表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/259

(049) 堀北さんサポート②

◇◇◇ 七瀬ボルダリングジム ◇◇◇

堀北さん、休息中のこと。

3人で立ち話をしていたところ。


凛心(りこ)先~輩~」


遠くから堀北さんを呼ぶ女子の甲高(かんだか)い声が届く。

その主へと振り向くと、制服姿のJK2名が

道路沿いで立ち止まって、こちらを見てる。

2人の背丈は同じくらいで、2人も茶髪。

ショートとミデアムで覚えよう。


<<制服違うよ。別の学校だね。>>


堀北さんの下の名を叫んだけど誰?

ファンの子?

それにしちゃあ、馴れ馴れしいぞ。

オレだって呼んでないのに。


JKがオレらと目が合うと向かって来た。

オレとカイは首を縦に振って無言の挨拶を

交わすも無視されることに。


「来たんだね?」

「それはないですぅ。

 凛心先輩が来るっていうから

 私たちも来たんですよ」


なんとなく理解した。

ここのジムに通う子達だ。

おそらくテスト期間中だから来ないと

伝えていたのかな?


「ご紹介します。後輩の優香(ゆか)美沙(みさ)

 2人共1つ下の2年生で、ここのジムに通う

 同じフリークライミングの選手です」


声を掛けて来たのがショートの優香か。


「初めまして」


・・・


2人共、無視すんな!慣れてるけどよ。


「先輩、こちら彼氏さんですか?」


美沙って子が、カイが彼氏だと思ったらしく

堀北さんに確認した訳だが。


ちょっと待った!オレも居るぞ。

あぁそうですか、オレは眼中(がんちゅう)にないですか。


<<この子達見る目ないよ>>


だろ?

ノノンだけだよ分かってくれるのは。


「堀北さんにはオーナーさんみたいな

 大人のイケメンがお似合いだと思う」


ノノンさん?オレがいますけど。

くっそ。どいつもこいつも。

なんとなく分かってたけどよ。

ここで答え合わせすんな。

ハイハイ、堀北さんと釣り合いませんよ。


もういい。

元々この大都会のジャングルで、

オレは1人で生きて行くと誓ってるのだから。

それを(まっと)うするだけさ。


「違います。こちらは学校のお友達です。

 コーチが怪我したから、わざわざ

 手伝いに来てくれたんです」


ありがとう堀北さん。フォローしてくれて。

だが、後輩の2人は気に入らないご様子。


「なら、帰ってもらって結構です。

 あとは私たちでやりますので」


<<ちょっと、この子達失礼じゃない?>>


オレら嫌われてんぞ。

あなた方に何かしました?初対面ですよね?


「ちょっと私の友達に何てこと言うの!

 失礼です。

 大体、あなた達は私にかまっている

 暇ないでしょ。分かってます?

 ほら、さっさと着替えて、自分の練習しなさい」


『はぁ~い』と言って後輩ちゃん達は、

ジムの中へと入って行くのであった。


他校なのに堀北さん先輩してますね。

かっこいい。


「ごめんなさい」


先ほどの後輩による無礼な態度に

対してオレらに深々とお辞儀をした。


「気にしてませんから。

 堀北さんが取られるって感じたのでしょう。

 可愛いところあるじゃないですか」


「本当だよ。

 小娘らの暴言などオレらに響きません。

 後輩ちゃん達は熱烈なファンなんだね」

「そうみたい。

 ストーカーまがいな時があって時々怖いのよ」


やはり、オレらに嫉妬してたのか?

まぁ、どちらの顔もオレ好みだし。

今回は許そう。

やばい、いつもの病気が始まった。


「時間もったいないから。

 そろそろいい?」

「やりましょう。やりましょう」


それから5度、挑戦するも足を踏み外したり

手を滑らせたりして、10秒前後とタイムが

悪化した。


そこへカイが的確な指摘をしてくれる。


「男子の動きを見ると、8番、9番を

 飛ばしてる。

 7番からジャンプで10番行けませんか?」

「7から10ね。

 前にやったことあるんだけど成功率が

 悪くてやめたの。そうね。やってみる」


「あと11と12で指がちゃんと

 つかめてない」

「そうなの。どうしても10から11が

 掴みづらくて」


「今日は、7から15を集中して

 やりませんか?

