(050) テスト3日目
◇◇◇ 寮の自室 ◇◇◇
時刻は23時。
たった今、自室に到着したところだ。
充実した日であった。
なんだかどっと疲れが押し寄せる。
やる気がでない。
これは疲労ではない。
単に腹減って力がでないのだ。
朝までガマンするしかない。
ノノンとランド行くと決めたんだ。
お金を使わないよう節約しないと。
水で腹を膨らませるか。
<<どうしたの?元気ないよ>>
「疲れただけさ」
<<それ堀北さんの台詞だよ。
ハルは大して動いてないでしょ>>
オイオイ、なんてこというんだ。
「ハハ、ほんとうだ。オレ、ジジィだね。
シャワー浴びて、もう寝るわ」
<<えー、つまんない>>
堀北さんのサポートは楽しい。
というか一緒にいるのが楽しい。
今日で更に距離が縮まったような気がする。
明日もある。最高だな!
ジムの正式アルバイターになるのもいいな。
バイト探してたんだし。
毎日、堀北さんと会話できる。
その前に後輩に気に入られる必要があるな。
ジムでのことを、ふとを思い出す。
始めて、選手としての堀北さんを見た。
カッコいいの一言に尽きる。
カリスマ性もあるし。
後輩ちゃんが憧れるのも分かる。
♪ピコ
<<金沢さんからLineだよ!>>
こんな時間に何事?
Line>ヒメのピアノ動画をYoutubeへアップ
しましたのでお知らせします。
おぉ!動画が完成したのね。
<<早く見ようよ>>
「落ち着け。今、再生するから」
一通り読み終えて、張り付けてあった
リンクから動画を再生してみる。
<<良く出来てるね>>
「思いだす。
この時、スタッフの人に後ろ下がって
と言われたところだ。
カイの動画に差し変わってる」
<<編集テクニックが高度だよ>>
ああ、そうだな。
テロップも入ってるし。
意外と時間掛かってないか?これ。
<<ノノン、この曲好き>>
改めて聞き直すと、耳コピしていきなり
弾いてるとは思えない演奏だ。
堀北さんといい。
すごい才能の人達だなぁ。
振り返ると、篠崎さんとの撮影会は、
次の日曜日も予定通りカイと3人で実施した。
やはり外国人観光客が多かったので、
アニソン、洋楽、洋画のテーマソングを
演奏したが、カイの予想通り受けが良かった。
3人楽しく終われたのは良かった。
地獄の品川から考えたら大成功だ。
3人ともストリートピアノに
ハマってしまって、テスト明けの夏休みも
撮影することが決まった。
堀北さんの方は明日、明後日の
木・金もお手伝いすることに。
土曜日は、団体にジムを貸し出す
とのことで終日利用できない。
まぁ、大会前日により激しい運動を避け、
自宅で軽くウォーミングアップするという。
ジムが利用できなくて問題はない。
実質、トレーニングはあと2日ってことだ。
そして日曜日は試合当日。
応援はオレとカイを筆頭に脳内で
横断幕を広げた総勢1000名の大応援団
にて堀北さんの闘争心を煽るつもり。
次にアイミーだ。
土曜日はなんちゃらフェスで2度目の
デートイベントが待っている。
正直、こちらは乗り気でない。
アイミーに会いたいがファンの目が怖いから。
顔見せだけして、会場入る前に逃げようと
考えてる。チケット買う金ないし。
当日券がソールドアウトになってることを祈る。
毎晩Lineのやり取りが続いてる。
その時に予定が出来たと断ればいいものを。
言い出せないオレは、相変わらずへたれだ。
整理したら毎日予定が埋まってる。
しかも全員女子とだ。なんてことだ。
高校入学前の想像を超えた学園生活となっている。
◇◇◇ 教室 ◇◇◇
次の日の朝。
「細倉くん、おはよう」
「おはようございます」
いつもと変わらない朝の挨拶。
たかが挨拶。
なんと幸福なひと時だろうか。
オレは唯一、女王堀北様へ謁見を許されてる身。
いわばこのクラスの頂点に位置してるのだ。
クラスの愚民ども!オレを仰ぎ見るがよい。
最近、中二病が頻繁に発動してる。
「昨日はありがとうね」
「いやぁ、お礼言われるほど
役に立ってませんよ」
「そんなことないよ。
居てくれるだけで元気もらってる。
細倉くんがいたから昨日も頑張れたよ」
マジか!
それって、愛の告白ですよね?
来たぁ~。オレのターン来た。
<<お世辞、盛り過ぎじゃない?
嘘がバレバレだよ>>
ノノンさん?
感動に浸ってるところに現実を突きつけないで。
ちょっとは夢見させて!
「今日の昼食、どうします?」
テスト期間中であり、本日も午前でが終了。
部活はないので、どうするかってことだ。
ちなみに、昨日はジム行く途中のコンビで
オニギリ1個だけで済ませた。
「何も考えてませんけど」
金ないからファミレス行こうとか
言い出さないでくれよ。頼む!
「お弁当作って来たんだけど
食べます?」
「食べます、食べます」
女子の手作り弁当、しかも堀北さんの。
来たぁ~!
男子が憧れるイベントの1つだ。
また夢が叶ったぞ。聞いたか?愚民ども!
これが頂点に立つ者の力よ。
「堀北さん、料理するんですね?」
「母が作ったんです。
昨日の話ししたら持ってけって」
あぁ、そうですか。
お母さんのでもいいか。
オニギリでいいから、堀北さんの手作り
食べたいなぁ。
<<お母さん偉いね。結構大変だよ>>
確かに。好みとかあるし、見栄えとかも
あるだろうからきっと悩んだはず。
あれ?オレのために作ったってことか?
もしかして親公認?
これはお礼を兼ねて一度挨拶に行かないと。
もし、お父さんが居たら
『娘さんをください。』って言おう。
「ありがとうございます。
非是、ご馳走になります」
「岳中くんの分もありますから」
えぇ~。あいつの分はいいのに。
川沿いで堀北さんと2人きりで食べたい。
「テストだからカイのやつ来ないと思う。
Lineしときます」
「今日は病院行かないから。
学校で食べてジムへ行きましょう!?」
教室で2人きり。最高です。
「了解しました」
オレが2人分食うからカイの奴、
断わってくんないかなぁ。
・・・
その日のテスト終了後。
お昼はどうなったかというと。
教室で3人仲良く1つの机を囲んで食べることに。
カイくんよ、察しろ!




