなに見られると恥ずかしい」
ノノンは何が起きてるのか理解してない様子。
今回はラッキーだったのかも。
よかった。
またオレの前に現れてくれて。
安心はしてられない。
前回の消失から明らかに悪化してる。
次は本当にお別れになる可能性は高い。
早く、思い出作らないと。




