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(053) ワンフェス①

◇◇◇ 電車の中 ◇◇◇

今日は土曜日。

現在、オレは幕張メッセを目指して電車に乗車中。

アイミーに会う約束の日だからだ。


<<見て!大きい観覧車があるよ>>

「あそこ公園で水族館もあるんだって。

 左に白くて丸いのがあるでしょ。

 あそこが水族館」


<<へぇ、水族館行ってみたい>>

「夏休みになったら水族館も行こう」


ノノンのやりたいことは出来るだけ叶えたい。

ノノンの喜ぶ顔が見たい。

シスコンってこんな感覚なんだな。


<<隣の山はなに?>>

「あそこがディズニーランド。

 夏休みになったら行こうって言てた場所」


<<行けるの?>>

「もちろん」

<<楽しみ>>


子供のように無邪気に電車の窓から

外を眺めるノノン。

その姿を見て心が締め付けられる。

もっと喜ばせたい。大事にしたいと。

この関係が永遠に続いて欲しいと願っている。


これが(いと)おしいという感情なのだろうか。

この言葉の意味を初めて理解できた気がする。


ノノンと出会ったおかげで、

いろいろな感情を理解できてる。

人はこうして大人になって行くんだな。


次は堀北さんだ。

彼女は怪我していることを表に見せない。

怪我の具合が深刻なのかは、

オレにはまったく分からない。

彼女がオレにそのことを打ち明けないため

オレも知らないふりを通してる。


しかし、堀北さんは誰の前でも陽気に振舞う。

どんなメンタルしてるんだ?

不安でいるのか、開き直っているのか、

どちらなのだろう。


彼女が笑顔を見せれば見せるほど

オレは泣きそうになる。

あぁ、ダメだ。

こうして思い出しただけでも泣けてくる。

最近涙腺が弱くジジィ化してるぞ。


そして最後はアイミー。

これから会うことになる訳だが。

対面するのは原宿のデート以来。

毎晩Lineで会話しているから

心の距離は縮まった感はある。

正直、芸能人という認識が薄まってる。

あれだけ警戒してたのに、

会うのが楽しみでいる。

冷静になれオレ!危機感を持つんだ。


◇◇◇ 幕張 ◇◇◇

現在、時刻は朝8時。


『朝食を一緒に食べましょう』ってことで

駅を降り指定されたホテルへと向かってる。

その申し出を受けた理由は2つある。

1つは、ご馳走してくれるとのこと。

要するに貧乏学生におごってくれるというのだ。

もう1つは、フェスの会場へ入る前で

トンズラするためである。


アイミーは前日からそのホテルに

宿泊してるとのこと。

朝食は部屋で食べるのかと期待したら

1階ロビーにあるレストランだってさ。

大丈夫?芸能人の自覚あります?

週刊誌に写真とられません?


ホテルは、イベント本会場の

まさに目の前にそびえ立っている。

既にアイミーが取材陣に囲まれてたら

Uターンだ。

オレは中へと足を踏み入れたのであった。


◇◇◇ ホテル ◇◇◇


ここはホテル1階のロビー。

天井が高く。広い。

大きなシャンデリアがぶら下がってる。

ホールにいるような感覚である。


<<綺麗。別の世界に来た感じ>>


ノノンは感動してるが、オレは恥ずかしくて

今直ぐにでも飛び出したい気分。

だって、服装が場違いなのだから。

短パンTシャツはないだろう。


ロビーを見渡すと、一角にカフェを発見。

恐らくあの店だ。

そこでテーブルに1人、席に腰かけ、

手を振る女性を発見する。

アイミーだ。

オレよりも先に見つけられてしまった。

ひとまず派手な服装でなかったことに安心。

ホテルの中とは言え、オープンな場所で

芸能関係者に見られたら大変だぞ。


「待ちました?」

「今来たところ。まだ注文してませんよ」


実物を目の前にすると凄くきれいだ。

そしてオーラがある。

オレには(まぶ)しすぎます。

頼むからサングラスくらい掛けてくれよ。

バレバレじゃん。


<<この人どなた?>>


あっ!ノノンにアイミーと会うこと

伝えてなかったわ。

しかも関係は親戚の子のままにしてある。


「お腹すいてます?」

「ペコペコです」

<<朝、食べなかったのは、このためね>>


「和食と洋食どっちがいい?」

「パンが食べたいので洋食」


アイミーが手を挙げてウェイターを呼び、

洋食のモーニングセットを2つ注文。

メニュー見てないけど値段高そう。


「毎晩Lineしてきますよね」

「ダメなの?」


はい?もしかしてオレの彼女の認識?


<<分かった!親戚のアイミーさんだよね。

 そうだよね?>>


バレるの早ぇ。

親戚のままで通せるのか。


「ダメじゃないですけど。

 どうしてオレなんかにLineするんだろうって」

「言ったでしょ。

 東京来たばかりで友達いないの。

 話し相手が欲しかったのよ」


本当なのか、冗談なのか分からん。


ここで本題に切り込むか。


「話し相手が欲しいのは

 アイドルの仕事してるから?

 仕事ではなく、気軽に話せる相手が

 欲しかったのかな。」


<<えぇ、この人アイドルなの?

 有名人なの?>>


Lineでも知らないふりをしてたけど、

ついに言ってしまった。

さぁ、どうでる?


「ふ~ん。

 私がアイドルしてるって知ってたんだ。」

「フードコートで出会ったときは

 知りませんでした。

 アイドルに興味が無かったので。

 知ったのは原宿デートの後です。

 ネットで偶然見つけたんです。」


正確にはカイに教えてもらったんだけどね。


<<原宿でデート?アイドルさんと?>>


ノノンのリアクションが1つ1ついい。

逆に楽しくなって来た。


「それで?

 打ち明けたって事はファンクラブ

 に入りたいって話しからしら?」

「面白いですね。

 Lineで会話するのは楽しいです。

 ですけど、こうして会うのはまずいのでは?

 と思ったので打ち明けました。

 今も週刊誌に写真撮られてたりしません?」

「普通なら仕事外で男性と2人きり

 で合うのはNGでしょうね。」


「アイドル止めたがってるから

 って言ったら信じる?」


オレをからかってるのか?

それとも仕事でやな事でもあったのか?


「他にも友達いるでしょう?

 どうしてオレなんですか?

 年下の貧乏学生を相手にしても

 楽しくないでしょう」


<<確かに>>


お~い、同意しないでぇ。


「一番は私を芸能人扱いしなかったことね。

 ハルキ以外居ないのよ。

 気を使わずに話せる人が。

 あと何となく私の弟に似てたからかなぁ」


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