 特に11番を確実につかむ練習」

「確かに今のままだとファイナルに残れないわ。

 何かを変えないと。

 岳中(たけなか)くんの実験を全部試してみたい」


いいなぁ、いいなぁ。2人楽しそう。

カイのアドバイスが的確かどうかはわからない。

だけど堀北さんには刺さってる。

オレもなにか言いたいけど。

何も浮かばない。

こんな近くで堀北さんを見てるのに。

現在取り組んでいるスピードという競技は、

ホールドの位置、大きさ、形が全て

国際基準で決まっている。

要するにどの大会へ出場してもまったく

同じってことだ。

だからカイは過去の試合を参考にしてる。

そうか。


「堀北さん、いいですか?

 まずはゆっくり上がって、握る位置、

 踏む位置を1つ1つ再確認しませんか?

 確実にその場所を(つか)めるよう、

 ゆっくりやって徐々にペースを上げるって

 のはどうでしょう?」

「細倉くん、ありがとう。そうね。

 どうしても急ぐあまり、握る位置が微妙に

 毎回異ってるかも。

 1つ1つのホールを再確認していきしょう」


くーぅ。

オレのアドバイスを聞き入れてくれた。

感動です。


こんな感じでオレらは素人ながらも

過去の大会を見比べて試行錯誤しながら

2時間みっちり練習をした。

結果自己ベストを出すに至らなかった。

種目は3つある。

これだけにかまってはられない。

日が落ちて来たのもある。

続きは明日することとし、

その後はジムの中へと練習場所を移した。


疲れないのだろうか?

なんという体力だろう。


残り2種目の競技はリードとボルダリング。

堀北さんの得意分野だそうだ。

練習方法は分かっている。

出来るテクニックを確実なものにするんだとか。


命綱もないためサポートも不要。

オレらに出番はない。やれることは見学のみ。

堀北さんが頑張ってる姿は良い。

惚れ直す。こうして見てるだけでも楽しい。

だが同時に、後輩2人の視線が怖い。

目を合わすと気持ち悪いって顔でそらされる。

いるいる街中でよくされてる。

ちなみに、この2人の後輩も末大会に

出場するそうだ。

要するに堀北さんのライバルになる。

ってことはオレの敵だ。

なのでどう思われてもいい。


そうこうしている間に、続々とジムへ

お客さんが入って来てる。

平日なのに意外と来るんだなぁ。

アドバイスや説明はできないが片付けや

掃除はできる。ということで、

雑用担当としてオレとカイは残り時間

アルバイトすることにした。


ノノンはというと見学である。

どうやら楽しいらしく見飽きないんだとさ。

それは良かった。

あと、バイトの作業手順をノノンがオレの

代わりに聞いて覚えてくれるから楽だ。

説明を適当に聞いてればいい。

あとはノノンが教えてくれる。

ゲームの時もそうだが、意外とノノンは賢い。


・・・


夜9時。

ジムが終了し、みんなでお片付け。

堀北さんと、後輩の2人もなせか手伝っている。

どうやらジムの運営を手伝うことで

彼女らは安く優先して、利用させて

もらってるのだという。


しかし、腹減。

学校終わって病院へ直行し、

その後のジムへ向かう途中のコンビニで

オニギリを1つ食べただけだ。

金欠なので1つしか買えなかった。


食べ盛りなオレには耐えられん。

しかも、この時間では寮に帰っても

夕食はない。

明日の朝までガマンするしかない。

トホホ。


明日もまた、お手伝いすることとなった。

ジムを後にして、オレとカイ、堀北さんと

後輩2人の計5人で帰宅することに。

いつもは女子3人で仲良く帰ってるのだろう。

オレらが邪魔のようだ。


途中で女子達と別れ、カイと2人で

寮まで歩いて帰ることに。

別れ際で、堀北さんはメチャメチャ

お礼の言葉をくれた。

役には立たなかったけど、やって良かったと

思えた瞬間である。


人のために何かをするっていいな。

よし、明日も頑張ろう!

この時全員、テスト期間中だということを

すっかり忘れてる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